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にしあわくら
ローカルベンチャースクールから見えた、「自分を生きること」の挑戦と応援の愛の形(ローカルベンチャースクール2017振り返り記事)
Date : 2018.08.30
いつか実現したい、いつまでたっても心に残っている夢がある。
起業って言うと大それたもんだと思ってちょっと引いてしまうけど、それでも挑戦してみたい。
周りに『それは無理じゃない?』と言われることもあった。でも、やっぱり諦めきれなくて。
少し不安を抱えながらも、真っ直ぐな想いをもって起業を決意する方を、ド真剣に応援する。
それが岡山県西粟倉村と北海道厚真町で開催される「ローカルベンチャースクール(以下、LVS)」です。
主催者である両地域の役場・メンター・事務局、LVSをつくる全ての人が「あなたが自分の人生を生きるお手伝いをしたい」という気持ちで、あなたが地域で挑戦してくれることを待っています。開始当時からLVSを見守るチーフメンターのお2人と事務局メンバーが、地域で挑戦をする方をどのような気持ちで応援しているのか。
今回お伝えさせていただくのは、エーゼロに入社して1年半、自身もLVSの事務局の一員である金城奈々恵です。西粟倉や厚真町のように、地元・沖縄の大宜味村で自分らしさ全開の人が増えておもしろい村になっていくことを夢見て、ローカルベンチャー支援の修業中です。LVSでは主に西粟倉の当日運営をお手伝いさせていただきました。この記事を通じて、現場の空気感や事務局が何を思いどう準備をしているのか、そして地域で挑戦する人をサポートする立場として自分はどう在りたいのか、自分の人生を生きることを一緒に学んでいる途中の26歳、金城がお届けします!
あなたは本音で生きている?LVSチーフメンターが語る、今の時代は「自分の人生を生きる」時代
LVSが実施されて、今年で西粟倉村は4年目、厚真町は3年目を迎えます。両地域ともに自治体が主体となり、エーゼロ株式会社が事務局を担っています。LVSの特色のひとつは、「あなたがその事業をすることで、あなた自身が幸せになるのかどうか」を様々な角度から問いかけるメンター陣。「起業・事業化」という面で挑戦者の想いを引き出してくださる起業家さんなどの村外メンターと、「地域の可能性」という面から挑戦者がより輝けるかどうかを共に考えてくださる自治体職員という村内メンターがいらっしゃいます。
★LVSの詳細は、LVS特設ページに記載しております。西粟倉村でのLVSはこちら、厚真町のLVSはこちらからご確認ください。
中でも、LVS開始当初からチーフメンターとして携わっていただいてるTEAM♡KATSUYAの勝屋久さん(以下、勝屋さん)、祐子さんご夫妻は、挑戦者の本音にぐっと迫っていかれます。お2人の問いかけに、殻がパカッと割れたような気持ちよさがある人もいれば、痛いところを刺された痛みを感じる人もいる。後者の表情を見るのは正直、わたしも苦しさを感じるのですが、、、でも痛みを乗り越えて本心に向き合った人の晴れやかな表情たるや。自分の本心・本質と、自分自身が繋がってこそ、幸せに生きることの始まりなのだと、挑戦者の眩しい表情を見て思うのです。
祐子:これから大切になるのは、自分の人生を生きること。肩書とか社会的な居場所と自分に乖離がないか、自分の本質と繋がって生きているかということ。資産や肩書という経済的基盤を作れば安心できた時代とは違って、今は好きなことで生きられる時代。「こんなこと仕事にならないでしょ」って、誰かに否定されるかもしれないようなことが仕事になって、しかもそれが社会の役に立つ。それだけでお金になるし応援がくる。その地域のためになって喜んでくれる人がいる。とにかく好きなものや自分の中で決めているものがあって、自分の利だけじゃない愛がある。
勝屋:そうだね。僕は色々なビジネスコンテストの審査員をやるのだけど、最近の傾向は、見えないもの、発するエネルギーについて言うようになってきた。数字や紙も見るけどそこだけじゃない。そこをさらに進化させたのがLVSだと思う。世の中で「これ」をやったら否定されちゃうかもしれないけど、「これ」がやりたいというピュアなエネルギーがある人はいいよね。
祐子:そう。それがLVSとエネルギー的に引き合うと思うんです。とにかく全員が喜ぶシステムがその人が自分を生きるだけで出来上がるのが、今の時代だと思うんです。そんな人たちがLVSから出ると、十人十色で素晴らしい!
「あなたらしさ」がより輝いてほしいから、事務局の応援はあなたに「愛」を送ることなんです。
私たちは様々な場面で「愛」をキーワードにしています。事務局の一員である私は、「愛」とは、「その人にとってその時に一番いい選択・アクションができるようにその人に合った寄り添い方をすること」だと思っています。
西粟倉村では、開始当初の2015年はエーゼロ代表の牧大介、2016年からは林春野が、厚真町では2016年から高橋江利佳が、各地域の事務局としてプログラムを支えてきました。移住したばかりの頃から、役場担当者とともに、毎年プログラムを作りこんでいる3人に、LVSと愛の変遷を伺いました。
高橋:厚真町LVS1年目の2016年は、手探りでとにかく実施することに必死でした。その中で、「プランじゃないんだな、この人に厚真町に来てほしいかどうかなんだな」ということに気づいて。LVSというプログラムは短期間だけど、自分の大切にするものは何かというのが整理されていく、わかっていくのを見るのはすごく面白いなと感じました。
2年目の2017年はすごく楽しかった。役場の方やメンターの方と一緒に、その人のいいところを引き出していったり、応援体制をつくっていったり。事務局以外に支えてくださる方々の無償の愛を感じて、、感極まってきました。
林:LVSは、地域で事業をする人を選考するプログラムに見られます。ですが実際は、その期間の中でその人らしい生きる道を見つけていくプロセスを大事にしている。西粟倉の2017年は私にとって、採択不採択の概念がぐっと変わった年でした。支援事業者として採択かどうかということはもちろんあるけれど、それは最後の最後に見るところ。その人にとって何が一番いいかということしか見ない。勝屋さんが「人類みなベンチャー」と言われるように、参加した方、皆がやりたいことを本気で考えて輝いているんです。そこがものすごくLVSらしい!今年はどういう人が来てくれるかな、とさらに楽しみです。
牧)例えば、渡部さん(西粟倉LVS2016採択者)。世の中に美味しい苺を広めるために西粟倉で栽培を始めようとしていますが、本人だけで要領よくことを進めているかというとそうではない。彼女は周りのサポートを引き出す力が強いし、サポート体制がこの村にはあるからとんとん拍子で進んでいる。渡部さんの拠点が京都だから、最初は京都の北部で考えていたそうです。でも、少し遠いけど西粟倉でと決めてくれたのは、彼女にとっても、僕らにとっても良かったんじゃないかな。
改めて、地域で自分を生きるという人を増やしていく、そういう人たちの生態系を育んでいくというのは、僕らの大事な仕事なんだろうなと思います。
LVSを振り返って、何が素敵かって挑戦者・メンター・事務局、やっぱりここに集う「人」だ!
最後に、インタビューをさせていただき、改めてLVSを振り返ってみた、私の感想です。
「自分のやりたかったことに今、思い切って挑戦してみたい」
そういう方に出会ったら、やっぱりLVSを推したい。そう思う一番の理由は「メンターや事務局が、挑戦する人の人生を本気で想って、寄り添って、その人の幸せに繋がる選択を後押ししてくれるから」です。
チーフメンターの勝屋ご夫妻。LVSでは一次選考会と最終選考会では、参加者本人がこれまで言えなかったこと、言いにくかったこと、本当は言いたかったこと、そんな本音にズバっと切り込んでくださいます。その切り込みに参加者の表情は時に曇り、時に驚くのですが、そこからようやく本音が出てきたとき、勝屋ご夫妻はじめその場にいる全員が、その人の本質が出てきたことを祝福し、受け入れてくれる。
自分が幸せに生きることは自分の本音・本質に従うだけのことなのだと、「する」「しない」どちらの選択にも良し悪しはない、どちらでもよく自分が幸せになる道を選ぶだけなのだと、気づく。自分が本当に求めているものに気づき、受け入れた人は、晴れやかに次のステップに進んでいく。私から見るととても魔法のようなのです。こんなにも人はこの短期間で眩しく輝けるのか。一生に一度、こんなに本音をさらけ出せて受け止めてもらえて、自分が自分で許せるようになっていく人に出会えるだろうか。そんなふうに感じます。
そして、西粟倉村・厚真町、それぞれの地域に根差した事務局。エントリーを受け付ける前から、エントリー希望者やLVSに出ていただけるといいなと思う方へ、1人ずつプログラムを説明し、地域の中をご案内しています。エントリーから最終選考会まで参加者の方にとって「LVS参加して本当によかった」と思える時間になるよう、「この事業はこの方にメンターになってもらえるといいな」とか「村のこの人に会って、こんな話ができたらもっと深まるかもしれない」と、参加者1人ひとりの顔を浮かべながら、その人、その事業にあった時間の使い方を設計します。
そして、最終選考会では林の言った通り、採択・不採択は、参加者が幸せになる為に踏み出す次の一歩がどうあればいいかに真剣に向き合って判断されます。
こうして、LVSの関係者は、LVSの期間もそうですし、その後も、村や町に関わりたいと思ってくれる方とは、移住・起業一択ではなくて、何をどうするとお互いに良い関わり方になっていくのかを考えます。村や町に住まなくても、いきいきして生きていかれることを本当に嬉しく思って応援しています。
LVSを視野に入れている方とお会いする度、「この人が本当に望むことはなんだろう。どうすればそれが叶うのだろう」と、考えている事務局の牧、林、高橋の先輩方。挑戦したい人、やりたいことがある人、幸せに生きることの応援に本気なのです。ある意味変態です。(笑)そんな事務局がいる地域だからこそ、安心して挑戦しに来ていただきたいと思うのです。
そういうイズムをちゃんと引き継ぎながら、もっと人を本気で応援する人に私もなっていきたい。
平成の夏も、今年が最後。
秋から始まるLVSの選考会ですが、挑戦者のたぎる想いと、伴走者の情熱ある愛情に、その場の全員が泣けや笑えやの感情爆発のアツい時間が待っている。「自分を生きる」ことへの挑戦、本当に今年も楽しみです!