岡山県
西粟倉
にしあわくら
1400人の村で挑戦する仲間、大募集!3月6・7日(土・日)開催 「小さな村のしごとフェス オンライン」参加者募集!
Date : 2021.01.29
人口1400名ほどの西粟倉村に、この15年ほどで次々に新しい会社や仕事ができ、村内のベンチャー企業や起業家の数は40にものぼります。森に囲まれた山間地ながら風通しがよく、常に新しい人、仕事、暮らしが循環しているこの地では、今日も共に働く人を待っています。
約2年ぶりの開催となる「小さな村のしごとフェス(以下しごとフェス)」は、村内のベンチャー企業が集まる合同説明会のようなもの。今回はオンライン開催で、10社以上の求人が出揃いました。
「ちょっとでも気になる人がいたらウェルカム!」なしごとフェス。その内容について、立場の違う3人の目線から紹介します。
就職・兼業・インターン
3種類の求人で、さらに間口を広く
-前回に続き西粟倉村主催のしごとフェス。企画運営担当はエーゼロ株式会社が担っています。エーゼロもまさに村内ベンチャー企業のひとつであり、さまざまな仕事を生み出してきました。「全力でしごとフェスに向けて準備中!」というスタッフの金城奈々恵さんも、沖縄県出身、一度沖縄でコンサル会社に就職しましたが、田舎や地域の中で仕事がしたいと村に移住して4年の移住者です。
「ちょっとでも西粟倉に興味があって、『何かやりたい』という気持ちがあったら、イベントをのぞいてみてほしい」と話すのは、これまで村の事業者と関わるなかで、「仕事」といっても、多様なニーズがあることを実感しているからだと言います。
就職に加えて、兼業やインターンシップでの求人を考える企業が出てくるなどの変化も感じているそうです。
金城:2020年はとくに、働く場所や仕事の仕方について、いろいろと考えさせられる年になりました。オンラインで仕事をすることも当たり前になって、地方で働く、暮らすということをより現実的に考えるようになった人も多いでしょう。
仕事を探している人たちにとっても、就職という選択肢だけでなく、自分が得意なことを生かして兼業する方法を望む人も多いんじゃないかな、と。村内の求人にも、たとえば都市部で事業の営業を担ってくれる人を探しているとか、ピンポイントの『こういう人がいたらいいな』という話はこれまでも聞いていたんです。
逆に、時間がある大学生が西粟倉に来て、若さを生かした行動力でいろいろな経験を積むというのも、事業者さん、大学生両方のニーズとしてあると思います。
-求人を出す側の事業者と「しごとフェス」に参加する人々、両方の「想いが重なる」ことを大切にしたいと話す金城さん。小さな村ではありますが、多くの求人が生まれていて、仲間に加わってくれる人たちを心待ちにしています。
西粟倉は、仕事も人も幅広い!
オンラインでも本音や関係性を垣間見られるように
-今回の「しごとフェス」はオンライン開催。「雰囲気」を伝えるべく、2日間のプログラムを設計していったと言います。
金城:今回求人を出す事業者さんに限っても、林業、木工、獣肉加工・解体、デザイン、建築、観光……と、小さな地域でもこれだけ仕事の幅があるんだということを見てもらいたいんですよね。
もちろん、2日間フルで参加してもらえたら嬉しいですが、興味のある事業者さんのプレゼンにピンポイントで参加することも可能です。また、参加者が希望すれば、視聴できなかった事業者さんのプレゼンのレポートを送るなどのフォローも予定しています。
オンライン開催なので、これまでの「しごとフェス」は遠方で参加が叶わなかったという方にも、気軽に参加してもらえることも楽しみにしています。
小規模だから難しいことも
「村の求人」として束になれる
-実際に「しごとフェス」に参加した事業者はどんな手応えを得ているの? ということで、前回の「しごとフェス」で求人を出した「株式会社 百森」代表取締役の田畑直さん、その求人をきっかけに百森に就職した北森亜未さんにも話を聞いてみました。
田畑:大阪のカフェで行われた『しごとフェス』には共同代表の中井照大郎が出向いたんですが、まずは100人ほどの参加者がいたことに驚いていましたね。
ベンチャー企業は人も少ないですから、日々の業務に追われていて、求人までなかなか手が回らない現実があります。西粟倉村の行政が表に立って出会いの機会を作ってもらえることはありがたいことだと思います。
-前回の「しごとフェス」に来てくれたことが決め手となり、百森に入社したのが、現在事務や経理を一手に引き受け手くれている北森亜未さん。イベントの少し前にしごとフェスに関連して「日本仕事百貨」に出た百森の求人を見て、連絡をくれていました。
—当時、北森さんは奈良県奈良市在住。田畑さんにしてみれば、百森に興味を示してくれた嬉しさはありつつも、片道3時間以上かかる道のりを気軽に「会いに来て」とは言えない状況でした。そんななかで、大阪でのイベントは「気軽に会ってみる場所」としてまさに渡りに船だったそう。
田畑:こちらとしては、少ないチャンスを無駄にしたくないから、『北森さんを離しちゃいけないぞ』と。中井が北森さんに会った感触を聞いて、それからは百森のメンバーみんな、首を長くして待っていた感じでした。
北森:私も、頼まれていないのに履歴書持って行ったんですよ。まだその時は中学校で理科の教師をしていたのですが、辞めることも考えていた時期でした。
『しごとフェス』で実際に百森の中井さんと面接したらいい感触で、3月末に1週間くらい初めて西粟倉に行って、その後5月くらいには引越して働き始めました。
「100年の森を経営する」にピンと来て
未踏の地、未経験の職種に飛び込む
—百森のことを知ってから一直線の最短距離で、迷いなく移住、就職まで至ったように見える北森さんですが、その行動力の裏にはどんな背景があったのでしょうか。
北森さん:大学時代に環境管理学科で絶滅危惧種について研究していて、川の水質調査とか環境教育にも関わりがありました。教師時代にも自分なりに環境授業をやったりもしていたんですが、ちょっと物足りない気持ちもありました。
そんな時に、何気なく見た百森の求人で『100年の森を経営する』という言葉を見てすごく興味を引かれました。どんなことをやっている会社なんだろう? と調べていくうちに、百森でなら直接的に生態系に関わっていけそうでおもしろそうだなって思ったんです。
—とはいえ、募集職種は「百森と協同組合の経理及び事務作業」。森の生態系に身を置くことは少なそうですが、その職種については迷いはなかったのでしょうか。
北森:あまり虫に刺されたり日焼けしたりしたくないから、経理でいいんです(笑)。森で働きたいから百森がいいと思ったというよりは、会社のビジョンに引かれたというのが大きかった。だから、森の生態系については『何かしらで関われたらいいな』くらいの感じだったんです。
—一方、受け入れる側としては「未経験」は問題なかったのでしょうか?
田畑:確かに、経験者が来てくれるに越したことはないかもしれませんが、結局、僕らの会社は人数が少ないから、経理外の業務もめちゃくちゃいろいろやらなきゃいけない。1ヶ月後にはがらりとやってもらいたいことが変わってる可能性もある。
だから、スキルがある云々よりも、百年の森林をどうしていこうという話を一緒にできる人が必要だと思うんです。日々やることが変わっていく仕事の場合は、あまり専門性を求すぎないほうがいい気はしますね。
北森:どんなことするんやろう?って来てみたら、そもそもの事務、経理のベースが定まってなかったっていう状態でした(笑)。最初は手探りでしたが、今は自分で百森の仕事に合った経理の仕組みを作っているところで、やりがいがあります。
北森:あとは、測量の助手をしたり、山の仕事を手伝うこともありますよ。デスクワークだけじゃなくて、別の役割が降ってくる状況は私にとっては結構楽しいです。山に行った時は、会社のInstagram用の写真も撮っています。
今は山の整備にいろいろな面から関われている実感があります。それは水を守り、良い生態系を育むことにも繋がっているから、自分がやりたかったことにちゃんと近づいていると思いますね。
よそ者が当たり前
風通しのよさは不便を超えて
-交通の便や買い物のことを考えたら、便利とは言えない西粟倉。北森さんにとって、生活面での不安はなかったのでしょうか。そして実際暮らしてみての感想は?
北森:最初、場所は全然気にせず問い合わせたので、西粟倉がどこにあるかも分かっていなかったんですよ(笑)。
暮らしはどう?っていうのは、よく聞かれるんですけど、もともと奈良市の旧都祁村という山奥の出身で、西粟倉でも不便は感じないです。
移住者の方が多くてみなさんすごくよくしてくださるし、移住者がまた違う移住者を紹介してくださる、みたいな感じなんです。人間関係の広がりもできて、毎日楽しく過ごせていますよ。
移住者が少ないところだと、よそ者が来たという感じで見られることもあるけれど、もともと多いから『引越して来た人がいるな〜』自然と受け入れてくれます。住まいは新しい村営住宅なので、快適で住みやすいし、買い物に行くとなれば遠くのイオンまで行くとか、大阪の梅田まで友達とランチしに行くとか、そういうことは私は苦にならないですね。
あ、でもローソンに行きたい用事があって、グーグルマップで調べたら鳥取まで行かなくちゃ行けなくて、それは困ったな(笑)
-しなやかに西粟倉暮らしを楽しんでいる様子の北森さんのことを、周囲では「オシャレ番長」と呼ぶ人も。資格も持つネイルの技術を生かし、百森の仕事が休みの日には、自宅ネイルサロンが開店。これがなかなかの人気です。
-北森さんの副業を、雇用主である田畑さんは「やれやれ!」と、応援しています。
田畑:山の中ではネイルの才能は生かせないですから(笑)。残念ながら今はまだ高い給料を払えるわけでもないですし、山林管理は地元の方との繋がりが大事。そういう意味でも、活動の場は多いほうが良いという面もあります。他の社員でも、百森では活かせそうにないスキルを持ってるなら外で発揮するための応援をしていきたいなと思います。
-「あとはまつ毛のサロンを開く人が来てくれれば……」と話す北森さん。あながちそれは夢物語ではなく、近い将来に叶いそうな気がするくらい、西粟倉にはさまざまな技術や得意なことを持った人たちが集まってきています。
「西粟倉には多様性があって刺激になる」と田畑さん。ここでは、互いに刺激を受けながら、緩やかにつながりながら、1人ひとりの新しい仕事や暮らしが生まれていて、今も新しい仲間を待っているのです。