鹿児島県

錦江町

きんこうちょう

拝啓、未来のローカルベンチャー様。鹿児島県・錦江町でついにスタートする「ローカルベンチャースクール」と、まちの魅力をお伝えします!

2023年秋、岡山県・西粟倉村、北海道・厚真町に続き、
ついに鹿児島県・錦江町(きんこうちょう)でも「ローカルベンチャースクール(以下、LVS)」が始まります。 

「スクール」という名称ではありますが、受け身でビジネスプランなどを学ぶところではありません。
ここは、自分と徹底的に向き合い、人生やビジネスについて熟考できる、“人間味とあたたかみのある場”なのです。

“人間味とあたたかみのある”理由は、参加者を強力にサポートする運営陣がいるから。

キーパーソンとなっているのが、LVSでチーフメンターを務める勝屋久さん・祐子さん夫妻、LVSの運営を担う『エーゼログループ』の大井健史さん(写真・左)、そして、LVSを主催する錦江町役場の池之上和隆さん(写真・右)です。

4名のみなさんに、これから始まるLVSへの思いをお聞きすると錦江町で何かが生まれそうな気配が感じられました。
ちょっと長い記事になりましたが、みなさんの情熱をぜひ感じてください!

 

起業家に「その人らしく生きるため」のサポートを

— まずは勝屋久さん、祐子さんがこれまで、二人でどのように起業家を支えてきているか、読者にお伝えできればと思います。経歴から教えていただけますか。

勝屋:ちょっと照れちゃいますね(笑)、こういうのって。私はずっとスタートアップの場づくりをさせていただき、これまで1万人以上の起業家の方と関わってきました。人生の変わり目のタイミングで、その人や会社が変わっていく様子をたくさん目にしてきました。そのなかで上場した方も多いです。代表的なところでは『株式会社アカツキ』の創業間もない頃から祐子さんと私で関わり、社員のチームビルディングなどをしてきて、今私は社外取締役になっています。また、『株式会社マクアケ』などでも、チームビルディングを二人でしたり、創業者の相談にのったりしています。

祐子:彼は場をつくることや、瞬間的にその場のエネルギーを変えることに才能があって、私は、悩みなど個人の領域にぐっと入り込ませていただくところを担当しています。

その人が持っている本来の才能ややりたいことに一番興味があるんです。その人が本当に生きやすくなったり、楽しくなったり、「その人らしさ」が出ることが重要だと思っています。

左:勝屋久さん、右:勝屋祐子さん

勝屋:相談にのっていたある経営者さんが、祐子さんのことを「鏡になって自分を映し出してくれる人」と表現されたんです。自分で気付いていないことも、その鏡を通すと浮かんでくる、と。他のいろいろな経営者の方もよくそう言ってくださいます。いわゆる「コーチング」「セラピー」「コンサルティング」と言ったものには当てはまらなくて、なかなか言葉でお伝えするのは難しいんですけどね。

祐子:私はいつもその人が、「自分の中に答えがあることを知っている」、そこに信頼を置き対話をさせてもらいます。分かりやすい答えを求めている方は多いのですが、時間をかけて数ヶ月後、数年後に、「あ!これだったのか」「そういうことだったんだな」と分かった、腹落ちしたという方もいらっしゃいます。

勝屋:そういった活動のなかで、岡山県・西粟倉村と北海道・厚真町の「ローカルベンチャースクール(以下、LVS)」にも立ち上げから二人で関わらせていただきました。地域のベンチャーや社会起業家の方たちの相談にのっています。

 

若い頃から現・町長と、まちの変化のために行動してきた

— 次に錦江町役場の池之上さん、これまでの経歴を教えてください。

池之上:僕は1988年、バブルの真っただ中のときに錦江町役場に入りました。「公務員は決まった仕事ばかりするんだろうな。刺激がないところなんじゃないか」と思っていたら、実際にイメージ通りで(苦笑)。

でも役場に入って、現在の町長で当時は職員だった新田敏郎(しんでん・としろう)と出会ったんです。歳が近く、意気投合しまして、「もっといろいろと変化させる必要があるんじゃないのか」と二人でよく話していました。

2007年、地方分権推進法が施行されたことをきっかけに、「自治体として自分たちの町のことは自分たちで決める」ための能力を身につけようと、新田と「九州自治体法務研究会」という勉強会に参加するようになりました。そこでいろいろな地域の方々と交流させていただき、「錦江町はかなり遅れている」と気付きまして(笑)。それが自分のなかでターニングポイントでした。

池之上さん(エーゼログループが今年度から企画運営に携わる職員研修にて)

池之上:2014年に公布された、地方創生を推進する「まち・ひと・しごと創生法」をきっかけに、「町外の人たちと一緒になってやらないといけない」と思い、役場と住民と町外の方々が一緒に実行する組織として「錦江町まち・ひと・「MIRAI」創生協議会」をつくりました。そこから少しずつ若い人たちが入って来たり、いろんな活動が町内でぽこぽこと起こったり、一定の成果はあったのかなと思っています。

そんなことをやりながら「もっとスピードアップしなければいけないのにな」と思っていた2021年12月、新田が町長になりました。そのときに新田町長から「2022年4月から産業振興課に行ってほしい。産業振興課で新しい仕事や人をつくることをやってくれないか」と話があったんです。「具体的にはどんなことなんですか」と聞いたら、『エーゼログループ』の牧大介さんの著書『ローカルベンチャー』(木楽舎)を渡され、「こんな動きがうちでできないものか」という話でした(参考記事はこちら)。

その本に勝屋さん、祐子さんが載っていて、部下が以前から「勝屋さんにお世話になっている」ということで、4月に産業振興課に着任して、5月には勝屋さんにアポを取りました。「お手伝いいただけませんか。助けていただけませんか」という非常にぶしつけなご相談に行きまして。

— それで錦江町と勝屋さんたちのご縁が始まったんですね。

勝屋:オファーをいただき、2022年7月から2023年春まで政策アドバイザーを務めさせていただきました。新田町長からも「LVSをやりたいんだ」というお話を聞いて、牧さんにおつなぎして、新田町長と牧さんも意気投合し、今日の流れになっています。

池之上:西粟倉村にうかがったり、新田町長と厚真町に行ったりもしました。当初は、まさか牧さんにまでつながれるとは思っていませんでした。

祐子:実は、私は錦江町に近い鹿児島県肝属郡肝付町の出身で、ご縁も感じました。錦江町へうかがったときは肝付町の実家にも寄っています(笑)。

新田町長と池之上さん、勝屋さん、祐子さん。絵はアーティストとしても活動している勝屋さんが描いたもの

— それぞれのご経験や思いがあって出会い、今回錦江町でLVSが始まるのですね。池之上さん、LVSを主催し担当するのは錦江町役場の産業振興課だそうですが、どういう業務をしている部署なのですか?

池之上:農林、水産、商工と、産業全般の支援や活性化を図る仕事をしています。農業委員会なども兼ねていて、いろいろなお話が舞い込んでくる、おもしろい仕事場です。

— LVSの運営を担う『エーゼログループ』の大井さんは、2023年4月に西粟倉村から錦江町へ移住したそうですね。

大井:『エーゼログループ』として錦江町に拠点を置き、現地マネージャーとしてローカルベンチャー事業を担当させていただくことになりました。北海道出身ですが、西粟倉村の『エーゼログループ』で4年間働いてLVSに関わり、役場の皆さんと連携しながら地域に新しいチャレンジを増やしていく仕事に携わってきました。 

「今後は自分自身が主体的に仕事をつくることもしていきたいな」と考えていた頃、弊社と錦江町のご縁が始まり、出張で錦江町へ何度も訪れるなかで、まちの皆さんの熱意やお人柄に魅せられたんです。自分から「行かせてください!」というお話をさせていただいて、今錦江町にいます。

現在は役場の皆さんとともにLVSの準備に取り組んでいます。また、錦江町にはすでに前向きにチャレンジしている事業者の方たちがいらっしゃるので、そうした情報やまちの魅力などの発信も担っています。

大井(エーゼログループ錦江町オフィスが入居するサテライトオフィス「地域活性化センター神川(旧・神川中学校)」にて)

錦江町の魅力はおおらかな町民性と、役場職員のおもしろさ

— 錦江町の魅力は何だと感じていますか?

池之上:僕は錦江町で生まれ育ちました。まず環境については、海・山・川がコンパクトに揃っています。基本的に年中暖かいのですが、車で町内を20分も走ると、気温が3~4度も低い冷涼な山間の地域にも行けるんです。こういう環境は珍しいのかなと思います。また、みなさんに言っていただくことで、僕も最近改めて思ったのが、食べものがおいしいこと。魚、肉、野菜がおいしく、安く買えます。

干潟、藻場、深海などの多様な海域環境をもつ錦江湾では、ヒラマサやカンパチの養殖などの水産業が行われる

幅60m・長さ2kmに渡る川床が広がる「花瀬川の石畳」では、毎年8月に音楽イベント「やまんなか音楽会」が行われる。近隣にはオートキャンプ場も

池之上:人については、あえてひとくくりにすると、皆さんおおらかです。あまりくよくよしない。人に興味がある人が多く、「お友達になりたい」とフレンドリーなところが、誇れる町民性なのかなと思っています。一方で、諦めが早かったり、大事なことを忘れてしまったりも(笑)。人に興味があるぶん、自分事としてあまり考えないのかもしれません。こうした町民性は、勝手な想像ですが、暖かい気候が理由だという気がしています(笑)。

勝屋:桜島や開聞岳が望めるところも素晴らしいし、お肉もめちゃくちゃおいしい。そういう魅力も大事ですけど、やっぱり私は人が魅力だと強く感じています。新田町長と話していて「こんなに思いがある首長っていいな」と。泥臭くて、「やってやるぞ!」と熱意があり、すごくいい感じなんです。付き合いの長い池之上さんとチームになっていて、しかも部下の方たちもおもしろいんですよ。熱量が高い。「まちがどうなるか」は、役場の職員さんの熱量次第だと思っているので、可能性と魅力を感じています。

研修の際も職員の方々は熱心に町の取り組みについて議論されていました

祐子:山も、海もあって、豊かなところですよね。これからの時代、それは重要なことだと思います。肝付町の中でも実家周辺は平野なので、雰囲気が違うんですよね。近いところにあるのに、まったく違うのでびっくりしました。

あとは、勝屋さんとかぶりますけれど、持続可能なまちをつくっていくには、トップにその意識があるかが重要で、トップの新田町長とプロジェクトリーダーの池之上さんが一枚岩っていうのは……

勝屋:そうだね。強い。

祐子:肝が一枚岩なので、大きな魅力だと思います。

大井:私も、役場の方たちの行動力や物事を決定して動かすスピード感に、ものすごく衝撃を受けました。また、自分が錦江町に移住するかどうかを悩んだときには、やっぱり「どういう人たちが錦江町にいるのか」が大事だったんです。

今、『エーゼログループ』のオフィスを構えているのは、旧・神川中学校という廃校をサテライトオフィスにした『地域活性化センター神川』なんですが、弊社を含め5社がここに入っています。働いているのは20~30代が多く、いろいろなチャレンジをされているんですよね。 

「今日こんなことやったんだ」「いいね、おもしろそう」「自分もやりたい」といった会話が日常的に繰り広げられていて、とてもおもしろいです。これから形になっていく、もっと挑戦が生まれていく、今まさに渦中にいる……というところが魅力的で、「これだけチャレンジしたい人がいるんだ。仲間として共有できるものがありそうだな」と思えたからこそ、移住に踏み切れました。

地域活性化センター神川内にあるコワーキングスペース

LVSは、参加者と運営側が共に成長していくプログラム

— 錦江町のLVS をどのようなものにしていきたいですか?

大井:LVSは、エントリーの後、書類選考を経て一次選考会の合宿(二泊三日)があり、通過した方が1ヶ月ほどかけて自分のプランを磨き直し、最終選考会を受けるプログラムです。採択されると、錦江町で最大3年間・地域おこし協力隊として着任し、年間400万円以上の事業資金のサポートを受けられます。

先日、勝屋さんや祐子さんと話していて、どういう場にしていきたいか、こちら側が意図を持つことが大事だと気付かせていただいたんです。外から入ってくる人をただ応援するだけではなく、まちの人のチャレンジももっと生まれていくような形にしていきたいなと思っています。外から入ってくる人とまちの人が一緒に事業をつくることもできたらいいなとイメージしています。その人が錦江町で起業することが、本当にその人にとって幸せなのかを大事にしながら関わりたいです。

祐子:錦江町の大切な事業ではあるのですが、第1回ですから、全員にとってどうなるか分からない部分もありますよね。人がつくるものですから、同じプログラムだとしても、どの地域で誰がつくるかによってプログラムのエネルギーは変わり、中身は違うものになります。それを楽しみながら、みんなでつくっていけたらいいなと思います。「私たちもわちゃわちゃしながらつくっているんですよ」と楽しさが参加者に伝われば、何かの引力を感じていただけるのではないかと。

勝屋:そうだね。1回目はおもしろいよ。西粟倉村(のLVS)もそうだった。

祐子:記憶に残って「おもしろかったね」って言い合える場になったら……

勝屋:記憶に残るっていいよね。

祐子:1回目のLVSをちゃんとやらなきゃと力みすぎると面白味に欠けるかもしれません。

引力のある場をみんなで意識を合わせてつくっていきたいなと。それを私も楽しみたいなと思っています。

2016年に行われた西粟倉LVSの様子

勝屋:LVSでは、採択する・しないという結果は出ますけれど、大事なのはプロセス。参加者の方は人生において今どうしたらいいか、悩んで考えて参加されるので、一緒に向き合って、参加者みんながいい流れになるように運営できたらいいですね。西粟倉村や厚真町のLVSの審査会では、みんなが本音で話します。これは他地域の地域創生系のプログラムには、あまりないんじゃないかなと思います。

池之上:熱い思いを持った方々が、自分のために一生懸命チャレンジできる場になれば、その姿勢に若い人や子どもたちが触発されて、チャレンジャーがいっぱい生まれるのではないかと思っています。すでにいらっしゃる事業者の皆さんにも「この人たちが頑張っているように、俺たちも頑張れるんじゃないか」と思っていただけて、まちの熱量がどんどん上がったら嬉しいです。

祐子:これまでのLVSでは、採択されて外から来た人がプランを実行し、そこにまちの人も巻き込まれていって、価値観を共有できる人たちのコミュニティにつながっていく、そんなシーンを見てきました。まちの活性化になり、地域の大きな財産になっていくのはLVSの価値だと思います。地域の魅力を改めて地元の人が受け取る機会にもなりますよね。

もう一つ、LVSの魅力は、人が育つことだと思います。参加者さんに対して「あなた、本気ですか?」と聞いて審査をさせていただく以上、私は自分にも「人生、本気ですか?」と問うて、うしろめたさがないぐらいちゃんと生きていないと、聞けないんです。関わる全員がその意識でやっていかないと成り立たない場だと思うんですね。だからLVSは「共に成長していく場」ではないかな。全員が育っていくプログラム。一般的な地域おこし協力隊とは異なると思います。 

勝屋:それと錦江町のLVSの魅力の一つに、大井くんの存在があると思っていて。あまたある地域創生プログラムって、だいたいコンサルが入っていて、ほとんどが「通い」なんですよ。でも、本気で移住してそのまちに住んでいる、しかも若い運営担当者がいるのは、とても強いなと。コミットしているなと頼もしく感じます。

役場の方と密にコミュニケーションを取りながら企画を進めている

— みなさんは錦江町のLVSに、どのような方にエントリーしてほしいですか?

勝屋:自分の人生を生きたい人。事業ややりたいことを通して、自分の人生に挑戦したい人に来ていただきたいですね。 

祐子:わたしもそう思います。付け加えると、自分の中に何か想いや欲求がある。でも一歩踏み出せない方は迷ったらGoです。まずは足を運んで頂きたいなと思います。

勝屋:迷ったらGOだな。うん、それ、いいね。

大井:その通りですね。錦江町のプログラムなのに、その人の人生をみんなで考えるところが、このプログラムのいいところだと思っています。その人が自分らしくあることで、結果的にまちもよくなっていく順番だったら素敵だなと思っているんです。

「このまち、おもしろいな」「楽しいな」というポイントを一つでも錦江町で見つけてくださる方がいいなと思います。地域を面白がって暮らせるほうがいいなと思うので、そんな方と出会えたら嬉しいです。

池之上:とにかく何でもいいので、挑戦したい人に来ていただきたいなと。僕もちょっと考えているんですけど、「自分の夢、自分の幸せのために、たまたまここでやってみようか」という方で構いません。「錦江町のために」とか「誰かのために」というのは、あまり考えていただかなくて結構です。

今日みなさんのお話を聞いて、改めて「自分自身も楽しもう!」と感じました。挑戦しようと思っている方とであれば、いろいろな楽しい形にできるんじゃないかなと思います。興味のある方、お待ちしております。

— 錦江町のLVSが楽しみになりました。ありがとうございました。

錦江町ローカルベンチャースクール2023 公式サイト

錦江町ローカルベンチャースクール2023 公式サイト
※延長しました!
【エントリー・書類提出締切:2023年12月30日(土)

<追加開催決定!オンライン説明会 日程>
12月13日(水)19:30〜21:00
12月16日(土)10:00〜11:30
12月18日(月)19:30〜21:00
12月26日(火)19:30〜21:00

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