岡山県
西粟倉村
にしあわくらそん
【求人】仕事は「誰と働くか」かもしれない。『エーゼログループ』は野遊びの達人・熱田安武さんを迎え、「野遊びチーム」のメンバーを募集します!
Date : 2024.12.18
2024(令和6)年12月、野遊びの達人である熱田安武(あつた・やすたけ)さんが「チーフ野遊びオフィサー」として『株式会社エーゼログループ』に参画することになりました。
それまでも熱田さんとのお付き合いはあったのですが、本格的に共に事業を進めていくことになったのです。
そして、熱田さんのもとで野遊びインストラクターの修行を積む自然メンバーを募集することになりました。『エーゼログループ』は2027年に宿泊施設を開業する予定で、野遊びチームは宿泊事業の中のアクティビティ部門という位置づけになります。
野遊びって、何?
チーフ野遊びオフィサーって?
しかも、それを事業にしていく?
公私で親しくしている『エーゼログループ』の牧大介と熱田さんに、そんな疑問の数々と、これまでのことやこれからのことを聞きました。
二人の出会いや関係性の話から、つくろうとしているチーム像まで、思いが溢れ、二人は2時間語ってくれたのです。
今回は、それらをぎゅっと凝縮してお届けします。
働き方や生き方を考えている人、必読です。
受け継いだ技術や経験に「価値がある」と言ってくれた
— まず、二人はいつ出会ったんですか?
牧:熱田くんが二十歳くらいの頃、共通の知人がいて高知で出会ったんです。
熱田:僕は1987(昭和62)年生まれで、愛知県の山里育ちなんですが、海に対する憧れがありました。高知大学に栽培漁業という学科があると知り、高知大学に進んだんです。大学生時代から「野遊び」と称して、いろいろな人に野遊び案内をしていました。子どもの頃から祖父や父に教わったり、自分で野山を駆け回ったりして覚えた野遊びの知恵を活かして、楽しく遊んでもらうものです。自然薯掘り、うなぎ釣り、テナガエビやズガニ捕り、アケビや山菜採りなど、季節ごとにいろいろな野遊びがあります。牧さんと出会ったのはその頃です。
牧:その後僕は2009(平成21)年に『株式会社西粟倉・森の学校(現エーゼログループ)』を設立しました。広報を担当していた元スタッフのナオちゃん(編集部注:現在「うなつぐプロジェクト( https://tabe-tsugu.jp/unagi/ )」でうなつぐリポーターを務める熱田尚子さんのこと)に、興味がありそうだなと思って、熱田くんが大学時代の2010(平成22)年に出した著書『これ、いなかからのお裾分けです。』(南の風社/著者名は旧姓である福田安武)をあげたんですよ。
そうしたらその後、ナオちゃんは野遊び案内に参加して、なんと二人は結婚することになりました。結婚式に呼んでもらいましたし、結婚後は岡山県美作市で暮らし始めたので、お付き合いが深まっていきましたね。

(牧が西粟倉に来た頃)
熱田:2021(令和3)年2月、車の事故で僕の腰の骨が折れてしまいました。手術で腰の骨にボルトを一時的に入れ、退院して自宅に帰ってきたら、牧さんが「精がつくように」とすっぽんを持ってきてくれたんです。しばらく療養せねばならず、どこまで体が戻るか不安になっていたから、すごくうれしくて。
牧:会いに行って、「何か一緒にできないかな」と思ったんです。それから『エーゼログループ』がやっている企業研修事業を一緒にするようになったよね。
熱田:牧さんは僕がやってきた野遊びについて、いろいろな人から受け継いだ技術や経験、師匠たちの生き方そのものに「価値がある」と言ってくれたんです。僕は事故前まで、オオスズメバチを捕獲する蜂追いや蜂の駆除、罠猟を生業として、働くことと生きることが一緒でとにかくフルパワーでやってきたんですが、「熱田くんを生かすにはこういうやり方もあるけどどうかな」と提案してくださいました。僕が野遊び案内でやっていたことを、研修の一部で講師を担当させていただくことになりました。
牧:企業研修事業は今3年目になって、延べ50回開催しています。熱田くんがメイン講師になっている野遊びというコマがあるんです。あとは、仕事だけではなくプライベートでも親しくしています。熱田くんは僕にとって川遊びの師匠です。
熱田:牧さんは師匠って言いたがるんですけど(笑)、僕にとっては大事な仲間の一人。人は、うなぎでもイノシシでも「生きものを獲りたい!」っていうモードになりがちなんですが、愛でる気持ち、慈しむ気持ちも大事です。自分の気持ちだけでとるのではなくて、自然の生態系を破壊しない範囲の適量にするとか。そういう感覚を持っている大事な仲間の一人で、高め合えています。
牧:そう言ってもらえると恐縮です。師匠と言うときもありますけど、ふだんは「やっちゃん」と呼んでいます(笑)。
熱田くんの目や感覚を借りると、西粟倉の自然は手に余る
— 牧さん、公私で熱田さんと山や川に行っているんですね。一緒に過ごすとどんなことを感じますか。
牧:学びと驚きに満ちた時間です。「人という生きものはそこまでやれるんだ」と感動して、放心してしまうときもあります。僕も自然が好きで、子どもの頃からそれなりに親しんできましたけど、やりこんでいるケタが違うんです。幼少期からの鍛え込み方が違うので、身体能力も感覚の技術も圧倒的に違います。例えば、釣り針に糸をつけるスピードもすごいんですよ。
同じ場所にいても、五感で受け取っている情報量や質がぜんぜん違います。そういう経験に加えて、仮説を立てて考えることを続けている人なので、論理化もされているんです。無数の引き出しと思考プロセスの成果を、自然の中で見せてもらえるのは贅沢な時間です。とても追いつかないけれど、受け取れる情報量は僕も前より増えたと思います。
僕はだいぶ頭でっかちで、身近な自然にどんな価値があるのか、分かっていなかったなと分かりました。実はそれまで「西粟倉の自然はそんなに豊かではない、魚も少ないな」と思っていたんです。でも、熱田くんの目や感覚を借りて過ごすと、西粟倉の自然は手に余る。今の僕の力では遊びきれないんです。今あるものを楽しむ気持ち、やりたいことがどんどんでてきて、時間が足りなくて仕方がないです。
熱田:例えば、あまり価値がないと思われている川魚にドロバエ(正式和名タカハヤ)がいます。渓流の小さな魚ですが釣る対象としても奥深く、おいしいです。西粟倉でもそういう資源はたくさんあって、気づいている人も気づいていない人もいます。
— 自然に入るとき、熱田さんが大事にしていることは何ですか。
熱田:自分が楽しいことはもちろんですけど、それだけで終わらせず、誰かの足しになり、人の幸せにつながるかどうかを念頭に置いています。僕にとって一番大事なのは、誰かを心から喜ばせること。例えば、おいしいものを分かち合うと幸せを感じます。そのために、タイミングを選び、いい状態を見極めてとり、素材の本質的な価値を維持しつつ適切に処置をする。いい状態で食べてもらう。
自分がいただき続けてきたから、お返ししたいんです。好きなことや得意なことで誰かの役に立てたり、「来てよかった」と思ってもらえたりできれば、と。
ただ、力をつけると、とることがたやすくなります。とれるだけとると、人間は「生きものを減らす」方向にいってしまう。そうするといつか本当に自然界からなくなってしまうんです。僕がそれを守れなかった時代もあります。でも、明確に資源が減ったのを目の当たりにし「やっちゃだめだ」と覚えて、セーブできるようになりました。
— 自分と、人と、自然のためになるように動いているんですね。二人は、どのように自然をとらえているんですか。
熱田:日本では毎年秋が来て、冬が来て、春がちゃんと来る。四季が巡っています。季節ごとに旬のものが一斉に芽吹く。自分の力が及ばないなかで自然がまわってくれていることにありがたさを感じます。だから畏敬の念は強いです。自然をコントロールできるとは思っていません。
牧:里山文化には、自然を支配するわけではなく、でもただ受動的に受けるのではない営みがあります。能動的な受動性、と言えばいいのかな。あるものをどう生かすか、引き出すか、意識して働きかける意味では能動的ですけど、こちらの都合ですべてコントロールするのではない。でも、例えば「山や里に毒キノコがいっぱいあるよりもマツタケのほうがいい」とは考える。「おいしい」や「うれしい」を分かち合っていけるかを、ものさしとして持たざるを得ない。そうやって命が持っている力を絶やさないようにしてきたのが里山文化の真髄なのではないでしょうか。
経営者の目線から考えると、そういう姿勢がビジネスになるかはむずかしいんですけど、それがビジネスにできる会社じゃないと、『エーゼログループ』が存在する価値はないと思うから、チャレンジしたいと思っています。
ようやくそこに正面からチャレンジできるところにきました。木材加工から始めて、ビジネスを積み上げてきた仲間がいます。時代としてもそういう風が吹いているから、やるぞという気持ちになれて、仲間を増やしたいと思いました。機が熟した感じはありますね。
「明るい未来がある」と確信に近いものを感じている
— そのチャレンジが今回求人する『エーゼログループ』のアクティビティ部門ですね。熱田さんはチーフ野遊びオフィサーに着任しました。
牧:肩書きは悩んだんですけど、熱田くんのアイデンティティとして野遊びの世界を大事にしているので、それがいいんじゃないかなと決めました。
世代ごとに野遊び力がどんどん弱っているなかで、熱田くんは奇跡的に野遊び力が高い環境で育つことができました。時代を嘆くより、ご存命の達人の方たちはまだまだいるし、熱田くんはまだ37歳ですから、火種は残っている。ここで絶やさないようにしたい。そんな思いから、熱田くんのもとで野遊びを学び仕事にしていく人を募集することにしました。
熱田:僕がやっていることは、学生時代と何にも変わらないです。でも『エーゼロ』さんとの出会い、そして新たな仲間のおかげで僕一人ではできない未来が見えてきました。仲間がいると、とんでもなく野良仕事がはかどるんです。誰かの喜びになるところまで、生きる力をもったチームが育つことを目指したいです。
例えば、山菜やキノコがたくさんとれる山を育てていくっていうのは、チームで動かないとなかなかできない。そういう場所をつくっていくこと何年もかけて楽しみながらチームで一緒にやっていくからこそ、お客様に楽しんでもらうということもできるようになる。
牧:野遊びに没頭するチームにしたいです。自然相手だと「今やらないと……」ということだらけで、季節がどんどん過ぎていくのを悔しい思いで見送ってきました。やりたいことはたくさんあるので、組織的にやっていきたいです。
熱田:「育てたい」なんて言うと偉そうですけど、僕は成功ばかりではなくて、数多くの失敗をし続けてきました。自分の頭で考えてやったのであれば、たとえ失敗しても、近づけるところがあるから。考えて仮説を立ててトライしていくと、成長しかないんです。だから、挑むことを恐れないチームになれたらと思います。
牧:今、一つ大事な要素が出たね。無駄足を大切にする、という。たくさんやってみて失敗する。釣りで言えば、釣れない時間がたくさんあるということ。でもその結果、たどりつくところがありますよね。それは手間だけど、だからこそやる価値があります。

(企業研修で講師を務める熱田氏)
— どんな人に来てほしいと考えていますか?
牧:中卒以上であれば、性別や年齢は問いません。学ぶのはその人自身だから、学びの機会を大切にものにしてくれる人。自然が好きで、好奇心や探究心に溢れる人がいいですね。食べることが好きで、食べることに向上心があるというのは大事な要素かもしれません。
熱田:自然や生きものへの興味関心、やる気があれば、十分です。一緒にやろうという意志を持っている人が来てくれるだけで、明確に開けていく未来があります。最初の1年間は僕がやってきた営みを一通り一緒に経験してもらうので、過酷だと思う要素もあるかもしれないけど、楽しんでもらいたいです。体がそこそこ丈夫なほうが有利かもしれません。
— 最後に、求人への応募を検討している人へメッセージをお願いします。
熱田:里山は、人がちょっと手を入れれば豊かな状態を維持できます。自然の再生力が高いからです。自然を壊さず、絶やさないような付き合い方をチームの掟にして、さらにチームのみんなやご家族の喜びにもつながるように、自然の恵みを享受していきたいです。
自然があるおかげで、暮らしをたてることができます。自然そのものに対して何ができるのか、僕らができることはもっといっぱいあるんじゃないか。そうやってみんなで模索しながら、古(いにしえ)の人が営んできたことに光を当てていきたいです。根拠はないけれど、僕には確信に近いものを感じています。明るい未来がある、って。
牧:これから一般の方たちに野遊びを体験してもらうアクティビティ事業を始めたいと考えています。今回はそのための野遊びのインストラクターになるスタッフの募集です。野遊びはまず日帰りでできる内容を想定していきますが、宿泊するからこそしっかりと野遊びを楽しんでいただけるとも考えています。今『エーゼログループ』では、2027(令和9)年(予定)の宿泊施設のオープンに向けて準備を進めています。野遊びには、朝だからできることや、夜中までかかることがあります。村でどういうふうに時間を過ごしていただくか、僕たちが思う最高の状態で準備していきたく、場所をつくろうと考えました。
日本の里山文化の中核をなす生き様を、強くしっかり自分のなかに持っているのが熱田くんだと思います。それを改めてちゃんと学んでいくのは、未来の里山をつくるうえで欠かせません。チームつくり、里山文化を受け継ぎながら未来につないでいきたいです。次の『エーゼログループ』を共につくっていく人と出会えたらいいなと思っています。よろしくお願いします。
ー求人に関心のある方はぜひメールでのお問い合わせ( recruit@a-zero.co.jp )ください。
また、求人の詳細はコチラ(外部リンク)をご確認ください。