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テーマは「挑戦者はいらない」?! 地域熱エネルギーを担う村楽エナジーの人材募集

※こちらの求人は応募を締め切りました

村楽エナジー株式会社(以下村楽エナジー)が新入社員を募集します。村楽エナジーの主な事業は大きく分けて2つあり、エネルギー政策のコンサルティングや西粟倉村の薪ボイラー運用を引き受けて供給を担う「エネルギー事業」と西粟倉村の公営温泉の運営「元湯経営」です。そして今回、募集するのは「エネルギー事業」の人材。当然、再生可能エネルギーに特化した“エネルギーの挑戦者”を募集するのかと思いきや、井筒耕平さん、もめさんの2人は「挑戦者はいらない」といいます。このコーナー「挑戦者募集」を全否定の今回の募集、彼らが欲しい人材から透けてみえてくる、2016年版「西粟倉村で働く人材とは」に迫ります。

 

挑戦者なんていらねぇよ、冬

 

– 今回、村楽エナジーが募集する人材は、ずばり「井筒耕平の弟子」。村楽エナジーの代表取締役であり、日本全国で求められるバイオマスの知識と現場感覚を活かしたコンサルティング業務を一手に引き受けつつ、西粟倉村内に腰を据えてエネルギー施策に薪運搬、さらに元湯でお味噌汁の出汁までとる(!)“ドライビングアクター”は、彼自身そのものを若手に伝えたいと考えています。

井筒耕平(以下耕平):仕事は僕のコンサルティング事業を手伝ってもらうことがメインになります。正直、手一杯で…。
 


井筒もめ(以下もめ):「弟子」という言い方は、わたしが言い出しっぺです。まず、彼(耕平)は日々いい働きかたをしているじゃないですか。妻の私が言うのもなんですけど(笑)。耕平くんの業務のマンツーマンとして人を雇うのであれば、彼の「働きかた」を含めて吸収してくれるような子が来てもらって、まっさらな状態から育てたいという思いから、弟子という立ち位置を募集します。

– 業務内容は「井筒耕平の弟子」なので、耕平さんが普段している仕事そのもののサポートであるため、多岐にわたる耕平さんの業務を柔軟にこなせる人材です。すなわち「再生可能エネルギーの専門家だからエネルギーしかやりたくない」という挑戦者ではある意味難しいようです。
 


もめ:彼も色んなことをしているように、同じように色んなことをすることを厭わない人が欲しい。これが意外といません。「これをやりたい」と目標が明確にあることは「これしかやりたくない」とつながりがちですから。最近、西粟倉村界隈はそういう自分らしさみたいなものを推奨されがちですが、今回の雇用において自分らしさは弊害です(笑)。

– 夢中になって何かに挑戦するローカルベンチャーが集う西粟倉村ですが、そのローカルベンチャー自体が求める人材は、必ずしも挑戦者や変わり者(褒め言葉で変態と呼ばれている)ではないようです。では、ローカルベンチャーが求めるのは、単純に経営者都合の労働力なのでしょうか?

もめ:自分自身でやりたいことが明確にないまま、他の人の想いに沿って働くことを「労働力」と呼ぶのは違うと思います。うちで働いてくれる従業員はみんな、村楽エナジーが持つ大きな価値観には共感してくれているけれど、各自みんなの中で確立しているものがある人達です。そして、今回はもっと細かく村楽エナジー及び井筒耕平の価値観が共有できるも若い子が欲しい。だから「弟子」なんです。
 


耕平:あと、僕自身がこれから再生可能エネルギーで関わる地域をもっと増やしていきたい。それには各地域に深く関わって行かなければならないので、心も身体も空き容量を増やしたい。そのためには今抱えている仕事を手伝ってもらわないと不可能です。手伝って欲しいのが半分。僕らのシナジーを強く共有する人を育てたいというのが半分。僕、みそ汁の出汁も取らなきゃいけないしね(笑)。

– メインは「エネルギー事業」担当。かたや、元湯という宿屋業で掃除や料理の手伝いをすることが、間接的にも「エネルギー事業」の仕事へつながると意識できる人材。どの仕事にも優劣をつけずにそのすべてが村楽エナジーを構築しているものと思える人材を欲しています。そして西粟倉村のローカルベンチャー企業は村楽エナジーのように従業員10人以下の小さな会社がほとんどです。ローカルベンチャーで働くということは、自分の専門分野だけではなく、多岐にわたる業務をまるっと楽しめる気持ちが必要だと2人のはなしからも伺えます。
 

想いを持つ人と想いに寄り添う人

 

– 今回は「挑戦者はいらない」という村楽エナジーですが、その思いに至るには、元湯のマネージャーとして働く、村楽エナジーの鍋島奈保子さん(以下鍋ちゃん)の存在が大きかったといいます。
 


もめ:鍋ちゃん自身、「こういう働きかたがいいなぁ」や「こういう生き方をしてみたかった」、そして「村楽エナジーのやっていることに共感します」というスタンスで村楽エナジーに来てくれました。元湯の事業はわたしがディレクターなので、ここへの想いはわたしがもっているけれど、想いを持っている人だけでは、物事が進まない。その想いに寄り添って動いてくれる人がいなければ、結局なにも形にならない。想いを実際かたちにしていってくれる人が我々ローカルベンチャーにとって、尊い人材だなぁとつくづく思います。特別な能力や特別な想いがなくても、存在だけで我々は救われることを知って欲しい。

– 事業において、想いは経営者が持つ。そして実務は「想いに寄り添う人」が実行することによって想いを実現させていく。「想いに寄り添う人」イコール縁の下の力持ち。そんな人材こそ会社というチームにおいて絶対必要なポジションだともめさんはいいます。逆にいうと、想いばかりを求めて集めていたら、絶対に来てもらえない人材でもあります。

もめ:あと、今回、エネルギー関係の募集なんですけど「エネルギーの仕事がしたかったので応募しました」っていう子は、あまりピンとこない我々の複雑さ(笑)。もっと漠然とした人のほうがいい。地方で働きたい、けれど、自分に「なにか」があるわけではない。やるべきことはしっかりしているけれど、なすべきことはふんわりしている、そんな人がいい。
 

もめ:昨今「会社色に染まる」って、独自性や多様性をよしとする現代ではあまり良いことではないと言われるけれど、今回はあえて弊社に染まる子を募集したい。そういう働き方であっても、西粟倉村にいるってだけで個性が発揮できるし輝ける。むしろ、自分自身すら思いも寄らなかった個性が出てくることだってあるはず。

たとえ話なんやけど、面接で志望動機を話してもらっても「このひと本当にこう思っているのかな?」と勘ぐってしまうことがある。私は逆に言語化している人のほうが疑わしい。嘘くさいな、とか思っちゃうのね。雇用側を向いて一生懸命書いています、みたいな文章に心動かされないんです。そのひとそのものにピンと来たら採用しますんで。自分がやりたいことを言語化できてなくても全然良い。むしろ言語化できてなくても来ちゃいましたという方がグッとくる。

– この人材募集は、そのままの貴方で西粟倉村に来て欲しい、という村楽エナジーからのメッセージ。人それぞれ、色々な生き方があり、想いを持って日々を挑戦しているけれど、その想いは高尚なものでなければいけない、挑戦者の正義を求めすぎているのが今の人材募集の状況かもしれません。想いも持つ人に、その想いに寄り添う人がいる、その「想いあい」が、イノベーションを動かす力になるのです。

もめ:すべては役割分担。想いがなくても、人の想い寄り添うことはものすごい価値があることを、このご時世にわたしたちが声を大にしてお伝えしたいです。
 

雇用者が出口をつくらない

 

– 「想いを持つ人」である経営者・村楽エナジーは、彼らの想いに寄り添う人にどんな未来を用意するのでしょうか。

もめ:なんでもいいんじゃないかな?何者になってもええよ。一応、今回の求人に関しては「井筒耕平の弟子」だから、少し、バイオマス部門に特化した存在かな。

耕平:林業、バイオマスのコンサルタントを育てる、かなぁ。でも僕の感覚だと、所詮人はそれぞれ受け取るアンテナが違うものから、もしかしたら、西粟倉村に来て村楽エナジーに入ってみたら、コーヒーにハマるかもしれない。こればかりはわからないから、何者になろうとも大丈夫。漠然とバイオマス好きに育ってくれたらいいかな?くらい(笑)。子どもに音楽を好きになってもらいたいからピアノを習わせる…くらいのスタンスで。人を雇うって子育てに似ているかもしれない。今の子どもは「好きな事をしなさい」って育ててもらえるのに、大人になると職種や役割をがっちり決められていて、それに沿わない人じゃないと否定されるよね。うちはそういう人材の使い方はしません!あと、バイオマスは、ちゃんとやれば、ちゃんと食っていけます(きっぱり)。

– 「僕たちの想いに寄り添って、働いてくれるひとを募集」というと、一見、経営者都合に見えがちな求人ですが、着地点は「何者になってもいい」。とても柔軟な求人だということがわかります。実際、人材を雇うとひとりひとりの人生を尊重したいと思ってしまうのが人の心。人が人を雇う難しさを痛感していると2人はいいます。

耕平:僕が以前働いてきた企業は、人件費って=コスト、みたいな見方だった。以前の職場はモロそういう考え方だったから正直居づらかった(笑)。僕がいることが悪いのかって思ってしまっていた。でも、経営者として人材を雇用する立場になったいま、人はリソースだと考えるべきだと思います。「この人はなにができて、会社にどういう広がりをもたらしてくれるのか」を考えたい。
 


– 人をコストだと思って雇うことは、挑戦を続ける雇用側のローカルベンチャーにもとって気持ちよいことではなさそうです。そして、人=財産だといい大切にしてくれる企業で働くことは、あなた自身に新たな価値が生まれ、働く喜びが増します。それが『百年の森林構想』を掲げる挑戦者の村の企業であれば、地域社会へ貢献することにもつながります。
 

挑戦と継続。営みを重ねることの重要性を説く

-全国的に活躍しているローカルベンチャーが複数存在する希有なこの村は、挑戦者こそが西粟倉村のすべてだと外部から見られていることも確かです。起業しなければいけない、新しいことをしなければいけない、挑戦しなければいけない、変態でなければいけない。ここにいるとそんな風にあせらされると、もめさんは危惧しています。

もめ:建物としてこの場(元湯)を完成させた。じゃあ村楽エナジーの次の挑戦は?と、すぐ新しい事に目を向けらることが多いけれど、それはちょっと違うなと思います。本当に必要なのはそのハコとして完成させた場を持続させていくこと。ルーティーンを繰り返して、その営みを何十年と続けていくことによって本当の意味で場はつくられていきます。わたしはここで、繰り返していくことの凄さを再定義したい。
 

耕平:たとえば航空会社は安全運行が当たり前ですよね?「己の力を試したい」って難しい着陸を試したりしない(笑)。インフラとして安全なサービスを提供するのが彼らの主な仕事。それはなくてはならないことで、何十年もやり続けて「本物」になっています。実際は、経営者も実働者も変わっているけれど、やり続けることに変わりはない。安全の上に成り立つサービスをこつこつ提供している。一方でははっとするような面白いアイデアにもチャレンジしているけれど、それはやり続けている本物があるからこそ。その両立がいいですよね。

– 村楽エナジーは村のバイオマスエネルギーを扱っているため、村のインフラを担う側面もあります。バイオマスはこの村の新しい挑戦であってスタートは挑戦でしたが、はじまってからは毎日薪を絶やすことなく運び続けなければいけないインフラ事業。そんな事業を担っている会社だからこそ、挑戦と継続の尊さを日々感じることが大切であり、挑戦によって灯った炎を絶やさない人を強く求めるのです。
 

もめ:我々は着火材みたいなものなので、その火を消さないエネルギーみたいな人が良いね。エネルギーそのもののような人。元湯ではそれが鍋ちゃん。鍋ちゃんがいるからこそ、そういう人の尊さを学びました。鍋ちゃんと出会わなければ、村楽エナジーはずっと挑戦するひとたちを採用しつづけてきたと思います。サポート役はこの村では、存在が認められづらいんです。でも、本当にありがたいし、本当に必要。そういうひとのほうこそ大切ですよって声を大にして言いたい!
 

2016年のエナジー

– 2015年、村楽エナジーは西粟倉村でさまざまな挑戦をはじめました。そして2016年、井筒夫婦、子ども2名、社員3名、アルバイトスタッフ1名、ときどき志ある学生インターン、そしてまだ見ぬ「井筒耕平の弟子」を迎えて、地域のエネルギーの担い手、再生可能エネルギーの伝道師、村のほっこり宿屋、ローカルベンチャーの集い場を運営していきます。さあ、今年、どんな年にしましょう?
 


耕平:順調に薪を作っていきます。西粟倉村エリア全体のバイオマス計画も進めていきたいです。あと、薪工場のスタッフも募集します。ダニエル(村楽エナジー・薪担当)がいま腰痛で、ダニエルの相棒を見つけるのも急務です。

もめ:元湯はアウトドアツアーをやっていきたいですね。あと、私自身は、宿屋運営の手をもう少し離れて、もっと企画をしていきたい。あと地域とのつながりも意識していきたい。この1年間一生懸命がむしゃらすぎて、みなさんのご要望に応えきれてなかった気がします。もう少しみなさんに歩み寄って開いていきたいです。

– 「定住しなくていいんです」のキャッチフレーズで挑戦者を募集しているニシアワーですが、村楽エナジーは人材を募集する際、スタッフの定住や移住についてどんなスタンスを持っているのでしょう。

耕平:都市部の人間を移住させて呼ぶ、というこだわりはないです。むしろ近所のひとのほうが家を探さなくてすむから良いかも(笑)。もちろん、遠くから村楽エナジーで働くために移住してくれる人もすごくありがたい。それだけでヒーローだと思います。だた、定住してほしいとはあまり考えていません。もっと軽いノリで「楽しいからここにいます」みたいな感じが理想。

もめ:「気がついたらずっと居ちゃった」みたいな。

耕平:僕はそのパターンばっかりなんだけど(笑)。

– 村楽エナジーは、その「楽しさ」を保証しますか?

耕平&もめ:はい!

耕平:その楽しさは保証するけれど、「定住しなさい」って言葉では縛らないつもりです。

– 西粟倉村は、中山間地域のどこにでもある普通の過疎の村です。ただ、少しだけ他の村より諦めの悪かった村でした。この村の可能性に惹かれてやってきた挑戦者たちのウルトラCの積み重ねがここを特別な場所にしました。しかし、ここは特別な場所かもしれませんが、特別な人間しか生きられない場所ではありません。今回の記事で、村楽エナジーで働いてみたいな、と思った瞬間、あなたの手にはここへ来るための切符が握られています。その切符でどこに行くかはあなた次第。途中下車だって簡単に出来ます。でも、同じ電車に乗って同じ風景を見たい。できれば同じところへ行きたい。そう思えるひとと旅をしたいと思いませんか。

そして、最後にこっそり言いますが、ローカルベンチャーたちの想いに寄り添う人たちも立派な「挑戦者」です。もしかしたら他のローカルベンチャーでも、自分たちの心に寄り添ってくれる人材を欲しがっているのではないかなと思います。それは西粟倉村の多様性と包容力の具現化が進んだ証なのです。
 

※こちらの求人は応募を締め切りました

 

村楽エナジーウェブサイト
http://www.sonraku-energy.com/

元湯ウェブサイト
http://motoyu.asia/