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「町のために」じゃなく、「自分たちが楽しもう」からプロジェクトチームが始まった

「厚真町って、役場にエネルギーがあるよね」。そんな役場の魅力に惹かれて、ローカルベンチャースクールを厚真町でも始めることになったエーゼロ。前回は、役場職員有志が仕掛けた、こども園を紹介しました。有志の若手職員が集まり、自分たちの問題意識に合わせてプロジェクトを自主的に興していく「プロジェクトチーム」という動きは、7年前にも立ち上がっていました。その「あたらしいなみ」のメンバーのみなさんが、改めて当時を振り返ります。
 

年間6万人が集まる、浜厚真をみんなに知ってもらおう

– 厚真町役場で最初に立ち上げたプロジェクトチームが、「あたらしいなみ」だと聞いています。最初はどういうきっかけで始められたのかを、教えていただけますか。

藤岡:僕は、2001年に役場に入って、今年で16年目です。このプロジェクトは、発起人の田中さんから「一緒にやろうよ」と声をかけられて。ちょうど自分自身もサーフィンを始めて2~3年経った頃だったのもあって、浜に人がたくさん集まっているのは知っていたんです。サーフィンで厚真町をアピールしていくのは、面白そうだなあと思いました。
 

 
田中:実は、僕自身はサーフィンをやっているわけじゃないんです。厚真にあまり観光資源がない中で、浜厚真には年間6万人のサーファーが訪れている。だから、この海岸に注目して、盛り上げていこうって考えて。当時30代前半だったメンバーに、声をかけてみたんです。

– 具体的には、どういった風に活動を進めていったんですか?

田中:週1くらいで打合せなどの活動をしていきましたが、若手職員で集まって何かやったこともなくて、手探りでしたよ。自分たちでブレストやったり、海岸に行ってサーファーに何で困ってるか、ニーズをヒアリングしたりすることから始めていきました。「綺麗なトイレやシャワーがない」「売店がない」みたいな声があったから、そういうのを改善していこうと。
 

 
「プロジェクトのおかげで、トイレが新しくなった」「波の様子が見れるライブカメラがついたね」みたいにハード面のことを言ってくださる方も多いけど、基本的には、浜厚真の知名度をアップしよう、より多くの人に知ってもらおうと始めたプロジェクトなんです。ソフト面でも、ATSUMA TOWN GUIDEというパンフレットを作ったり、アツマルシェというイベントを企画したりもしたんですよ。

藤岡:プロジェクトといっても、自分たちで勝手に進めていたわけではなくて、報告書をまとめて、上司に報告もしていました。今でもミーティングの議事録は全部ファイリングしてあるんです。
 

どうせなら「役場っぽくないものを」

– 手探りで自分たちで進めていく中で、工夫された部分はありますか?

田中:いかにもな観光パンフにしないように、「役場っぽくないものをつくりたいな」みたいな気持ちがありました。パンフレットができたときは、嬉しかったですね。これを見てくれると、僕らの考え方や活動のニュアンスが伝わるかなあと思うんです。見た目も女性の目を引くようにかわいらしくして、札幌のおしゃれなお店とかに自分たちで「置いてもらえませんか」って頼んだりしました。
 

藤岡:予算をかけずに何ができるかは、工夫しましたね。立て直す前のトイレは、ものすごく古かったんですが、自分たちで綺麗にペンキを塗ったりもしました。パンフレットの印刷なんかは、さすがに予算をつけてもらっていましたけど。

– 結果としては、どれくらい知名度があがったんでしょうか。当初の狙い通りになりましたか?

田中:具体的なデータはないんですが、町外の人にお会いした時に、「ああ、サーフィンの厚真町ね」とか、そういう反応が多くなりました。サーフィン環境を求めて移住されてきた方も、増えていますね。ちょうどサーフショップtacooの村上さんが移住してきてくれて、プロジェクトに賛同してくれて、いろいろ協力してくれたことも大きかったです。天候が暴風雨になっちゃったりで大変でしたけど、浜で一緒にマルシェを開催したりして。
 

プロジェクトチームの動き自体も、道内のテレビ局やローカルのラジオ番組など、結構メディアに取り上げられたんですよ。若手の役場職員が、プロジェクトを作ってまちおこしするっていうのがメディア的に面白かったんでしょうね。

藤岡:ただ、「当初の目論み通りの結果が出た」というより、メディアに取り上げられたりしながら、自分たちが楽しんでいたら、タイミング良く移住者が増えたり知名度アップに繋がっていったというか。こんな風に言っていいのかわからないけど、サークル活動ともちょっと近かったなあって思うんです。みんなで集まっていても、実は2割くらいしか真面目な話はしていない時もありました(笑)。

形になる・ならないは別にして、自分がやってみたい、やった方が良いと思うことをやってみてもいいのかなって思うんです。「町のために。」とか難しいことを言われても、みんな動かないと思っていて。それよりは、まず自分たちで取り組むことが楽しいとか、勉強になるよねってことでいいんじゃないかな。
 

「自分たちが楽しい」仕事が役場にあってもいい

– 最初から成果を予測しすぎるんじゃなくて、自分たちが楽しんだ先に、結果として何かいいことが起こる…ぐらいが、いいのかもしれないですよね。そういうのは、プロジェクトをやってみて、気づかれたことなんでしょうか。

藤岡:自分の中の仕事に対する考え方は、結構変わったかな。役場職員みんながということではなくて、自分だけかもしれないけど、「楽しんじゃいけない」ってなんとなく感じていたんですよ。それまで与えられた仕事を黙々とこなすみたいな感じで、日々やらなきゃいけない仕事で忙しいし、でも同僚もそうだろうし…。あまり「仕事が楽しい」という感じではなかったかな。
 

でもこの「あたらしいなみ」の活動は、すごい楽しかったんですよ。本州の事例を見たり、結構いろんなところに視察に行かせてもらって。「自分たちでもこういうことをやってみたい」とか考えるようになったのって、このプロジェクトがきっかけだったかなと思います。主体的・能動的に自分たちで何かを形にしていくプロセスは、その後の仕事にも少しは役立っているかな。

田中:僕は、最初はノリで始めたけれど、やっているうちに「交流人口を増やそうぜ」「少しは経済効果も生み出せたらいいよね」とか考えるようになりました。そういう意味では、まずはあんまり考えすぎずにやってみるのって、大事なのかなと思います。

たまに後輩から、「プロジェクトって、どんなことやっていたんですか?」って聞かれることもあります。自分たちがやっていたプロジェクトは終わったけど、後輩には自分たちがやりたい何か新しいことがあれば、一度プロジェクトを作ってやってみてほしいなって気持ちはあります。
 

– 日 常の中でやらなければいけない通常業務はどうしてもあるだろうけれど、Googleの20%ルールみたいに、1割でも2割でも、自分の好きな分野のプロジェクトに時間を投入する。役場職員も、そういう働き方ができるのかもしれませんね。

田中:パンフレットつくるにも、あちこちにお願いして、取材して、いろいろな人に会う。町の人たちって実はこういうこと考えているんだなあとか、気さくに話している中で初めて聞けたことがありました。こういう活動してなかったら、現場の声を知らないままだったと思うんです。

町の中に出ていくことで、やっぱり役場の中にいるだけでは気づけなかったことに気づける。そうしてプロジェクトをやることで、自分ならではの町との関わり方やアイデンティティが、はっきりしていくと思うんですよね。それって、いいことだと思うんです。

藤岡:「あたらしいなみ」は5年活動して終わったけれど、移住してきたサーフィン好きな方たちが、あつまビーチクラブなどの新しい活動を立ち上げて、今も続いている。そういうのは、嬉しいなって思います。自分たちがずっと盛り上げ続けるというよりも、最初に種火を起こして、住民の方たちに繋げていき、盛り上がる下地を作られるっていうのが、理想かなって。

– 役場職員の方って、「町のために」って真面目に考えてくださっている人が、きっと多いんだと思います。でも、「自分が楽しい」ってことが起点になる仕事も、できればいいですよね。その先に、楽しい地域があるような気がします。

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