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通信制・定時制に通う高校生、高校に行ってない君たちへ 西粟倉村で起業っていうのは、めっちゃ面白いんじゃないか。(認定NPO法人D×P 理事長 今井 紀明氏 × エーゼロ株式会社 代表取締役 牧大介 対談)
Date : 2018.08.17
認定NPO法人D×P(ディーピー)の事務所がある大阪の雑居ビルの中の一室を訪ねると、雑居ビルということを忘れてしまう明るくあたたかい空間が広がっていました。
そこで笑顔で迎えてくれたのが理事長 今井 紀明さん。通信制・定時制高校に通う子どもたちへの支援を取り組まれています。
今回は今井さんと、「地域の起業家=ローカルベンチャー」の発掘と育成に力を入れる、岡山県西粟倉村に本社を持つエーゼロ株式会社の代表取締役 牧大介とで、高校生たちに向けて地域での起業について語っていただきました。
通信制・定時制高校に通う子どもたちの可能性
-まず認定NPO法人D×P(以下:D×P)が取り組まれている事業について教えてください。
今井)D×Pは若者に「つながる場」と「いきるシゴト」の2つを届けるNPOです。いまは通信・定時制高校にいる高校生を中心にサポートしてます。通信、定時制高校には、不登校経験があったり経済的困難を抱えていたり発達障害を持っていたりとさまざまな事情を抱えた高校生が集まっています。どんな境遇にあっても、自分の未来に希望が持てる社会をつくろうと2012年に立ち上げました。
事業は、学校内でやっている事業と学校外でやっている事業があります。
学校内では「クレッシェンド」という大人たちと高校生との対話を軸にした授業を、単位認定が降りる授業枠で実施しています。また卒業後高校生が「いきるシゴト」をつくっていけるように、学内やLINE@での進路相談に乗っています。
学外では、「チャレンジプログラム」と称して、学校を飛び出しイベントの開催や、地方への宿泊型インターンシップ、海外ステディツアーも実施しています。また、事務所の一部を解放し、高校生コワーキングスペースの運用もしています。
今は、若者支援をするコミュニティを作ろうとしている想いが強いですね。
-牧さんも取り組まれていることと、今回の対談のきっかけをお話いただいてもいいですか?
牧)岡山県の最北端にあたる、西粟倉村をフィールドの1つとして事業を展開しています。具体的には2つの会社を経営していて、1つは株式会社西粟倉・森の学校(以下:森の学校)、もう1つはエーゼロ株式会社(以下:エーゼロ)です。森の学校は間伐材を活用した商品開発と販売、木材流通をメインの事業としていて、エーゼロではうなぎ養殖をはじめとした自然資本事業、不動産建築事業、起業家発掘&人材育成事業などをメイン事業としています。
今回今井さんとの対談するきっかけは、今井さんが村に遊びに来てくれて、今井さんがサポートされている高校生たちの可能性にワクワクしてしまって、高校生が西粟倉村で生き生きとビジネスを生み出してくれる可能性がないか一緒に話したくなったからです。通信制高校に在籍しながら移住して起業っていうのもありだと思うんですよ。そういう高校生が出てきたらめちゃ面白い。
-今井さんは、西粟倉村に訪れてみて、西粟倉は高校生にとってどんな可能性を持っていると感じましたか?
今井)これまで地域にインターンシップとして送っていたけれど、定着はなかなかしなくて。
西粟倉は産業と人材が多様で、なにより若手が多い。この様子を見て、この村なら学生も生きるのではないかと思いましたね。
起業だけじゃなくて、西粟倉では既に村で起業しているローカルベンチャーが沢山あるので、そこへの就職の選択肢もあって、子どもたちの特性に合わせた仕事が存在すると思いました。
西粟倉の起業支援の在り方
-通信制・定時制の高校生たちは起業マインドが高いとも聞きました。今井さんから見ていかがですか?
今井)起業を思い描いている子たちは多いと感じます。
出会って最初は、境遇や背景が影響してアクションを起こすことが難しい子もいますが、何度か成功体験を積んでいくと一気に動き出します。
一歩が出るまでは丁寧にフォローが必要ですが、その「第一歩」が出れば後は自分で進んでいきます。polca (フレンドファンディングサービス)で資金を募ったりと、フットワークも軽くてどんどん動いていきます。
この子たちが地域での起業にどんどん取り組んでいってくれるととても面白いなと思います。
牧)西粟倉は、人口1,500人の小さな村ですがこの12年で30社のベンチャーが生まれ、売上は15億円にも登ります。多発的で多様な事業の生まれる場所です。
そして次なるローカルベンチャーを発掘しようと、ローカルベンチャースクールを3年前から実施しています。
このプログラムの特徴は村の総力戦でその人の想いと事業を磨いていきます。
そして選考を通過した時のメリットとしては、都市部からの住民票の異動を条件に地域おこし協力隊制度の活用をしながらスタートアップの支援が予算面、ソフト面共に受けられることです。
ここに、若い時から悩みながらもこれからの自分の人生を起業というかたちで叶えていこうとする高校生が飛び込んでくれたら嬉しいです。
-最後に今井さんから高校生の皆さんにメッセージをいただきました。
お二人の話を聞いていると、ビジネスを生み出すチャレンジに没頭する高校生が村で活躍することが実現しそうで、今からその時が楽しみです。