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西粟倉

にしあわくら

西粟倉で起業しませんか:森林への愛とビジネスマインド、両手に抱えて林業再生!

「3日くらい森林に入っていないとうずうずしてくる」という生粋の森林好き、林野庁から西粟倉村役場へと出向してきている長井美緒さん。そんな長井さんが提案する事業は「百年の森林管理センター(仮)」です。人が手をかけて森林を管理すること、森とともに生きることができる林業を再生させること。その想いは、今現在、長井さんが取り組んでいる仕事にも共通します。でも、まだまだできることはあるはず。自然と人とをつなぎ、未来に遺していくための拠点を、情熱と冷静なマネージメント目線で作り上げていく人材を求めています。西粟倉は出発点。実績を積んで日本全体の林業を活性化する、大きな夢を追いませんか。

 

「最後の枝打ち職人」に憧れた小学生

– 鳥取大学農学部農林総合科学科(森林生産学コース)、北海道大学大学院農学研究科を卒業して林野庁の職員に。そして今は林野庁から出向して、西粟倉村の百年の森林構想担当。経歴をうかがうだけで、森と林業一筋です。
 

長井:最初に森林に興味を持ったのは、小学2、3年生のときに何気なく見た、テレビ番組がきっかけ。最後の枝打ち職人の特集をたまたま見たんです。木から木へ飛び移りながら枝を下ろす、すごく格好いいおじいさんでした。「こんなにかっこいいのに、この人が最後の職人なんて、いけんわ。大変、大変」と思ったんです。

– 林業の仕事を初めて目にして、絶やしてはいけないと感じた。その頃から、「将来なりたい仕事は?」とか聞かれたら、林業家と答えていたんですか?

長井:子どもの頃は、かわいらしく、「お花屋さん」とか答えていたはず(笑)。だけど、高校のときブラスバンド部で、将来の夢を書く機会に「自分で育てた木を使って楽器を作って、そこで森に小屋を建てて、森の音楽会を開く」と書きました。実現するためには、50年くらいかかる。18歳だから早くしないとまずいと思ったのを覚えています。

– やっぱり、森、木っていうのはずっと長井さんの中のキーワードとしてあったんですね。

長井:そうかもしれません。さらに大学で現場の実習をするうちに、林業をどんどん好きになったんです。大学時代には、いろいろな地域の人と関わる機会があって、各地でたくさんのいいお父さん、お母さんと出会いました。そういう林業家の人たちが、一生懸命働いて、「今日も頑張ったな」とおいしいビールを飲んで、また明日を迎える、そんな生活をする後押しをしたいという想いが、今もずっと続く私の仕事のモチベーションです。

– 林業に関わる仕事、ということで林野庁を志望したんですか。

長井:林野庁に入ったのは、そこしか受からなかったから(笑)。森林について勉強しても林業とは関係ない仕事に就く人がほとんどですが、自分は林業に携わる仕事をしようとは決めていました。だから、自分が知りうる限りの林業関係の職に応募しました。その中のひとつが林野庁だったんです。森林に関わることを趣味にする選択肢もありましたが、24時間のうち8時間の仕事をする時間って結構長い。その時間は、林業に当てたいと思っていました。

– 西粟倉村に出向するまでは、どんな仕事をしていたんですか。
 

長井:1年目は秋田の森林管理署の係員、2年目から3年間は、国有林(国が所有する森林)を管理する森林官になりました。山守、森の駐在さんといった仕事ですね。場所が、風間浦村という本州最北端の村。下北森林管理署易国間(いこくま)森林事務所の勤務でした。ここで多くのことを学びました。現場に作業員を抱えながら、一緒に間伐をしたり、地元の人たちの調整をしたり。私は若かったですが、村としては貴重な公務員なので、村の行事に、来賓として行くんです。入学式、卒業式、成人式、運動会…全部出るんです。最初は戸惑いましたが、ここですごくいろんな人たちとも知り合いになれたし、たぶん田舎体験の原点でした。

– 山にとどまらず、地域丸ごとを見て、地域の人々と付き合う生活を送っていた。

長井:風間浦村の人たちは、私のような若い者が数年単位で出入りすることを受け入れていました。少しでも村での生活を体験して、現場の林業の経験を民政に生かしてほしいと本気で伝えてくれました。さまざまな体験を一生懸命させてくれる人たちにお世話になって、この人たちのためにできることは何だろうと考えるようになっていきました。

– 人の入れ替わりを前提にして、国から来た若者を育てる気概を持っているって、かっこいいです。

長井:その後は2年くらい毎に転勤して、だんだん事務仕事が多くなっていきました。私としては現場仕事から離れるのが苦痛で、だんだん仕事を辞めることも考え始めました。そんなとき、西粟倉村のことを知ったんです。
 

林業の川上から川下までに関わる、百年の森林事業

– 西粟倉に赴任したのはいつ頃ですか。

長井:社会人10年目、平成26年のことです。鳥取に遊びに行ったときに、「林業の面白いことやっているところない?」と尋ねたら、西粟倉に林野庁からの出向者がいて、その人が今年で帰るという情報を得たんです。そしたらあれよあれよという間に、西粟倉村の課長や前の出向者と話をする機会を作ってもらえて。「西粟倉村に行くしかない」と思ってしまいました。人事上層部に直談判し、「行かしてくれ」と言って、怒られながらなんとか来たわけです。

– かなりそこは頑張って行動したんですね。

長井:今、やるしかないなと思ったんです。西粟倉村では、木を植え、育て、間伐をして、その後の木を売るところもやる。木や森の「全部に関わる」ということをすごくやってみたかったんです。それまでは国有林を管理するので、計画を立てやすかった。でも、民有林だとたくさんの所有者がいて、みんなの思いを汲みながら林業をしなくてはならない。そこに魅力を感じました。
 

– 長井さんが影響を受けた林業家のお父さん、お母さんと協働する仕事ですものね。長井さんがずっとやりたいと思っていたことを実践できるチャンスだった。

長井:「林業家の暮らし」の中には、狩猟をしたり、山菜を採ったり、重機を自分で直せたりも含まれると思うんです。自分でできる範囲が広くて、何かあっても自分で食べていける感じがすごく好き。やっぱり、そういう暮らしを応援したいんです。

– 西粟倉のように、山の管理から木材の流通にまで目を配っている地域って他にありますか。

長井:少なくとも自治体が主体となり、旗振り役になっているところは知らないです。森林組合さんが頑張っているところはちらほら聞きますけれども。

 

林業の業界に、経営感覚を持ち込んでいきたい

– 長井さんが提案した「新・林業」についてお聞きします。役場が基礎を築いてきた林業の川上から川下までを、新たに担う組織をつくるという理解でいいですか。
 

長井:そうですね。今の体制が始まって7年経ち、ベストを尽くしながらやってきているんですけども、計画通りでない部分もあるんです。西粟倉・森の学校や、木工房ようび、木の里工房木薫などのローカルベンチャーの成長で、木材の需要が増しているというのもあります。役場のマンパワーではどうしても自転車操業的になってしまい、限界を感じています。だから、森を継続的に営んでいく、林業を再生させる専門の組織を作る必要がある。『モダンタイムス』じゃないですけど、細分化された現代の林業のかたちとは違う「西粟倉の林業」をかたちにしていきたいんです。

– 役場と森の学校が片棒ずつを担いでいた事業に、専従する人がいれば、次のステップを目指せる。

長井:はい。これまで林業に関わっていない人でも全然いいんですよ。もちろん、森林や一次産業に対しての愛を持った人であってほしいけれど、林業の知識は、ここで働く中で次第に身に付けていけばいいと思います。今、一番足りていないのは、「経営ができる人」。他業種で経営感覚を身につけた人こそ望んでいます。どうしても林業は、補助金漬けになりがちですが、きちんと生業として成り立たせなくてはいけないと思います。経営感覚が希薄になっている業界に、きちんと経営を持ち込んで欲しいのです。

– 西粟倉が、多面的な林業の価値を高める、新しい林業発祥の村になっていくといいですよね。

長井: 人と里と山も近いし、すごくいい規模感で挑戦できると思います。役場も、森林組合さんとも近い関係性だから、事業もしやすいはず。「百年の森林管理センター(仮)」ができたら、林業に関わっているすべての人と一緒にやっていけるようになるのが目標の到達点です。そのためには、小さな木一本から、丹念に育て上げた立派な木まで、さまざまな状態の木を扱えるようになる仕組みと実践が必要です。どんな状況の山持ちさんでも「百森*いいね」「百森があったから、森林の村になったね」と言い合えるようになったら嬉しい。村の子どもたちもその気持ちが浸透していくと嬉しいです。
 

– 西粟倉では、子どもたちが森林に入って下草刈り体験をするなど、木育*にも取り組んでいます。子どもたちにとっては森を身近に感じる体験だし、林業家にとっては、地道な作業の価値を改めて見直す機会になるかもしれません。

長井:ひとつの山の木なんて、2、3日で全部切れちゃうけど、その山を育てるには、300年〜500年かかっているんです。地域の宝だと思うから、ちゃんと守っていきたいです。木は「資源」としても有望で、枯渇させることなく、半永久的に使えるんですよね。適正な林業をしていれば、ぐるぐる巡る。すごいことだなぁと、今、改めて感じているんです。

*百森:百年の森林構想の略。約50年生までに育った森林の管理を村が一括管理を行い、100年の森林に囲まれた上質な田舎を実現していこうという構想。

*木育…子どものころから森林や木材に親しむことで、森林を守り、大切にする活動。

西粟倉ローカルベンチャースクール2016

http://guruguru.jp/nishihour/lvs

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