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みんなで目指す、災害に強く、安心して暮らせる地域。西粟倉村の地域新電力会社『西粟倉百年の森林でんき』が新たな仲間を募集!

地域新電力を知っていますか?
電気の地産地消を目標にした、地域密着型の電力事業者のことです。
2016年の「電力の小売全面自由化」を機に全国各地に地域新電力会社が多数生まれ、新電力に切り替える一般家庭や地域で発電を行う自治体が増えています。

2023年3月、岡山県・西粟倉村でも地域新電力会社(発電会社)が設立されました。
名称は『西粟倉百年の森林(もり)でんき株式会社』。
この会社で現在、共に働く仲間を募集しています。

どのような会社で、どういう仕事をするのか、代表取締役の寺尾武蔵(たけぞう)さんと、取締役の中島雄平さんにお話をお聞きしました。また、“応援隊”として『西粟倉百年の森林でんき』に期待を寄せる『ちゅうぎんエナジー』と『テクノ矢崎』からも、メッセージをいただきました。

 

「あって当たり前」の電気の価値観を変えられたら

— 今回なぜ新電力会社を設立することになったのでしょうか。ミッションや事業内容も教えてください。

寺尾:西粟倉村が2008年から推進してきた「百年の森林(もり)構想」がベースになっています。村にある自然資源を余すことなく利用して、仕事をつくり、村を豊かにしていく構想です。

また、2019年に策定した「西粟倉村SDGs未来都市計画」では、「生きるを楽しむ」をキャッチコピーに、楽しみながら暮らすことができる「百年の森林に囲まれた上質な田舎」を、西粟倉村の2030年のあるべき姿として定めています。

『西粟倉百年の森林でんき』は、村のこうした構想や計画のもとで設立しました。地域に暮らす人たちのwell-beingを向上し、さらに「上質な田舎」を実現することをミッションにしています。

百森でんき代表取締役の寺尾さん

中島:大きく分けると、二つの事業があります。一つは、太陽光パネルによって発電する公共施設のPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)です。西粟倉村は国が選定した第一回目の脱炭素先行地域になっていて、その事業として行います。もう一つは、村がもっている水力やバイオマス等の発電施設管理事業です。小売りについては既存事業者と連携して行う予定です。

百森でんき取締役の中島さん

寺尾:目指すのは、村として本当の意味での電気エネルギーの自給自足です。つまり、村でつくった電気で消費をまかなうことができたらと考えています。発電設備の出力に足りない部分はありますが、将来的には外の資源に頼らない、やさしい村になれれば、と。その一助として役に立てたらと思っています。

 

— 村民にとっては、何が変わるのでしょうか?

中島:PPAは公共施設で行うため、村民のみなさまが直接的な利益をすぐに実感できないかもしれません。しかしPPA事業を通じて、公共施設の現在の電気料金を削減し・安定化することができます。また、公共施設の屋根に太陽光発電設備を載せることで、災害時に送配電網が切れた場合でも、防災拠点として公共施設の太陽光で発電した電気が利用できるなどのメリットがあります。

さらに、脱炭素に資する取り組みでもあり、CO2を削減できる仕組みのなかで生活できるのは他地域に誇れると感じます。

寺尾:電気って、姿や形は見えないけれど身近なものですよね。「あって当たり前」のものなので、ありがたみがなく、コスト的な側面ばかり見られがちです。はじめは「安い電気だ」という理由で導入していただき、ご自宅の屋根に太陽光パネルを載せていただけたらと思いますが、弊社の取り組みを通じて、電気の見方や価値観を変えることができたらと考えています。

現在の電力送電線には弱い部分があり、電気をつくることで災害時の安心安全を提供できますし、雇用も創出できます。村が進めている脱炭素社会への取り組みにもなります。村民の方に「太陽光パネルがあってよかった」「村でつくっている電気を使っているんや」と、ポジティブで誇りに思えるような価値観を提供できたらと思っています。

まずは『西粟倉百年の森林でんき』の人間として、「あんたたちがおってよかったわ」と思ってもらえるように努めたいです。

西粟倉小学校に設置された太陽光パネル

西粟倉村のキャッチコピー「生きるを楽しむ」に惹かれて

— 寺尾さんはどのような経緯で『西粟倉百年の森林でんき』に参画することになったのですか?

寺尾:私が生まれ育ったのは高知県高知市、桂浜のすぐ近くのまちです。工業高校の電気科で学び、1999年に『四国電力』へ入社しました。水力発電所の運用などを20数年やってきましたが、独立したいという夢があり、会社を辞めて次の活動拠点を探しているときに西粟倉村の取り組みを知りました。

私には人生における信念が二つあって、一つは、「仕事は親切。世のため人のためのお役立ち」だということ。もう一つは、人生は有限であるので、明日死んでもいいように今日を全力で、もちろん仕事も楽しむこと。西粟倉村のキャッチコピー「生きるを楽しむ」に、私の信念を実現できるところだと惹かれて、地域おこし協力隊として修行させて欲しいと申し込みました。

2022年7月に西粟倉村へやって来て、村の水力発電やバイオマス発電の運用業務をしています。これまでの経験を活かして働きたいとは思っていましたが、西粟倉村役場の地域おこし協力隊をしながら社長をさせていただくことになりました。

村内施設に暖房や給湯用の熱供給を行う、熱エネルギーセンターに向かう寺尾さん

熱源となるウッドチップの詰まりを掃除する、メンテナンス作業の様子

— 中島さんも参画することになった経緯を教えてください。中島さんが在籍している『三ッ輪ホールディングス』は、『西粟倉百年の森林でんき』の株主ですね。

中島:はい。私は『三ッ輪ホールディングス』に在籍しながら、『西粟倉百年の森林でんき』の取締役を務めます。この春から、西粟倉村と東京を行ったり来たりする予定です。

『三ッ輪ホールディングス』は創業して80年以上の LPガス事業者である三ッ輪産業をはじめ、電力事業やエネルギーソリューション事業などを展開する会社を傘下に持つエネルギー企業グループです。地方銀行や鉄道会社など多様な企業様や自治体様と連携し、テクノロジーを駆使した事業展開をしているほか、スタートアップへの出資なども積極的に行っています。きっかけは、共通の知人から、西粟倉村にある『エーゼロ』の牧大介さんをご紹介いただいた事でした。エーゼロさんとは、ふるさと納税における再エネ電気返礼品化の事業でご一緒させていただいています。

この度の事業では、西粟倉村の「百年の森林構想」と弊社のビジネスの考え方が一致していて共感したことと、役場や『エーゼロ』のみなさんの熱量やお人柄を感じたことで、「我々の経験でお手伝いできることはないだろうか」と考え、参画させていただくことになりました。『三ッ輪ホールディングスグループ』として、脱炭素ビジネスの拡大の必要性も感じていたので、新たなチャレンジの一つと考えています。

個人の話をしますと、前職では『髙島屋』で物産のバイヤーをしていました。当時から地域貢献に関心があり、『三ッ輪ホールディングス』でも地方創生の事業を担当しています。脱炭素社会にも興味をもっていましたし、「生きるを楽しむ」というすてきなキャッチコピーにも惹かれて、「『西粟倉百年の森林でんき』を担当させていただきたい」と手を挙げました。

 

若い人が多く、生き生きとしている西粟倉村

—『西粟倉百年の森林でんき』の特徴の一つが、西粟倉村と『三ッ輪ホールディングス』のほか、『ちゅうぎんエナジー(※)や『テクノ矢崎』が株主として関わっている点ですね。

※ちゅうぎんフィナンシャルグループの投資専門子会社ちゅうぎんキャピタルパートナーズの100%出資会社

寺尾:はい、同じ会社の所有者ということになります。みなさまのやりたいことや実現したいことに向けて、共にやっていけたらと考えています。これからの地球のために取り組む会社ですから「損はさせません!」と思っています。

中島:みなさまからご意見をいただきながら、事業計画を共につくっています。リソースを提供しあって、想いを共に伝え、価値のある事業をつくっていきたいです。

 

— 寺尾さんと中島さんの二人が中心となって進めていくのですね。

中島:発電所などの現場管理は寺尾さんが担当し、『三ッ輪ホールディングス』にはエネルギー事業の経営ノウハウがあるので、経営面や融資に関する中国銀行さんとのやりとりなどは私が担当します。

 

— 西粟倉村の印象をどう感じていますか?

寺尾:西粟倉村に来て、約半年経ちました。自然が好きな人にはたまらない環境です。でも田舎でありながら、高速道路が走っているので鳥取や神戸などへのアクセスがよく、車があれば生活するうえで困ることがありません。まさに、上質な田舎です。

また、村民の方々はもちろん、村に大勢いる地域おこし協力隊やローカルベンチャーの方たちなど、おもしろい移住者が多く活動しているところも素晴らしいです! 彼らは思いをもって村に来ていますので、熱量がすごいんです。地域おこし協力隊の会合や村のイベントなどで接点もあり、刺激を受けていますし、いろいろな知識も教えてもらいました。西粟倉村に来たら、自分の将来の可能性がふくらむのではないでしょうか。冬は雪がたくさん降るので寒いですが(笑)、楽しくていいところですよ。

中島:役場など村内に若い方が多く、皆さんが生き生きと仕事をしていることに驚きました。その生き生きした皆さんが活躍している、素敵な村だなと思いました。だからこそご一緒したい、おもしろいことができるんじゃないかと楽しみにしています。

また、周囲に「西粟倉村でこういうことを始めます」と話すと「西粟倉村ってすごいよね」と言われることが多く、村の偉大さを感じているところです。

 

電力にまつわる幅広い業務に関心のある方、求む!

— 今回募集する求人は、どのような仕事なのですか。

寺尾:地域おこし協力隊としての募集になります。内容はその方のご経験や状況に応じて、現在私が担当している管理業務をお願いし、最終的には業務全般をできるようになっていただきたいと考えています。現在、外での実働部隊は私一人ですので。未経験でもOKです。

 

— 求めているのはどういう人でしょうか?

寺尾:仕事では、現場で機械を触ることが多いので、どうしても力仕事や汚れ仕事が多くなります。そういう仕事も楽しめるタフな方はポイントなのかもしれません。

ですが、一番大切なのは「人間性のいい人」につきるかなと思っています。村という小さなコミュニティのなかで、つながりをつくって仕事をしていきます。コミュニケーションが苦ではない人がいいですね。

はじめは仕事を生活の手段にするという考え方でいいんですが、ゆくゆくは仕事を通して自分の価値を世の中に表現できる人になってほしいです。村の人をまきこみながら、喜びや感謝を分かち合えるといいなと。興味のある方、お待ちしています!

ウッドチップを燃やした後の灰を掃除する際には、全身が真っ黒になることも

中島:小さい会社ですので、マルチに対応していただくことになります。現場のことはもちろん、融資を受けて事業をまわしていくスキームもゼロからつくっていくので、あらゆることを学べて幅広い視点を身につけられると思います。そういった幅広い業務に関心のある方、ぜひ一緒に働きましょう!

西粟倉村の第一小水力発電所「めぐみ」

 

私たちも応援し、共につくる仲間です

『西粟倉百年の森林でんき』の株主であり、“応援隊”として立ち上げの議論から関わり、新会社へ期待を寄せているのが『ちゅうぎんエナジー』と『テクノ矢崎』です。
『ちゅうぎんエナジー』は、グループ会社である『中国銀行』が2022年に西粟倉村が選定された『脱炭素先行地域』の計画で共同提案者となった関係から、共同出資者となりました。『テクノ矢崎』も、「脱炭素先行地域」計画の共同提案者です。

ここでは『ちゅうぎんエナジー』の松岡信一さんと『テクノ矢崎』の大竹裕介さんから、求人に向けたメッセージをいただきました。

 

「自治体との共同出資というスキームに参入するのは珍しいのですが、銀行として地域の課題解決は重要だと考えており、中国銀行及び弊社と西粟倉村の「脱炭素」という課題解決に向けた想いが同じと考え、共に取り組ませていただくことになりました。

中国銀行及び弊社は事業性の評価や検証を担っていく予定で、ファイナンスの知見をふまえ、しっかり努めてまいります。

西粟倉村には、先進的なアンテナを持つ魅力的な方が多いと感じています。だからこそローカルベンチャーがどんどん生まれているんですよね。『西粟倉百年の森林でんき』さんには起業家精神のある方が合うのかなと感じます。脱炭素化先行地域の取り組みが、全国のモデル事例になってくれればと期待しています」

松岡信一さん(株式会社ちゅうぎんエナジー 代表取締役)

 

弊社はこれまで村内の地域熱供給事業などに参画させていただいており、現在は脱炭素先行地域の共同提案者として、省エネ設備の提案や効果検証などでもお手伝いさせていただいております。今回地域新電力会社の設立ということでお声掛けいただき、参画させていただくことになりました。技術的なサポートをさせていただくだけでなく様々な知見や情報を学ばせていただく貴重な機会をいただいたと思っております。

西粟倉村には若い方が多く、いつも刺激をいただいています。新しい事業になりますので、西粟倉村や『西粟倉百年の森林でんき』さんには、協力者や関係者に意見を求めるなど積極的にコミュニケーションをとり、自分から関わりをもっていただける方が合うと思います。新たな事業を通じて、若い方にも我々の業界や仕事に少しでも興味をもっていただけたらうれしいです。

大竹裕介さん(テクノ矢崎株式会社 エンジニアリング統括部 ソリューション部)