「私はここでリセット・リスタートをする」。人生をおもしろくする心がけと仕組みって?

2017年7月、東京・上野で「リセットとリスタートを考える」というイベントが開催されました。トークゲストは、岡山県・西粟倉村に拠点をもって活動するエーゼロ株式会社の代表取締役である牧大介さんと、2006年に創刊されたウェブマガジン「greenz.jp」を運営しているNPO法人グリーンズのプロデューサー・事業統括理事である小野裕之さん。お二人のお話や、参加者の“変化”をヒントに、リセットとリスタートを一緒に考えてみましょう。

 

自分が幸せになるためのプロセスとして、地域を考える

はじめに牧大介さんと小野裕之さんから、活動のなかで大切にしていることについて、それぞれ話がありました。

 

「私の原体験は、四万十川で活動する当時90歳の川猟師さんから、『今はアユもウナギもすっかりは減ってしまった。でもあなたはまだ若いから、いつか自然や川が昔のような豊かさを取り戻す姿を見れるかもしれないよ』と言われたことです」と、牧さん。シンクタンクの研究員をしながら、どうしたら経済的に自立できる山村をつくれるのか、問題意識として考えていたといいます。

 

13年前に地方にも起業家がたくさんいるというというイメージを持ったが、最近になってその風景を目の当たりにすることができたそうです。「こうなったらいいな、と思い続けて、形にするのに10年くらいかかりました。今イメージしている風景を実現できるのは、10年後なのだと思っています」

小野さんが一番大事にしているキーワードについて話してくれました。「いろいろなテーマを取り上げていますが、『ほしい未来は、つくろう。』ということを大事にしています。未来に多様性があることが大事で、それぞれの未来に優劣はありません。『greenz.jp』では一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会を目指しています」

 

小野さんは、「地域のことを考えるのが、自分が幸せになるためのプロセスとして大事だと語られるようになった」と話します。「ほしい未来」をつくるために、小野さんから「公私」ではなく「公共私」としての自分を意識したらどうか、という提案がありました。「行政でも企業でもやりづらいことを市民一人ひとりが主役となってやるんです。自分が今見渡せる範囲だけではなくて、すべてのものがつながっていることを意識しながら主体性を持つ。どこに自分が取り組むか。取り組むところに責任を持つんです」

 

何かに強い愛情をもてば、それが地域への入口になる

二人が、リセット・リスタートの実例を話してくれました。牧さんが紹介した一人が、西粟倉ローカルベンチャースクールの卒業生で、京都でいちごのお菓子専門店「MAISON DE FROUGE」を営む「株式会社ミュウ」の渡部美佳さん。いちごがとにかく大好きで、“好きが高じて”起業した方なのだそう。

 

ローカルベンチャースクールを通じて西粟倉村の支援事業者に認定され、現在は西粟倉のアトリエでオリジナルお菓子の開発をしています。その過程では、役場の人が渡部さんと地域の人たちをつなぎ、彼女の思いを知った地域の人たちが場所探しなどで協力したことも大きな支えになったようです。
地域に入るには、地域課題を解決するために入るケースと、地域で自分がやりたいことをやるケースがありますが、牧さんがすすめているのは後者のほう。

「地域のためというよりも、『こういうことが好き!』と自分がやりたいことをやるのがいいんだと思います。何かに強い愛情を持てば、それが地域への入口になり、結果として雇用を生むこともあります。つまり、今はやりたいことが明確でなくても、地域に入ってからできることを探すという道もあるんです。逆に言えば、地域のコミュニティ側が何を提供できるか問われていることにもなりますね」

小野さんは、西粟倉へ移住したデザイナー・鈴木宏平さんの10年来の友人だそうです。「宏平くんは東京で活動していて、東日本大震災がなければ仙台にある実家にUターンする予定でした。でも震災後、Twitterをきっかけに西粟倉を知って、『ずっとここにいます』というのではなく、とりあえず住んでみるという感じで移住しました。今は、田舎のおじさんたちと長い付き合いをするのがおもしろいと思っているようです」

 

人生の節目としてリセット・リスタートをするとき、重い覚悟が求められるように感じる人は多いことでしょう。しかし小野さんは笑顔で「大事なことほど、人に決めてもらうほうがいいと思うことがある」と話しました。

「最近は、自意識に向き合うのが変わったことではなくなってきています。歳をとっても自分と向き合うからこそ、気軽に自分で選択できない人も増えている。だから自意識をもちながらも、大事なことは人に決めてもらうくらいでいいのではないでしょうか。もう自分で決めるのをやめちゃえばいいのに!って(笑)。『決めてください』とまな板の鯉になったほうが、柔軟で自然体。自分にもひとにもやさしい感じがするんです」

 

会場の参加者から「地域の人とつながりたいけれど、葛藤があります。そこを超えるには、何が必要でしょうか?」という質問があり、小野さんはこう答えました。

「つながりがほしい、ほしいと言いながらも、自分に視線が向かっていると思いますよ。好循環って、都市のど真ん中だと得にくいですよね。でも、つくろうと思えばどこでもつくれます。『頭では分かってるんですけど』と思うなら、手放してみる。行き詰まりを感じたたら、逆をやってみる。『僕という存在をうまく使ってください』という姿勢です」

 

「自分の人生にワクワクし始めました!」

 

その後、参加者が三人で一組になり、感じたことを話し合うワークの時間が設けられました。牧さんと小野さんの話やワークの時間を通じて、参加者はどう感じたのでしょうか。

まさに人生のリセット・リスタート期で参加したという男性は、今後のヒントを見つけたようです。

「来月転職を控えています。東京に引っ越して2年経ったけれど、情報が多過ぎて疲れてしまうんですよね。今日は西粟倉と厚真町の話を聞いて、そういうところで住むのもよさそうだなと感じました。小野さんが、自分で決めなくてもいいとおっしゃっていたのが印象的でした。自分が好きなことで起業しちゃった人のお話も興味深かった。そういう、お金ではないところも大切にしていきたいです」(三重野隆史さん/ベンチャー企業勤務・東京都在住)

 

三重野隆史さん

また、移住に向けたステップとして、リセットやリスタートを決めた人たちも!

「地方で食に関する活動がしたいと思いながらも、個人活動では限界を感じていました。はじめは地域に根を下ろすことは考えていませんでしたが、6月に西粟倉村、7月に厚真町へ行って現地の人から地域への思いを聞いて、関わるのなら居場所をつくってちゃんと活動したいと思うようになったんです。ローカルライフラボに応募しようと思います。西粟倉へ移住して、うまく厚真町にも関わりを持てたらいいなと。今日はお話を聞いてワクワクして、自分の気持ちに嘘はつけないので素直に従おうと思いました」(丸山寛子さん/料理研究家・東京都在住)

 

丸山寛子さん

「0歳児の子育て休業中で、次にどんな仕事がしたいか考えて模索しているところです。今札幌市に住んでいて、厚真町に行ったことがあり、興味があって参加しました。自分のビジョンや理念をもって地域に入るというよりは、地域で裏方役がしたいと思っているので、どう入ったらいいか分からなかったんです。今日参加してみて、自分がやりたいことが地域で求められていることなのか、ローカルライフラボで移住前にコミュニケーションがとれると分かりました。自分だけだと視野が狭くなりがちなので、模索していける環境があるのは魅力的。参加を前向きに検討します」(冨澤美里さん/休業中・北海道在住)

 

冨澤美里さん

「鳥取県出身で、いつか鳥取に帰って、木製玩具をつくるビジネスで起業したい気持ちがあり、今日は参加しました。今日のイベントでは牧さんや地元の方から生の声が聞けて良かったです。実際の事例を聞けて自分にしっくりくるものがありましたし、『自分だったら、地元のこういう方とコラボをしたビジネスができるかもしれない』という新しいビジネスアイデアまで思いついて、ワクワクしました。ローカルライフラボか、ローカルベンチャースクールに応募したいです」(田中大一さん/広告代理店勤務・東京都在住)

 

田中大一さん

参加者が話していたローカルライフラボ、ローカルベンチャースクールとは、地域に入って実践的な活動ができるプログラムです。どちらも岡山県西粟倉村と北海道厚真町で、それぞれ募集しています。

ローカルライフラボとは、はじめの一歩を踏み出したい人におすすめのプログラムです。どんな暮らしをしたいか、どんな生き方をしたいか。最大3年間、ラボメンバーとして自分が歩みたい道や人生を懸けて取り組みたいことを探求できます。

林業、農業、観光、福祉など、テーマは自由。村が提案するテーマへの参画も可能です。同期のラボメンバーやコーディネーター、村内のメンターも、あなたのテーマ研究をフォローします。期間終了後は、起業や就職など自由です。

一方でローカルベンチャースクールとは、起業を考えている人のための「起業支援プログラム」。町内外のメンターによるアドバイスを受けながら、どのように実現させ、どう事業として成り立たせるか、実質5ヶ月かけて事業プランをブラッシュアップします。

事業プラン採択後、移住が伴う場合は、地域おこし協力隊制度を活用できます。事業化のためのスタートアップ資金として、2018年4月より最大3年間、月額20万円など(詳細は地域により異なる)が支給されます。あなたが想い描く夢、ありたい暮らしを実現に導くプログラムです。

両プログラムとも、エントリーの締切は9月30 日(土)17:00。リセットやリスタートを考えている人は、ぜひ踏み出してみてください。

【厚真町について】
空港から 35 分、札幌から 80 分と都会からのアクセスがいい厚真町。北海道有数の稲作地帯で、米や野菜などの農業を中心に、カラマツ人工林や広葉樹天然林での林業、畜産、酪農、漁業など一次産業が盛んです。夏は涼しく、冬の雪が少ないことも特徴。サーフィンで有名な町で、年間約6万人がサーフィンに訪れます。

厚真町役場の宮 久史さんは、持続可能な社会づくりに興味を持ち、厚真町に移住して7年目です。
「厚真町はデザートでの使用や健康食材として親しまれているハスカップの栽培面積が日本一なので、この資源を活かす人材が必要なのではないかと考える事もあります。一方で、地域に有るものから利用方法を考えるには限界もあります。考えるには限界もあります。むしろ、人の『やりたい!』という気持ちを大事に事業を進めることの方が、うまくいくことも有ります。やりたい人がいるから、地域の資源に価値が生まれ、輝きを持つのだと思います。まずは、自分らしく自分のペースで生きることを考えてもらい、その場所として厚真町を選んで貰えたら嬉しいことですね」

厚真町 ローカルベンチャースクール http://throughme.jp/lvs-atsuma/
厚真町 ローカルライフラボ http://throughme.jp/lll-atsuma/

【西粟倉について】
人口は1478人、その高齢者率は35.7%(平成29年3月現在)という小さな山間の村、西粟倉村。近隣の市町村と合併することなく、村であり続けてきました。村の面積の95%は山林で、そのうち85%が杉や檜の人工林です。2008年に前村長が「百年の森構想」を打ち出しました。「50年前、子孫のことを思って将来の財産になるように杉や檜が植えられたので、あと50年かけて美しい森を育て、森林で地域を守っていこう」というビジョンです。2013年から「挑戦者募集」と称して村をフィールドに活動する人を募集し、2015年からローカルベンチャースクールでも起業家を募集したことで地域住民の寛容性も高まっています。

西粟倉村役場に勤めて25年という萩原勇一さんは、こう話します。
「ここ数年で移住者の若手起業家が増え、今は賑やかな色合いがでてきました。でも、まだ村には“余白”があるので色の種類が必要だと感じていて、これからもっと彩りをそえてもらえたらと思っています。一緒に豊かな田舎をつくっていきましょう」

西粟倉 ローカルベンチャースクール http://throughme.jp/lvs-nishiawakura/
西粟倉 ローカルライフラボ http://throughme.jp/lll-nishiawakura/

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