岡山県

西粟倉村

にしあわくらそん

最期まで生きるを楽しめる村へ。 過疎地における介護の未来をつくるケアマネジャーを増員募集!

エーゼログループ(以下エーゼロ)の福祉事業を担う株式会社ネ(2020年に100%子会社として設立)では、2022年より指定管理者として西粟倉村で高齢者介護サービス事業所を運営しています。今後、人口が減少していく中で、西粟倉を含む過疎地域の介護はどうあるべきなかのか。先駆モデルの構築に挑む株式会社ネでは、現場での実務にとどまらず、新しい介護の形をつくりあげていくケアマネジャー(以下、ケアマネ)を増員募集します。それにあたり、2023年2月より事業所の統括を担う熊谷剣哉(くまがい・けんや)と23年に取締役として同社に参画した加藤忠相(かとう・ただすけ)氏(株式会社あおいけあ代表)に求める人材や事業について話を聞きました。

 

介護分野のトップランナーが西粟倉で介護事業に取り組む理由

ー 2019年2月には、Ageing Asia Global Ageing Influencer 2019(アジア太平洋地域の高齢化に影響を与えている最も影響力のある指導者)に選出。NHK『プロフェッショナル~仕事の流儀~』でも取りあげられるなど、介護分野のトップランナーとして注目される加藤さん。神奈川県藤沢市で運営される「あおいけあ」には海外からも視察があると言います。お知り合いの紹介で西粟倉へ現場視察に来られた際にエーゼログループ代表の牧さんから株式会社ネへの参画 を打診されたそうですが、引き受けられた理由をお聞かせください。

加藤:これまでにもコンサルとして介護施設の立ち上げに携わることはありました。一方で、社会福祉協議会が関わるような比較的大規模な事業の改善に参加した経験はなかったため、良い機会だと感じたことが理由の一つです。もう一つは、将来的な人口減少を見据えた取り組みがしたかったからです。日本の人口は、100年後に4000万人台にまで減少すると言われています。すでに無医村もありますが、今後は医療や介護のない地域が増えていくでしょう。この西粟倉も電気や食の自給自足が可能な稀な地域ではありますが、医療や介護については同じ課題に直面しています。医療や介護も自給自足させ、人生の最期     を村で迎えることができるようにするにはどうすればいいんだろう。今後、この問題が全国的に深刻になっていくのは明白ですから、経験を積んでおきたいと思ったんです。そして、そこに真剣に取り組むにはエーゼロが最適な会社だと感じたわけです。牧さんが火中の栗を拾いにいく会社だとよく言われますが、あれはできないこれはできないとならない会社なので、ここなら取り組めると思いました。

(加藤忠相さん)

 

村の歴史をいちばん知っている施設へ

ー 加藤さんは2023年6月より株式会社ネの取締役に就任されました。一方、熊谷さんは22年11月にエーゼロに入社し、23年2月から事業所の統括を担われています。突然、責任あるミッションを担うことになった熊谷さんにとって加藤さんの参画は心強かったと思いますが、互いに議論を交わす中でどのような計画を立てられたのですか?

熊谷:加藤さんと施設の方針について議論し、“村の歴史をいちばん知っている施設にしよう”というミッションを掲げました。村の歴史というのは、この場所で生きてきた一人ひとりの人生の物語の集合体でもある。今を生きている方々の人生と向き合い、その物語を知っているからこそ残りの人生をより豊かにするにはどういうことが大事なんだろうということを考えることができます。それは「あおいけあ」が大切にされていることの一つです。「あおいけあ」ではケアプランを作成する際に利用者さん一人ひとりが大事にしたいことを大事にできる過ごし方ができるよう、その人の人生から理解することを重視されています。私たちもそこを突き詰めてやっていくと、村で一番歴史を知っている集団になるはずです。「あおいけあ」から教わったことを自分たちなりに言葉に落とし込もうとする中で、このミッションに行き着きました。

(熊谷剣哉)

 

世話をすることがケアではない

ー 新たに事業をつくりあげていくにあたって、「あおいけあ」のスタイルをベースにされていますが、あおいけあの介護に対する考え方や日本の介護現場が抱える課題についてお聞かせください。

加藤:介護施設の中には、1963年に制定された老人福祉法の考えが抜け切れていないところが多くあります。しかし、私たちは本来2000年に施行された介護保険法に則ってサービスを提供しなければないわけです。介護の概念が高齢者のお世話をするというものから「自立支援」や「生活の質の向上」へと変化したわけですが、アップデートできていない施設が多いということです。その結果、利用者さん一人ひとりが有する能力に応じた自立支援を行うことが求められているにも関わらず、現実には10時にはお茶を配って12時には食事の配膳をするといった職員主導の画一的なサービス提供に留まってしまっています。

自立支援を行うのであれば、職員がお茶を淹れてあげるのではなく、利用者さんがどうすれば自分でお茶を淹れることができるかを考えなければなりません。私たちの仕事は、業務職ではなくケア職です。ケアは英語ですが、日本語の意味を知っていますか?“面倒を見る”や“世話をする”と答える人もいますが、直訳すると“気にかける”です。語源はラテン語で“耕す”を意味します。つまり、利用者さんの持っている可能性の畑をいっしょに耕して、自力でお茶を淹れられるようになる環境をつくっていくのがケアであり、私たちが実践していることです。

(ネのメンバーのほとんどは、あおいけあに視察研修に行かせてもらっております)

 

村の介護サービスを小規模多機能居宅介護に一元化

ー 株式会社ネでは、当初提供していた3つの介護サービス(「小規模多機能型居宅介護」「通所介護」「訪問介護」)を、本年度から小規模多機能型居宅介護「ひだまり」に一元化されました。この点に関しても、小規模多機能型居宅介護(小多機)を中心に事業を展開される「あおいけあ」を参考にされたのでしょうか?

熊谷:デイサービス(通所介護)は制度上、利用者さんを敷地の外に連れ出すことはできません。だから、桜の季節にお花見に行くこともできないんですね。つまり、施設に行くと社会参加や地域との交流ができなくなってしまうわけです。高齢者を地域全体で支えていくのであれば、積極的に地域と交流した方がいい。小多機ならそれが可能であり、本来あるべき介護サービスを目指すのであればそちらの方が適していると考えました。また、小多機は通所・訪問・宿泊の機能がワンパッケージになっているので、利用者さんが無理なく自宅で過ごせる環境づくりを多方面から支援することができます。社会から隔離してしまう福祉ではなく、地域全体に開いている福祉を目指す私たちにとっては小多機が合っていたわけです。

(地域との交流)

また、経営の合理化という観点でも小多機が適していると考えます。デイサービスだと、こちらが決めたスケジュールで一律にサービスを提供しなければなりません。でも、みんながみんなお風呂に入りたいわけではないですよね。中には散歩をしたい人がいるかもしれない。つまり、望まないことのためにリソースを割いてしまっていることもあるわけです。小多機では介護に関わるすべての人が互いに連携しながら利用者さんに合った環境を整えていきます。だから、無駄を減らして全体のコストを下げながらサービスの質を上げていくこということを実現できるわけです。

加藤:過疎地等の地方では介護事業所の担い手がなく、社会福祉課協議会が運営を行っているケースがよくあります。中には赤字を解消することができず、地域の税金によって補填されるケースも少なくありません。 それは子どもたちに借金を丸投げしているようなものであり、村が補填してくれるからいいやというような介護の提供の在り方は是正していかなければなりません。村で最期を迎えられないということは、社会保障費が村の外に流れるということ。村で暮らし続けられる環境をつくることができれば、村の中でお金が循環して若い人たちにも行き渡ります。あらゆる産業が縮んでいく中で、ニーズの減少が少ない介護分野は過疎地の産業を支えていく柱になるものです。村のみなさんや村役場、そしてエーゼロと、地域をあきらめない人たちが集う西粟倉なら、過疎地であっても医療や介護が賄えて、最期まで安心して暮らし続けることができる先駆モデルをつくることができるはずです。

(小規模多機能事業所での風景)

 

積極的に外出し、地域と交流することがいちばんの支援

ー 未来に向けて事業を大きくシフトされたわけですが、改めて本年度の目標についてお聞かせください。

熊谷:4つのKPIを掲げています。一つは、持続的なサービス提供のために黒字化することです。次が、より上位な福祉系資格保持者を2人以上増やすことです。施設の水準を示すアピールポイントになりますし、収益加算の算定対象にもなるので、積極的に取得を目指したいと考えています。三つ目が、昨年比で外出及び地域交流の回数を2倍以上にすることです。家から施設に移動しても屋内であることに変わりはありません。「ひだまり」を拠点にして積極的に外出し、地域と交流することがいちばんの支援であると考えています。そして最後に掲げているのが、昨年比で要介護度の維持・改善率を2倍以上にすることです。小多機は利用者さんが元気で住み慣れた地域や自宅で過ごしてもらうための施設であり、悪化させてしまうのは、そもそもの目的にも反しています。

 

利用者さんが自身の資産を活かして活躍できる地域へ

ー さらに先のビジョンについてもお聞かせください。

加藤:「あおいけあ」では、作業療法士や理学療法士を養成する島根県のリハビリテーション学校からインターン生の受け入れをしています。中には職場を体験して、うちに就職してくれる学生もいるのですが、(株)ネでも同じ流れをつくろうと計画中です。学校のある島根と西粟倉は同じ中国エリアですし、この流れをつくれるとエリア内で人材が育つ環境が生まれますよね。今は職員の数もある程度充足していますが、今後は介護人材も減少していきます。また、新しい仕組みをつくっていくのであれば新陳代謝も必要です。村の高齢者が愛着のあるこの場所で最後を迎えられる環境をつくるには、未来を変えていく若い子たちがここで育っていく環境をつくることも大切であり、現場の改善と並行して未来に向けて基盤づくりも進めていきたいと考えています。

熊谷:今から3年程度でより良いケアプランをつくれるようにしたいですね。より良いケアプランとは前段で話したように利用者さんの人生の理解を重視したうえで、住み慣れた地域で”社会の一員として役割を持ち続けられる”可能性を創造し落とし込んだ内容ではないかと思っています。その結果、利用者さんが人生の中で蓄えてきた有形無形の資産が社会の中で活かされるようになると、要介護の方々がお金を稼ぎながらいろんな人に喜んでもらえる状況をつくりだすことができる。介護サービスを受けるのにも、いくらかは自己負担が発生します。その負担分くらいは稼げるようになるとステキですよね。エーゼロは地域で新しい経済を生み出していくことを大事にしてきた会社ですから、介護事業においても、そういった未来を理想に描いています。

多様な事業(木材、ツアー、飲食等)を展開するエーゼログループ。社内にはすでに多くの職場があり、利用者さんが活躍できるフィールドも多岐に広がっています。来年あたりには介護事業とその他の事業を融合させていきたいと考えており、ゆくゆくはエーゼロならではの攻めたコラボレーションも生まれることになるでしょう。その旗振り役となるのがケアマネであり、他ではできない経験を通じてより一層のやりがいや面白さを感じていただけるのではないでしょうか。

ー 利用者さんが人生の中で蓄えてきた有形無形の資産が社会の中で活かされるとは、具体的にどういったイメージですか?

熊谷:例えば、漬物加工の場所をつくって、スタッフとして漬物をつくってもらうというのも一つですね。認知症になっても作業記憶というのは残っているので、野菜を切ったりするのは上手にできるんです。他にも大工をされていた方であれば、子供向けに木の工作の先生をしてもらうのもありですよね。また、この村で暮らしを営んできたことで得た地域の自然や文化に関する情報も資産のひとつです。それらは地域の価値をぐんと底上げする可能性を持っており、観光の面でもみなさんに活躍していただけるのではないかと期待しています。

(村の子どもたちが施設の畑で作業しています。利用者さんも時に一緒に作業いただきました)提供:一般社団法人Nest/Pocket

 

新たな介護モデルの開発に携われるチャンス

ー 一般的な介護の枠にとらわれることなく、さまざまな面から地域で安心して暮らし続けることができる環境をつくれる点に関しては、エーゼログループならではですよね。今回採用される方も他にはない経験ができると思うのですが、ケアマネとしてこの事業に参画 する魅力についてお聞かせください。

加藤:その日楽しかったねではなく、その人が村で生きていて継続して楽しいなと感じられる状況をケアプランの中に入れていくのが、「あおいけあ」や「ひだまり」のスタイルです。ですから、ハピネスではなくウェルビーイングを意識したケアプランをつくれる方を求めています。
ものすごくウェルビーイングなケアプランをつくっても、その通りに現場が動いてくれなかったり、実施記録としても残されていなかったりして諦めを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。そういった方にとってケアプランが生きる「ひだまり」は、やりがいや手応えを感じていただける現場であると思います。
以前、私の知るケアマネが「推しのアイドルのコンサートを観に行く」というケアプランをつくられていました。この目的を実現するためには、もう少し歩けるようにならないといけないなど、ともに作戦を考え実行するチームを組まなければなりません。現場の理解やネットワークがないと実現が難しいことではありますが、「ひだまり」であれば柔軟に対応することができます。

熊谷:日本の過疎地域の介護をもっといいものにして、地域の一人ひとりが少しでも幸せな人生を送っていける、そして特に人生の最期においていい時間が過ごせるようにしていけるのがとても大事なことだと私たちは思っています。そこをいっしょにやりたいという志を共有してくださる方に参画してもらえるとうれしいですね。
ポジションとしてはケアマネジャーではありますが、チーム全体の取りまとめや今後の事業づくりにも大きく関わっていただく予定です。(株)ネでは、周辺地域の高校や福祉系専門学校と連携し、地域をよく知る若い世代との交流を企画・検討しています。そういったアクションを通じて地域に若者が残ってくれる魅力ある田舎をつくるのも私たちの役割であり、事業づくりの一環であると考えています。役割が多岐にわたり、尚且つ事業としても未成熟な部分が多いため、決して楽な仕事ではありません。でも、だからこそ得られるものも多くあると思います。これから3〜5年程度の期間は介護サービスの開発を経験できますから、そこで得たノウハウを活かして自分の故郷で事業を立ち上げたいという方にとっては最適な環境です。エーゼロとしても西粟倉でつくりあげたモデルを他地域に展開する可能性もありますから、その立ち上げに携わるチャンスも大いにあると思います。


ー ありがとうございます。少しでも関心のある方は是非求人をご確認の上、ご応募ください。

 

参考:一般社団法人Nest/Pocket Facebookページ

 

求人要項

職種 介護支援専門員(ケアマネジャー)
仕事内容 「小規模多機能ホーム ひだまり」小規模多機能型居宅介護にて

ケアマネジャー業務をお願いします。

・利用者さんの状況把握、重要事項説明、契約の締結
・ケアプランの作成
・利用者さんやご家族からの相談対応
・サービス変更における調整
・介護報酬などの給付の管理
・その他付随する業務 など

勤務地 株式会社ネ 西粟倉事業
小規模多機能ホーム ひだまり
〒707-0503 岡山県英田郡西粟倉村大字影石95-1
雇用形態 正社員
必要資格 介護支援専門員(ケアマネジャー)

普通自動車運転免許

賃金 月給 300,000円

基本給260,000 円 + 資格手当30,000円 + 将来設計給10,000円

その他:
・夜勤手当 6,500円/回
・通勤手当(上限あり)20,000円/月
※通勤手当は、距離により支給します。

就業時間 8:00 〜 17:00(うち休憩時間60分間)

その他:時間外労働 月平均5時間程度あり

休日等 週休二日制(勤務表によるシフト制)
※原則土日祝はお休みとしています(2024年度年間休日:125日)
加入保険等 雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険
選考 書類選考、面接選考(3回を予定)、適性検査

※面接はオンライン面接と現地での面接を予定しております

その他 本求人は地域おこし協力隊制度を活用したものとなります。

【地域おこし協力隊】詳しくは、総務省HPをご参照下さい。

*3大都市圏をはじめとする都市地域にお住まいの方が対象となります。(お住まいの地域により条件が異なります。)

*地域要件に合致し、西粟倉村地域おこし協力隊制度を活用し人件費や活動にかかる諸経費の補助金を西粟倉村より支給いただくことを見込んでおります。そのため補助金支給対象となる社員には、西粟倉村役場主催の研修への参加などの義務が発生することにご留意ください。採用後は、西粟倉村役場との面談予定もあり。

*西粟倉村との補助金については行政の各会計年度ごとに判断し、最大で3年間の補助を予定されている事業となります。

*地域おこし協力隊として任期はありますが、正社員としての採用となります。

*地域おこし協力隊の条件に該当しない場合も応募可能です。

 

 お問い合わせ・エントリーは recruit@a-zero.co.jp までメールにてご連絡ください。