岡山県

西粟倉

にしあわくら

賃貸物件・宿泊施設・公園・キャンプ場が続々とオープン。西粟倉村の景色を変え始めた『小松組』に聞く、事業への熱い思いと明るい未来。

移住者の割合が村の全人口の15%を超え、20、30代の移住者が多い西粟倉村。
これまで、「借りられる空き家がない」「宿泊施設が足りない」「遊び場が少ない」といった声が、多くあがっていました。
しかし、2022年から続々と、そんな悩みを解決するおしゃれで楽しいスポットが村内に誕生したのです。

手掛けているのは、『小松組』。
村の土建屋さんとして知られる、1968年創業の会社です。

代表取締役の小松隆人さんと、各施設を担当している佐藤陽平さんの二人に、お話をお聞きしました。

 

自分のやりたかったことと課題を掛け合わせた

— 小松さんは2015年に3代目として『小松組』の代表に就任し、新しい事業を複数立ち上げたそうですね。まずはその内容について、教えてください。

小松:当社は土木工事を中心とした建設会社として、これまで公共建設物をつくってきました。公共事業って、そのときに必要なものを工事するので、毎年安定した売上にはなりにくいんですよ。だから「いつこけるか、わかんねえぞ」という危機感は常にありましたね。

また、別の危機感もあったんです。代表に就任する3年ほど前から、村で強い違和感をおぼえました。私は西粟倉村出身です。幼少期から社会人になるまでのこの村は、ご近所さんや親戚などで助け合う精神がすごくあって、生活で困ることはほとんどなかったんですね。

でも、Uターンをした後は時代のせいか「困っているおじいちゃん、おばあちゃんが本当に多いな」と思うことが増えました。「この方たちを助けることが、まず絶対に必要だ」と感じ、マンパワーではできないから事業化してやろうと。そこで最初に始めたのが、家周り何でも事業でした。家の中や外、田畑や山、お墓でのお困りごとを解決する仕事です。

代表取締役の小松さん(右)と、各施設の担当者である佐藤さん(左)

— 危機感や違和感からのスタートだったんですね。

小松:地域の課題に常に目を向けようと意識しています。代表に就任してまもなく、家主の方にかわって家の維持管理をする空き家管理事業も始めたんです。お客さんが亡くなられて空き家になったとき、ご子息の方たちは村外に住んでいるケースがほとんどで、村内など空き家の近くに管理できる人はいなかったので、「やろう」と決断したというより自然な成り行きでした。管理をさせていただくと、家の周りの草刈りやお墓の掃除などの必要性も見えてきて、ご要望に応じるようになりました。

一方で、あるときから「西粟倉村に住みたいけれど住めず、仕事だけは西粟倉村でして、近隣の市町村に住まざるを得ない」というケースが増えました。もったいない話ですよね。空き家管理事業の流れから、空き家を使えるようできるだけ努力してみましたが、所有者さんから借りられない場合が多く、「じゃあもう建てるしかない!」と考えました。

でも私はひねくれ者で(笑)、村が村内産の木を大事にして謳っていることは理解しつつも、個人的にずっとコンテナに「かっこいいな」と憧れがあって。コンテナには箱ごと引越しができる点や、設置から施工までの費用や工期は木造と比べると抑えられるといったメリットもあります。「いつかコンテナで何かやりたい」という夢があったので、自分のやりたかったことと課題を掛け合わせて「コンテナで家をつくろう!」と決めました。それが2019年頃のことです。

 

— そうやって始まったのが、コンテナ事業の「小松組コンテナプロジェクト」なんですね。

小松:はい、現在村内に三つの施設があります。『安全第一団地』は単身移住者向けのコンテナ賃貸物件です。1棟目の利用開始は2022年6月で、翌年に全3棟が完成しました。『安全第一客室』は長期滞在・短期宿泊が可能な一棟貸しのコンテナ宿泊施設。2023年1月にオープンしました。『安全第一公園』は、芝生の公園スペースを併設した厨房付きの飲食・レンタルスペース施設。2023年4月にオープンしました。

賃貸物件『安全第一団地』

宿泊施設『安全第一客室』

飲食・レンタルスペース施設『安全第一公園』

— コンテナ事業では賃貸物件から着手したのですか。

小松:そうです、『安全第一団地』の1棟目から。着手したのは2021年秋です。寒い時期に、大工さんに本当に踏ん張っていただいて、2022年4月に竣工し、6月1日から本入居していただきました。現在は3棟とも入居されています。ちなみに、中で使っている木は村内産の木です。

『安全第一公園』については当初から構想にあり、実はコンテナ事業の根源になっています。地元の方でも移住者の方でも、やりたいこと・やってみたかったことを実現するスペースづくりを、個人的に本当にやりたかったんです。趣味でもお小遣い稼ぎでもいいから、小さなチャレンジをしたり、生きがいを感じるきっかけになるような空間を西粟倉村につくりたかった。仲間内で楽しんだり、講座やイベントを開いたり、出店の会場にしたりなど、いろいろな使い方をしていただけたらと思っています。

一方で、『安全第一客室』は当初の構想にはありませんでしたが、空き家同様、村内の宿泊施設も足りないのが課題でしたので、つくることにしました。 

もう一つ始めたのが、キャンプ場事業です。『森喫(しんきつ)』というキャンプ場を運営しています。場内が4つのエリアに分かれていて、エリアごとに1日1組限定となっています。2022年10月に正式にオープンし、2023年9月16日にリニューアルオープンしました。ソロやデュオ、3人〜4人のグループキャンプなど、さまざまな楽しみ方ができます。

キャンプ場『森喫』

— キャンプ場事業を始めた理由は何ですか。

小松:私がアウトドアが大好きなことがきっかけです。週末の度に屋外で炭焼きをし、美しい星空を見ながらおいしいお酒をたしなんでいました。のんびりと過ごすと心がリセットされ、自分を見つめ直す貴重な時間にもなります。

あるとき「これが大自然の中だといいな。一人でのんびりと心を休められる場所が欲しい……。それならつくればいい! そういえば山を持ってるじゃん!」と気付き、実際にソロキャンプをしました。その山には人工林ではなく雑木林があり、小川も流れていて、とても癒されたんです。

夜がふけて帰るときに「この場所、この空間を、心を休めたい方たちにご提供できないだろうか。手つかずの自然を楽しみたい人にぴったりの場だ。非日常的な空間と時間をお届けしたい」と感じ、この事業を始めました。

 

— 幅広い事業展開で、攻めていると感じます。

小松:いえ、私はオフェンス(スポーツでの攻撃側のこと)は苦手なんです。それに、地域の発展に向けて攻めの姿勢で新しいことにチャレンジするオフェンサーの事業者さんは、既に村内にいらっしゃいます。『小松組』は、地域にまだなお残る課題や地域の発展によって新たに生まれる課題を拾い上げて解決していくデフェンサー(防御や守備をする人)をやっていきたいですね。バランスがあってこそ、地域は保たれると思います。

 

緻密に計算された建設系の仕事に、カルチャーショックを受けた

— 2022年から2023年にかけて三つの施設と一つのキャンプ場がオープンしています。このスピードでできた理由は?

小松:社内外の方たちのおかげです。以前から、大工さんや左官屋さん、設備屋さんなど、外部のあらゆる職種の方と連携して仕事をしてきたんです。だから彼らは「業者」というより「仲間」という意識で、お互いのことをよく知っています。多くを語らなくても意気投合していて、信頼関係もありますし、完成するたびに打ち上げは欠かさずやってきました。建設系って息が合わないと、いいものはできないと思います。

デザインでは、村内に拠点をもち、ブランディングデザインを行って国内外で活躍しているデザインファーム『nottuo(のっつお)』さんにご協力いただきました。実は、『安全第一』や『森喫』というネーミングも、『nottuo』さんのアイデアです。

社内では、コンテナ事業やキャンプ場事業のスタートから共にやってくれたのが佐藤です。村に移住して入社し、今も頑張ってくれています。彼には「(外部の方に対して)自分のカラーも必要だし、とにかく信頼してもらえるように努めよう」と最初からよく言ってきました。

佐藤さんのアイデアで、『森喫』内を流れる川沿いにサウナを設置。本物の川で冷水浴ができる

— ここから佐藤さんにもお話をうかがえればと思います。どうして『小松組』に入社しようと思ったのですか?

佐藤:大手飲料メーカーに勤め、大阪などで8年間会社員をしていたんですが、辞めて「何をしようか」と考えたとき、「これまでやったことがないことをしたい」と思ったんです。今後の人生で自分の心が沸き立つようなことがしたい、仕事はそういうきっかけの一つにしたいなと思って、仕事を探していました。 

検索していて「日本仕事百貨」というサイトをたまたま見つけ、当社の求人を読んで「村に入って新規事業を行う仕事か、おもしろいな」と。新しいことにチャレンジできるところに興味を持って応募し、2021年6月に入社しました。

佐藤:入社時点では、コンテナ事業をやることと『森喫』をつくることしか決まっていない状態で、小松と話し合って事業計画を立て、二人三脚で進めていきました。当初は、『安全第一団地』の一棟目が完成したらそこに僕が住むという話もあったのですが、完成の2ヶ月ぐらい前から「いつできますか?」というお問い合わせをいただいて、待ってくださっている方がいらしたんですね。それに僕は、入社時に見つけていただき入居した家を気に入っていたので、そのまま住んでいます(笑)。 

 

— それほどニーズがあるということですね。異業種に飛び込んでみて、どんなことが新鮮でしたか?

佐藤:もうすべてが未経験でした。僕は雪かきくらいしかできないんですけど、とりあえず大工さんにくっついて行って、作業を見せていただいていました。小松はじめ、当社の先輩方が職人さんたちとの信頼関係を結んできているので、普通だったら絶対にこんな新人に触らせないと思うんですが、大事に至らない範囲で少しだけ作業させてもらったこともありました。

何も分かっていない新人ですから、心のなかでイラッとされたことがあるかもしれませんけど(笑)、手取り足取り教えていただき、今も温かく見守っていただいています。

建設系の仕事には、ガガーっと一気につくっていくようなイメージがありましたが、実際は本当に緻密に計算されていて、カルチャーショックを受けましたね。職人さんの技術、ものづくりに対するこだわり、思いなども感じて、本当にすごいなと思いました。

 

今後もコンテナで、みんなの幸せに繋がる事業をつくりたい

— 最後に、今後の展望や目標を教えてください。

佐藤:各施設の管理人をしていますので、完成したものを円滑に動かし、かつ最大限の売上が立つよう進めたいです。また、得た知見やアイデアを活かしながら、より良いものをつくりたいですね。ここまで突っ走ってきましたので(笑)、今年は自分自身を振り返り、今後の自分の動き方やプロジェクトについて考えていけたらなと思っています。

小松:コンテナの可能性や活用方法はまだたくさんあると思うんです。今後も時代の変化を常にキャッチしながら、大好きなコンテナを活用して、みなさんの「生きる幸せ」に繋げる事業ができたらと考えています。

— ご活動、応援しています。ありがとうございました。

■小松組コンテナプロジェクト(安全第一客室・安全第一公園・安全第一団地)

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