AIで自治体職員の未来開拓力を開放する。株式会社A0AI(エーゼロエーアイ)始動
Date : 2025.04.01
「自治体の仕事は、もっと面白くなります」
そう語るのはシリアルアントレプレナーとしてIT関連事業をいくつも立ち上げてきた佐藤道明。佐藤は、2023年からは株式会社エーゼログループの取締役として自治体が地域の未来を切り拓くことに伴走してきている。
佐藤が今、新たに立ち上げようとしているのはAIを導入することで、自治体の在り方を進化させていこうとする新会社「株式会社A0AI(エーゼロエイーアイ)」。この会社は、作業の効率化のためのIT支援やDX化促進をするものではありません。
目指すのは“正解のある仕事”をAIに任せ、自治体で働くひとりひとりが「地域のために何をするのか」を考えられる余白を増やし地域の未来をつくっていくこと。つまり自治体職員の方々の中にあるクリエイティビティを開放し、価値創造型の自治体への進化を促すということです。
この挑戦は、やがて自治体というシステムそのものの再設計につながっていくかもしれません。
自治体×AIという組み合わせにどんな可能性があるのか。佐藤の想いと構想を、じっくりと紐解きます。
<佐藤道明のプロフィール>
佐藤道明(さとう みちあき) 株式会社A0AI 代表取締役 |
1989年電気通信大学卒業。リクルートでシステム開発、新規事業開発を経験した後、1999年に起業。創業した2社をバイアウト。2005年にはベトナムと日本で株式会社Hanoi Advanced Lab(HAL)を同時創業し代表取締役に就任。 HALはエンジニアリングカンパニーとして、上場企業からベンチャーまで多くのクライアントの経営分析や戦略フェーズから開発工程に関わり、目的志向のシステム開発を実施。 同時にシード投資をおこう。 2018年には株式会社ツクルバと共同で「株式会社KOU」を設立し、オンラインコミュニティプラットフォームの開発に取り組む。 社会起業家が育つ土つくりをする株式会社うむさんラボの立ち上げメンバー。2022年から株式会社エーゼログループ参画。2023年から取締役COO。株式会社A0AIを2025年4月に設立し代表取締役に就任。 |
”正解のある業務”はAIが担う?それは自治体の仕事に何をもたらすか。
―早速ですが、A0AIを立ち上げ、代表に就任される佐藤道明さんご自身について教えてください。
佐藤:リクルートでは全社的な情報システムの構築や、新規事業の立ち上げに携わり、その後独立して2005年には株式会社Hanoi Advanced Lab(HAL)を立ち上げました。
HALではサービスそのものも作っていましたが、クライアントの会社で組成されたプロジェクトチームと共にシステム構築に取り組むこともしていました。
プロジェクトチームと取り組むのは新サービスの開発もあれば、業務全部をひっくるめた業務改善のためのシステム構築もありました。例えば配車サービスや会計サービスを全部含めて一気通貫で、どんなふうにやったらいいか‥のようなものです。
すごく手応えを感じたのは、プロジェクトチームがその会社にとって将来のコアメンバー候補者で組まれたメンバーだった時です。
このプロジェクトチームの人たちは全社員と関わって会社全体のことを考えないといけないし、いろんな部署のいろんな人とやり合わないといけない。
このチームメンバーは現状分析することによって”全部”を知っていきます。財務諸表や業務フローなどの資料も確認するし、実際の現場へも足を運びます。誰かが作った資料をみるだけでなく、自分の目で見に行きます。
バイク便のシステムであれば、バイク便が動く時に行き、バイク便に乗っている人のところに行きます。こういうことが本当に事業の架け橋となり事業する上での基礎になるのです。そうして新しく担当する業務ができた時に、関係する先、現場を見て観察して理解をして、そのうえで計画を立てていくっていう力を身につけ次世代を担っていく人たちになっていきました。

(株式会社Hanoi Advanced Lab(HAL))
―この経歴を持たれている佐藤さんがA0AIを立ち上げるにあたって、どんな未来を作っていきたいと思われてるか、どういう価値を誰に届けていきたいと思われているのか伺わせてください。
佐藤:多分、AIは今までの僕ら人類が作ってきた道具の中でも最も人間の生活とか生き方に影響が出るんではないかと言うぐらいインパクトの大きいものなんだろうなと思っています。 そのインパクトの大きさは既に多くの人が何となく感じ取れてると思うんですけれども。
僕は、AIを未来に有益な道具にしたいんです。
例えばナイフ。使い方次第では果物の皮を剥きおいしさに寄与することも、人を傷つけることもできるナイフですが、やっぱり果物を剥くナイフにしたい、そんな感覚です。未来の子供たちの世代には、美味しさを生み出すナイフのような、AIを未来で幸せをもたらす道具にしたい。
そのために僕たちは、自治体内にAIを活用できるチームをつくることをします。まず地方の小さな小規模な自治体から僕たちはスタートしようとしていますが、将来的には、ある程度大きな自治体や県庁もクライアントとなっていただきたいと考えています。

(地域のイメージ ※写真の場所とA0AIは関係ありません)
―提供先は「自治体」だと仰っていましたが、自治体はAIが入ることでどんなふうに変わっていけるのか、また自治体が変わっていくことで地域はどんなふうに変わっていけそうでしょうか。
佐藤:AIが自治体に入ると、まず「正解かどうか」の部分はAIが全て確認、回答してくれます。
A0AIの親会社であるエーゼログループは、この10年間自治体向けの研修事業にも多く携わってきました。僕も講師として伺うこともあるのですが、この研修で感じたことは、まず自治体に勤める方はとても優秀な方が多いけど「正解でなければいけない」大変さがあることです。それによって苦しさもあるように感じるのです。
例えば、ある部署に配属されたらそこの業務での法律やルールに対して間違っていないかの確認に精一杯になってしまう。その業務を通じてこんな世界を作りたいってところに行くまでには時間がかかってしまい、ようやく仕事に慣れてきたら異動がありまた正解かどうかに追われる日々になります。
この「正解かどうか」という部分はAIに全て確認してもらうことができます。
政府や地方自治体が法律や地域のルールの情報をAIに入れることができれば、大体答えが返ってくるようになります。
次に、AIを活用すれば目的に向かっていくための知恵を得ることができます。
「これをやるとしたら、どういうリスクがありますか」、「どんな法律がありますか」、「何を活用できますか」・・このような問いかけは全部、AIが助けてくれるはずです。
自治体に限らないことですが、新人の方だと当たり前に分からないことが多いです。すると先輩に尋ねなければいけない、けれど忙しそうだから聞けない、そうこうしていると数日経ってしまう。実際に聞けば5分で終わることなのに‥その状況をAIに質問すると、回答やアドバイスをし助けてくれます。
正解や知恵を得ることが簡単に素早くできるようになると、自治体の方々の仕事は「地域のために何をするか」ということに時間をもっと使える。これはすごく大きな希望です。そうすると、自治体の仕事は更に面白い仕事になるんじゃないかなと思っています。
自治体が地域のために何をするかを考え、試行錯誤できるなら必然的に地域で起こる挑戦は増えていくと思います。
―いわゆるDX※とAI導入は何が違うのでしょうか?
佐藤:重なってるようで重なってなかったりしていてね‥要は今はDXがないとAI使えなかったりするところもあるんですよね。でもAIが進んでいくと、そういうのも基本的に飛び越えていくかもしれないとも感じます。
DXが必要だと叫ばれてデジタル庁もできて、それなりに自治体DXっていう領域が生まれそこでの商売もあるけれど、AIの導入とその為のチームがまずできると結果的にDXを進めていくっていうこともやりやすくなるのではないでしょうか。
ただ、はっきり言わなければいけないのは、今回僕らがやろうとしているのはDXの話ではなくて、AI導入の支援とその為のチーム作りです。
AI自体がとてつもないスピードで変化するので、一瞬でいろんなものが新しく、この前出たものが陳腐化していくとか入れ替わっていくっていうことがあります。あまりに変化が大きい世界だからこそ、変化をしっかり観察しながら上手く使う。都度都度出てくる、新しい技術を上手く使っていく力を持つっていうことが、より本質的なことなのかと思います。
※DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術を活用して業務や組織、社会の仕組みを改善する取り組み。例:住民票や各種申請のオンライン化
僕らが作りたいのは一人一人の内発的な使命感を持つチーム
―提供されるサービスについて具体的に伺わせてください。
佐藤:自治体内にAIを活用して試行錯誤できるチームをつくるための研修サービスを提供します。アウトプットはチームです。
正解があることや知恵はAIに力を借りる。すると自治体や地域にとっての目指す北極星(ありたい姿・目的)が何かを考えられる、そしてどうAIを手段として使いながら北極星に向けて手探りで進んでいけるだろうかを考えられます。そういう意識と技術を持ったチームを作ろうとしています。
首長の目線でAIを使った何かを実現してほしいということに応えるのではなく、チーム一人一人がAI×地域の先に見える北極星を言語化することから始まって、試行錯誤することでその術を見出していく。
トップがこういう結果を出せって言った瞬間、義務的な責任感で走り出してしまうけれど、僕らが作りたいのは一人一人の内発的な使命感です。それぞれがこうしたいっていう気持ちでチャレンジしていく状況自体をアウトプットにしたいです。
―これは対自治体の仕事としては非常に難しい話だとも思います。いわゆる自治体の仕様書やKPIは、「メンバーが内発的な動機で何か始めるのでやってみないと分からないんです」なんてことには対応が困難なことは普通だと感じます。受け入れてもらえるでしょうか。
佐藤:どうでしょう。笑
でも今実際に話を進めている自治体さんはいて、そこの首長さんとはこの話を何度もして共感をいただき、手応えを感じています。
このチームができるっていうことが、義務感に追われてる、そこにハマって、そうするしかないって諦めの中にいる自治体の人たちを解放していくことになるのではないか、その自治体の人たちが、より人間らしく生き生きと輝いていく余地を作っていくのではないか。自治体の中でそのチームが希望の光になっていくことを目指しています。
責任感の世界から使命感への世界への、転換の起点になるチームが生まれるかどうかっていうところこそ、目指していくアウトプットだと思っています。
そのチームがしっかりと育つことができれば、AIを活用したその自治体に合った仕組みを作っていくことにもつながるはずです。
僕は自治体は「地域のこういう未来を作っていく」を実現できるチームであり、この役目は自治体しかできないと思っています。
しかし今の自治体の業務は、北極星を抜きにしてやらないといけないことで時間が塗りつぶされそうになっている。何か新しいことはストップもかかりやすい状況での中で地域っていうもののビジョンを育てていくっていうことがなかなか難しいと思います。
理論的な話になりますけど、個人個人が自らのビジョンを持ち育てていくっていうことがない中で、チームのビジョンっていうのも育ちようがないと思います。チームとか会社のビジョンを言語化して押し付けると、そこには義務的な責任感しか生まれません。個人の中の内発的なビジョンがあることで使命感は育つのだと思います。でも自治体では個人のビジョン抜きに地域のビジョンとか構想とか作ったりするんですよね。
だから、そういう大きな矛盾を抱えている自治体っていうものがAIの導入で大きく仕事の仕方とか、個人のあり方って自治体職員1人1人のあり方っていうのが、根本から変わっていくチャンスなのかもしれません。
自治体の人たちがなりたい姿になれるんだと思います。
―根本から自治体の在り方を、個人のレベルから変えていくんですね。本当に本質的なチャレンジだなと思います。
佐藤:より自由に主体的に生きていきたい人は、都会に出て行くという時代が長かったし。都会でもより自由に好きにやりたい人は、起業して自分で会社を作るとか、海外に行っちゃうとかします。
やらないといけないことをとにかくしっかりやる、まあまあ正解が決まってる世界が強固に残り続けてるのは地方で、その真ん中にいる自治体っていうのは、やらないといけないことで時間が埋め尽くされて苦しい中、歯をくいしばってる人たちが多いような気がします。
そしてその中に新しく就職、転職して人が入っても、苦しいから辞めちゃうんですよね、前向きな気持ちで頑張りたい人ほど辞めちゃうことになる。ただでさえ人手不足っていうことが進んでいるので、採用しようと思っても簡単に採用できない、持続しないっていう状況だと思います。日本全体が人手不足の中で、地方の自治体っていうのは、ますます人の採用は難しくなってるからこそ、魅力的な職場にできないといい人は来ないし、ますます悪循環に入ってしまいます。
そこで前向きな空気を纏うことができる自治体になれて、前向きな人たちが増えていく良い循環を生み出していけるかが大きな分岐点なんでしょうね。
AIは構造的に地域が変わっていくためのチャンスというか、ある意味、幕末の黒船ぐらいに社会を変えていくようなインパクトをもたらすかも知れない。それをいかに意味のある変化にしていけるか、そのための起点になるチーム、人を作るっていうことがA0AIのやっていくことなんだなと感じています。
―自治体の採用とAIっていうところでいくと、どんな可能性が見えますか。
佐藤: AIの導入は、自治体の仕事をより“人間らしい”チャレンジへと変える可能性があります。主体的に未来を考えることができる環境こそ、優秀な若者にとって魅力的な職場です。そうすれば自治体で仕事をしたいという人が単純に増え、その地域の自治体に合った方と出会える確率が格段に上がると思います。
AI導入は単なる効率化ではなく、職場のあり方そのものを変える起点となり得ます。業務のシステムも、人事構造も、より柔軟で有機的な“チーム型”へと進化していく可能性を秘めています。
未来のクライアント、未来の仲間を募集しています
―今回お話しいただいたようなサービス提供先は募集されていますか?
佐藤:はい、もちろんです。気になる方はお気軽にお問い合わせください!まずはメール( a0ai@a-zero.co.jp )にてご連絡いただけると嬉しいです。
またクライアントの自治体さんが複数になると、将来的には横の交流も考えられます。A0AIの仲間になっていただくことで一緒に切磋琢磨できる、横の繋がりもできることも将来提供できる価値かもしれません。
―A0AIでは求人はされていますか?
佐藤:はい!しています。
地方の可能性に対してAIで未来に何か残したいっていう人がいいと思います。能力としてはAI系の知識がちょっとある人が欲しいですね、やっぱり。あとファシリテーションが出来る人もいいと思います。どういう人とご縁があるか分からないけど、A0AIの今後の展望として、最大5人ぐらい仲間にしていきたいですね。こちらもお問い合わせお待ちしております。
―ありがとうございました。