岡山県
西粟倉
にしあわくら
“もう一つの”拠点や居場所をもち、都会と地域を行き来する。あなたの経験やスキルを地域で活かしませんか?
Date : 2022.03.09
関係人口、2拠点生活、ダブルワーク、第二の地元――。
今、移住せずに“もう一つの”拠点や居場所をもち、行き来する働き方・生き方が注目されています。
特に増えているのが、都会と地域を行き来している人たちです。彼らは、どのようなメリットを感じているのでしょうか。
岡山県の西粟倉村にも、東京から西粟倉村に通い、そんな働き方・生き方をしている人たちがいます。
共通ポイントやCRM(顧客関係管理)の専門家で『株式会社イノベーティブプラットフォーム』の代表取締役・谷内ススムさんと、コンテンツ企画・制作・リサーチを行う『ドッグパイル合同会社』の代表・丸山徳久さんです。
お二人にお話をお聞きしました。
関係人口を創出するチームメンバーとして西粟倉村に関わる
— 西粟倉村とはどのように出会ったのですか?
谷内:僕は大阪で経営コンサルタントとして働いていたとき、『エーゼロ株式会社』の牧大介さんと同僚だったんです。彼は当時から勢いがあって、話していておもしろく、仲良くしてきました。ちなみに僕は(会社の)テニス部長で、彼は部員(笑)。
谷内:彼が『エーゼロ』を立ち上げた後、西粟倉村が日本で初となる地方自治体による「地方創生ICO(新規仮想通貨公開)」を検討していたんです。それでその資金調達などを手伝うことになりました。2018年のことです。
そうして西粟倉村の“関われる”アプリ「西粟倉アプリ村民票 」を立ち上げました。そこから2年くらいして、丸ちゃん(丸山さん)が合流したのかな?
丸山:そうです、私は谷内さんから声をかけてもらって、2020年に西粟倉村と関わり始めました。もともとは約20年前、僕が働いていたマーケティングリサーチ会社の副社長が谷内さんだったんです。
はじめは週1回でしたが、今は週3回の稼働で「西粟倉アプリ村民票」の運営全般を担当しています。具体的には記事作成、会員へのメール配信、顧客管理などです。主に東京の事務所で仕事をしていますが、西粟倉村へ月に2回通うことになり、村内には空いている賃貸住宅がないので、2021年から村の隣町である兵庫県・佐用町に家を借りました。谷内さんが頭を使い、私が手と足を使うというか(笑)。
谷内:若い人も頭をどんどん使ってくださいよ(笑)。
— 2拠点生活ということですね。
丸山:そうです。「東京だけでなく、西粟倉村にも属しているんだ」という感覚が持てるのは、先が見えない時代を生きる上で、非常にいいなと思っています。
谷内:今僕たちは関係人口を創出するチームとして村に関わっています。僕は事務局の窓口役。2020年には、グロービス経営大学院という社会人のビジネススクールのOBに声をかけ、彼らをプロボノとして、村内のローカルベンチャーの方たちとおつなぎしました。
例えば、企画や広告系に強いプロジェクトリーダーが本業の男性を、植物油専門店「ablabo.(アブラボ)」さんに紹介し、新しい企画が生まれたりしたんです。
ローカルベンチャーの方たちに喜んでいただけたので、何らかの形で継続したいと思っています。2021年度は、地域の人の願いや事業に対して周囲や村外の人が関わっていく「TAKIBIプログラム 」が始動しました。これがとてもいいなと思うのは、地元の方たちと直接話せてリアリティを感じられるからです。
谷内:今年度は「TAKIBIプログラム」の活動内容を話し合う初期段階だったことと、コロナ禍もあり、プロボノの活動は大きく動かせなかったのですが、今後は「TAKIBIプログラム」のなかに関係人口が入っていくことになっています。これに、とても可能性を感じます。西粟倉村の取り組みは全国のなかでも尖っているので、社会人側でも「一緒にやってみたい」「村の動きを感じてみたい」というニーズは強いんです。
チャレンジできる土壌こそが、西粟倉村の魅力
— お二人にとって、西粟倉村の魅力とは何でしょう?
丸山:私は東京生まれで帰省するような田舎がないので、東京以外の場所にほとんど行ったことがなく、西粟倉のような小さな村を見るのは初めての経験でした。
西粟倉村はもともと林業しかないような過疎地だったと思いますが、そこに多くの人が外から入って、それまでにはなかったさまざまなことをやれる土壌を創ったことはすごいことだと思います。それが一番の魅力ではないでしょうか。
丸山:西粟倉村に通うようになってから、都市部の視点で考える観光やインバウンドによる地域活性化策が、西粟倉村のような場所にとっては乱暴な解決策になることがよくわかりました。都市部の成功事例を自分が勝手に押し付けているように感じたんです。いい意味で「自分がこれまでやってきたことを一旦忘れないといけない」と思いましたね。
谷内:僕も、父方と母方のそれぞれの田舎がいずれもなくなってしまい、今は帰る田舎がないんです。。西粟倉村は人々がおだやかで、いい場所だと感じています。もともと自然が好きなのですが、西粟倉村の原生林と温泉もとてもいいですね。他にも、鹿肉や山菜などの森の恵みや、ベーカリー『Hugo et Leo(ユゴー・エ・レオ)』のパンや『BASE101%」のソフトクリームなど、めちゃくちゃおいしいものもある(笑)。
谷内:そして「こんな風にしたら村がどうなるか」とみんなが真面目に考えていて、小さい村だからいろいろな動きが見えるなかでそれを実践できること、村のバックアップがあってチャレンジや社会実験がやりやすい環境であることも魅力です。
地域は一人ひとりの働きが与える影響が大きい
— 都会と地域の仕事、両方を知っているお二人にお聞きしたいのですが、その違いは何でしょうか?
丸山:地域で働くほうが、都市で働くよりも大変な気がします。都会では、その気になれば“自分を消せる”じゃないですか。人が多いのでコミュニティにおける個々人の匿名性が高く、何かあってもやりすごせることが多いですが、西粟倉のような地域ではどこに住んでいるか、どこで働いているか、家族は誰かなど全てさらけだして働いたり生活したりするわけですから、ある意味逃げ場がない。都市部の人間がイメージするような「田舎はのほほんとしている」とか「田舎に行けば何とかなる、逃げ込める場所」という単純な話では決してない。
西粟倉のような場所では、個々人がコミュニティに与える影響が大きいので、自分が「良く生きる」ことができれば、コミュニティにも良い影響を与えられると思います。そこも含めてチャレンジしたい人にとってはとても良い場所だと思います。
谷内:実は都会よりも、チャレンジしている人の比率が高い様に感じますね。
丸山:今まで村にはなかった仕事を誰もが創造できる余地があると思います。自分で手を挙げて「このコミュニティでこれをやりたい」と言えば、役場のサポート体制もあるし、挑戦できることがたくさんあると思います。
発見することに貪欲な人のほうが向いている
— 西粟倉村にはどんな人が向いていると思いますか?
谷内:夜道に鹿が飛び出したり、突然の豪雪など、都会にいると「想定外」のことがぽつぽつあります。いちいち「想定外」と捉えるのではなくフラットに受け入れるような、もっと言えば発見に貪欲な人のほうが向いているかも。
丸山:村のことをさまざまな面から知ろう、理解しようという気持ちがある人のほうがいいですよね。
谷内:うん。関係人口にも、興味をもっている人、仕事やプロボノとして関わる人など、いろいろあっていいと思っています。新しい関わりしろの新しい言葉を考えたほうがいいんでしょうね。「TAKIBIプログラム」は、関わってくださる人を歓迎します。興味のある人はTAKIBIプログラム運営事務局にご連絡ください。
— お二人、ありがとうございました!