「株式会社エーゼログループ」の発足。 僕たちは、未来の里山をつくりたい。【後編】

前編では、2023年4月に設立される「株式会社エーゼログループ」の代表取締役の牧大介が合併の目的にある多拠点展開のこと、また目指す「未来の里山」について語りました。
後編では、さらにこれまでについて振り返りながら、これからの仲間づくりなどについて触れていきます。

 

 

第一創業期を経て、2023年4月からは第二創業

―改めてこれまでについても伺わせてください。
2009年の森の学校設立からの約14年間で積み上げたものはなんだったでしょうか。

牧:森の学校とエーゼロを立ち上げてやってきたここまでを第1創業期。
そして株式会社エーゼログループとしてスタートするこれからは第2創業期と捉えています。

森の学校のメンバーと(2018年)

第1創業期は、田舎の過疎化が進んでいくことに対して「本当にそうなるしかないのか」と抗ってみたかった。
田舎が好きで、自然が好きで、もともと森の勉強もしてきた僕にとっては、それらがもう駄目でただ縮んでいくしかない、どうせ無理だと諦めてしまうのがどうしても嫌だった。
過疎化が進むほど色んな資源、土地とか家とかも含めて安くなってしまう。経済ってそういうものですよね、みんなが諦めるほど値段が下がっていく。

そういう時こそ、未来を諦めずに投資をして色んなチャレンジができれば、ぐっと価値が上がっていく可能性もあるんじゃないか。過疎化がただ一方的に進み続けると思い込まなくてもいいんじゃないか。そう想いで森の学校では、林業や木材加工業が斜陽産業だと言われている中でも木材加工の工場を作り、地域の木から価値を生んでいくチャレンジをしてきました。エーゼロではローカルベンチャーを提案しながら、地域で新しいビジネスを作っていく人をどんどん増やしていこうとしてきました。


西粟倉ローカルベンチャースクール(2018年)

そして結果どうだったかというと、今の拠点の中心の西粟倉村では経済は良くなったんですよね。

自然減の大きさには勝てないので、人口は残念ながらじわじわ減っているし今も過疎化は止まっていませんが課税所得合計、納税者数、課税所得平均は良くなっているんです。2008年の百年の森林構想を立ち上げたところを起点に直近の統計が出ている2021年度までで見ると、課税所得の合計は16.7%上昇、納税者数は7%増加。その上で課税所得平均は9%上がっている。人口は減っているけれど、そこで働いて税金を納める人の数は増えていて、所得の総額も平均も増えているということです。

他の周辺の過疎地域と比較すると、平均所得の平均は若干数%上がっているけれど、課税所得合計は地域全体でいくと10%前後減少しているし、納税者数もやっぱり10%前後減少している場合が多い。

例えば、隣接している兵庫県佐用町だと、課税所得平均16.7%減、納税者数17.5%減、で課税所得平均は1%増。つまり地域全体の経済は大きく縮んでいっていて、縮んでいっている中で生き残っている人たちは残存者利益で若干お給料が増えているっていうことです。

西粟倉の数字を見るとまだまだ地域に投資をする、地域でチャレンジを増やしていくことで、過疎地でも経済が成長することがあるということが証明された。僕たちは1つの民間企業として、チーム西粟倉の一員として、村役場や村の方々と一緒に地域経済の可能性と向き合うことができた。いろいろ大変なこともたくさんありましたが、みんなで諦めずに挑戦し続けたら地域経済は良くなるっていう体験ができたのが僕たちの第1創業期です。

ではそこからの第2創業期。
エーゼログループとして何をしていくかというと、色んな地域で色んなチャレンジが増えてきているので、本当に僕たちが大事にしたいテーマを絞ってやっていきたいと思っています。
なんと言うかな、第一創業期はこのままでいいのかっていう憤りや、若気の至りでやってみたとも言えます。それで、やってみたら色んな可能性があると見えてきた中で、改めてこういう未来をつくるんだと決めて動いていく、テーマを明確にしながら拠点を7地域にまで広げていくというのが第2創業期です。

―ありがとうございます。逆に第一創業期にできなかったことがあれば伺いたいです。それらは、これからの事業に接続するのではと想像するところもあり、お尋ねします。

牧:そうですね。森の学校とエーゼロの中で色んなことにチャレンジしてきましたが、これは繋がりあわない状態でたくさん点を打ってみているっていう作業だったので、その点を面にしてよりお互いに相乗効果が出せるようなことはできてないと思います。
つまり、多様性は高まったけれどもバラバラであるっていうのがここまで。それでは多様であるということをまだ強みにできていない。だから、お互いの違いを認め合い、活かしあっていけるような状況を作っていく、多様であるっていうことがより大きな価値を生んでいくというのはまだできていない。つまりここまでは多様化はしたし、いろんな可能性を発見したけれども、バラバラな感じのこれまでだったと思います。

 

社名を「株式会社エーゼログループ」にした理由

―ありがとうございます。社名を「エーゼログループ」にした背景や込めた思いなど伺わせて下さい。

牧:はい。社名については最終的に責任者として「エーゼログループ」と決めましたが、合併するぞと決めてからの約1年半、プロジェクトチームを作って模索検討していきました。

西粟倉森の学校は大きな赤字を出しながらも、なんとか黒字転換していって、事業が軌道に乗っていく経緯があり、その上でエーゼロも生まれた。何とか森の学校っていう名前を残していけないかっていうことも考えたし、1つの船としてスタートラインに立つときにまったく新しい社名が良いんじゃないかと色んな候補も出した。全社に社名の公募もかけて述べ50件くらい社内から提案も出してもらったりもしました。

色々悩んだのですが、“どういう会社で在りたいのか”という問いに対してエーゼロっていう言葉以上に上手く表すものは見つからなかったんですよね。

実は「株式会社101パーセント」という会社に一度決めたんですが、なんか違うと思って、僕がちゃぶ台をひっくり返してしまったんです。101%っていうのは、今を100%だと肯定してさらに1%を引き出し合うっていうことを大事にしよう、可能性発掘カンパニーになろうっていう意味です。
いい名前だと思ったんですが、これは第1創業期を一言で表すならそうなるっていう言葉だった。僕たちの大事な行動原理として101%精神はあって、これからもあり続けるんです。でも、多様な可能性を発掘するっていうことの先に、つまりバラバラの継ぎ接ぎの先に、もっと何かを結晶化させていくという意志を示したかった。だから「未来の里山をつくる」ということを標榜していくことにして、そのために「エーゼログループ」という名前に決めたんです。

自然資本をベースにしながら社会・経済を産んでいく未来の里山をつくっていこうとするときに、やはりそこにある土地、土を守りながら育んでいく役割のA0層から取った「エーゼロ」が、僕らがこういう会社でありたいということを一番的確に表している言葉として、それ以上のものはありませんでした。

森の学校の人たちは「森の学校」という名前に愛着もあるので、エーゼロという会社に吸収されて無くなっていくみたいな喪失感は生み出したくないと思ってけっこう悩んだのですが、目指す会社の在り方を表現するために判断しました。

エーゼロという名前が複数の拠点に広がり、その拠点で色んな事業が生まれ、それがただ多様でバラバラではなくて、お互い関わり合い、助け合いながら進んでいける1つのグループになっていこうと決め、エーゼログループっていう名前で再スタートしていくということにしました。

―ありがとうございます。社名を決める時に“在りたい姿”を選んだ点はもう少し伺ってもいいですか。例えば「未来の里山」に関連する言葉にされなかった理由、決断の背景は何かあったのでしょうか。

牧:そうですね。未来の里山を上手く表して社名にできないかっていうのも考えましたが、未来の里山は会社の外側の人も含めて、場合によっては世界中の人も巻き込みながら、みんなで作っていきたいもの、みんなのものになっていかないといけない言葉だと思っています。
なので、社名にしてしまうと「未来の里山」が僕たちのものだけになってしまい、広がりが持てない。

「未来の里山」はたくさんの人たちと一緒に作るために、僕たちの立ち位置を明らかにすることを社名では重視しました。

―ありがとうございます。

 

地域の中での資金循環を

―会社の合併を機に西粟倉村役場や村民が持つ、森の学校の株式を買い取られたと伺いました。その意図や、意味も教えてもらえると嬉しいです。

牧:まずもともとの資本構成の話ですが、森の学校という会社は、当時僕も創業メンバーだった株式会社トビムシという会社が200万円、西粟倉村役場が100万円出資し、2社が発起人となり資本金300万円でスタートした会社です。

その後、設備の投資等で何度か増資を繰り返してきているのですが、その過程で西粟倉村役場からの追加出資や、西粟倉村民の合計76名の方に株主となっていただき資金的なサポートをいただきながらやってきました。

だから、村役場及び村民の投資が入っている会社が森の学校なんですよね。
今回合併するにあたり西粟倉村役場と村民株主さんの株を、エーゼロの方で買い取らせていただきました。

それは、エーゼログループとして今後さらに資金調達をしながら成長させていくことも考えた時、株主構成をできるだけシンプルにした方が意思決定しやすいという理由もありますが、やはり村民の方や役場に投資していただいたお金はどこかできちんと増やしてお返しする必要があると思っていました。

今は幸い、森の学校もエーゼロも事業が軌道に乗っていて利益が出せる状況になってきているので、お金を増やして買い取らせていただくことができた。会計士の算定出資いただいた時の1.8倍の金額で株の評価をすることができました。その金額で村民の皆さんも、役場の皆さんも了承いただけて、買い取らせていただくことができました。

森の学校 製材所設立前の様子(2009年)

森の学校 現在の製材所(2022年)

これは地域で、地域に根付いて成長していこうとする会社に投資して、投資したお金が増えて戻ってきたっていう1つの事例を作ることにもなったと考えています。

お返ししたお金が次の投資に回るかどうかは僕らが関与できることではないのですが、返ってきたお金がまた次の誰かのチャレンジに投資されていけば、地域の中で資金が循環していく。新しいチャレンジに地域の人たちが投資をして、そのお金が増えて次の投資に回って、新しいチャレンジがまた成長していく、そういう資金循環を生んでいけるといいなということもずっと思い描いていました。

特に役場が第三セクターとかに投資しても、そのお金が返ってくることはほとんど事例がないと思うんですよね。役場が投資してお金が増えて返ってくるっていうことは、ほぼないと今まで思われていた世界だからこそ、そういう事例を作りたかった。

―ありがとうございます。なるほど。今、お金や投資の循環の話に触れていますが、これからのエーゼログループの売上もその考えが重なるのかと思いながら聞いていました。グループの利益をこんな風にしていきたいというのがあれば教えてください。 

牧:まだ、本当に色んな可能性が地域にあるので、作ってみたいなと思う事業もまだまだ色々あります。拠点を広げていくと新しいチャレンジも増えるので、そのチャレンジに投資していくお金が欲しいですよね。お金を稼ぎたいというか、お金を使いたいんですよね。

―使うために稼ぎたい(笑)。

牧:(笑)。そうですね。

お金を何かに投資していく、チャレンジしていくっていうことを継続的に行っていくためには、やっぱり利益がないといけない。利益を出す力があるっていうことを結果として残していくからこそ、新しい投資を呼び込んだり、銀行からの融資を増やしていくっていうことができます。やっぱり高収益であるということは第2創業期においてはすごく大事にしています。

とにかく色々やってみる、何とか黒字にするっていう第一創業期から、明確に利益を出すということを社内でもみんなの目標として共有しながら進んでいきたいと考えています。多様だけどバラバラではなくて、お互いを活かし合える多様性っていうことが第2創業期の1つのテーマでもあるので、今までバラバラにやってきた事業でも、未来の里山っていうテーマでは繋がり合って事業間で上手くパス回しができて、横の連携がとれたときに、どれほどの価値をしっかり出せるのかっていうのをこれから実証していくわけです。

それがどれくらい上手く横の連携ができて、より大きな価値を生み、お客様に届けて、誰かの幸せに貢献していけているかどうかっていうのは、やはり売上に出てくるものです。

エーゼログループとしては早い段階で営業利益1億円以上に持っていくことは目指していきたいと思っています。それができれば、より大きなチャレンジができる。
バラバラではない多様性、本当に意味のある多様性っていうのを会社の中に内在化させて、ちゃんとそれがビジネスになっていく。それが会社の外側にも滲み出て広がっていくようになると、新しい文化を地域で育てていくことにもなる。

里山っていうのも、そもそも色んな自然、人、生活文化の多様性をその中に内在化させているものでもあるので。そういうものをまず社内において内在化させていく、具現化していくっていうことがとっても大事だと考えています。

 

目指す「本当の多様性」とは

―今、改めて牧さんの言われていた「バラバラの多様性」が腑に落ちました。
バラバラの多様性は、例えばあの人はこうですね、私はこうです、それぞれいいですねというような状態。認知という意味ではとても大事ですが、牧さんが目指す多様性はまた一段違って、その違いをお互い活かし合えている状態ということでしょうか。

牧:そう。「多様性」には関係ないから多様でいいよっていう無関心により許容される多様性と、より積極的に関わり合いながら互いに関心をもちながら時には活かし合うっていう多様性があると考えています。僕は、地域や田舎こそ、後者の状態ができると考えています。

一方で、田舎には互いに関心を持ちすぎる息苦しさみたいなものがある。それも超えていかないといけないと思うんですよね。
田舎には、多様性に対しての寛容さがあり、お互いの存在を認め合い、無関心でいる自由もありつつ、その上で関わり合いながら活かし合っていくこともできるっていうところまでいける可能性があると思っています。そこまでできると、本当に人が集まってくるし、そこで生きていく人たちがより幸せになれる田舎、地域になれると思います。

日本の中では東京渋谷とかが一番人間の多様に寛容かもしれない。色んな人がいてもいいよねっていう空気感がある。お互いの存在に寛容だけれども、かといってお互いにそんなに関わり合わないほどほどの距離感。そういう、良くも悪くも良くも、他人と一定の距離がある。人はたくさんいるけれどもなんだか孤独感もあるっていうのが都会で、人は少ないんだけど関わり合いが強すぎて息苦しいっていうのが田舎、みたいな。

でもそれを超えて、本当に素敵な未来を作っていこうと思うと、お互いに関わり合っていくんだけれども、多様であるということをちゃんと認めている、そこに寛容さもあるし、さらにお互いの違うっていうことを活かし合いながら全体があるっていう。なんかそういう未来が作れるかどうかっていうのは、これは本当、日本社会全体の課題かもしれないとも思います。

養蜂事業

―伺っていると、エーゼログループの拠点を置くのは地域と呼ばれる場所になるんでしょうけど、いずれ都会、日本全体に影響を与える存在になるのかなと感じました。
その多様性の話の続きで、目線を社内に向けて組織として、チーム作りとしても取り組んでいくものもあったりするのでしょうか。今、会社で行っているチーム作りの取り組みとか、これからやりたいことっていうのは何かありますか。

 牧:そうですね。できるだけ心理的安全性が確保されているような会社、チームになっていきたいです。「お互いが言いたいことを言いながら、一緒にいい仕事ができるチームになる」っていうことなんですけども。
だから、今までは僕自身がこうしたいと言って事業を作っていくものも割合として多かったかもしれない・・かもしれないというか、多かったんですけど。
これからは、更にどんどんどんどん新しいチャレンジが会社の中から生まれていって育っていくような、お互い支え合っていけるような組織を目指したいです。

社内研修の様子

今取り組んでいることの1つとしては、事業部長間のバディ制度があります。エーゼログループの西粟倉支社では今8つ事業部があり8人のリーダーがいます。この8人で各事業部の事業計画をブラッシュアップしPDCAを回していくっていうことに関して、2〜3人のチーム=バディを組んでもらっています。1人1人の事業部長それぞれ個性があり、得意不得意があるから、各事業部長に対して他の事業部の部長がバディ=相談相手として定期的に関わる仕組みを作りました。色々違いがある、違いがあって得手不得手があるっていうこと自体が強みになっていくような会社作りをしていく、バディ制度もその一環として今始めているところです。

 

エーゼログループの仲間集め

―ありがとうございます。あとエーゼログループの成長を見据えて今後採用募集はあったりしますでしょうか。 

牧:はい。採用も積極的に進めていきます。
ビジネス的にもやっぱり難易度が高いことにどんどんチャレンジをしていこうと思っているので、やはりそれだけのエネルギー、熱量と、クリエイティビティを持った新しい人たちを入れていくのは本当に大事になっていくと思います。
これから7支社を作っていくにあたって、今すぐじゃなくても将来支社長になれる可能性があるような人を採用していきたいと思っています。
若くても本当に元気で挑戦意欲があるような人たちにはどんどん入ってきてほしいと思っていますね。
一緒に未来の里山を作るために、地域や会社の中にある資源、人を本当に活かしながら、活かし合いながら、収益性の高いビジネスを作ることにチャレンジしたいっていう元気な人を増やしていきたいです。採用に関しては詳細ページを確認ください。 

―ありがとうございます。新しいメンバー募集もとても楽しみです。
先ほど「未来の里山は多くの人とつくっていきたい」と言われていましたが、スタッフにならなくても関わり方があったりするのでしょうか。

牧:未来の里山を作るっていうことは、本当に色んな人たちと一緒にやっていくことです。

例えば生態学の研究だったり自然を学び研究している人たちとプロジェクトを一緒に作っていくということもあれば、僕らが生み出す商品、サービスのお客様として関わっていただくということもあると思います。

色んな形で色んな人たちに関わっていただきながら、未来の里山を作っていく、そういう仲間づくりをしていきたいなと思っていますね。

まだどんな人がどんな仲間になるのか、どういう人が仲間になってくれたらどんなことができるのかっていうのは僕たちも分からないですが、仲間が増えることでおそらく想像を超えていくような何かがあるし、そこに繋がる出会いもこれからきっとあると思います。

今、「皆さんと未来の里山を作っていくんだ」という旗を掲げて、そこに色んな人が集まってきてくださる中で、色んな化学反応が起きていくことを楽しみにしています。日本という場所を起点にしてsatoyamaを世界に発信していく。そういうところまでなんとかもっていきたいし、そのために仲間づくりはとっても大切です

ベタですがメルマガを始めようかなと思っています。

僕たちの考えていることややっていることを不定期かもしれませんが発信はしていきたいなと思っています。よければ登録してくれると嬉しいです。

―ありがとうございました。
前後編に渡り、これまでの積み上げとともに2023年4月から踏み出す先が少し垣間見えたと思います。
「未来の里山」に関わりたい、仲間になりたいと感じていただけた方は気軽にメルマガ登録や、お問合せください。

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