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【北海道厚真町、協力隊募集中!】「このままじゃだめだ。自分で生きる力が欲しい」。そう願った小林さんが厚真町ローカルベンチャースクールでもらった自信 ~仮説をひとつひとつ実績に変えていけばいい。一歩踏み出せばいい。~

大手機械メーカーでエンジニアとして勤務していた小林さんは「今のままじゃだめだ」そんな想いを抱えていました。そして「会社を辞めて、自立して生きていける道を歩こう」と決めました。そんなタイミングで出会ったのが、北海道厚真町の起業型地域おこし協力隊の選考プログラム「ローカルベンチャースクール(以下、LVS)」。このプログラムを通じて小林さんは「自信をもらった」と言います。
家族もいる、不安もある、でもここじゃない。そう思い退職だけを決めていた小林さんが「自信を持って一歩を踏み出せばいい」と思えた厚真町LVSについて、メンターとして関わった花屋(株式会社エーゼロ厚真 取締役)がインタビューしました。

 

厚真町は今年もローカルベンチャースクール2022を開催します。エントリーをご希望の方はこちらをクリックしてください。

どこにいくかはわからないけど、ここではない。

それだけは確かだった。

――まずは近況を教えてください。

小林:令和4年に岡山県真庭市に家族で移住し、森林組合で林業作業員として働いています。0.8アールほどですが畑も借りて野菜を育てたりもしています。

 

――真庭市に落ち着いたんですね。ぜひ厚真町に来てほしかったなあ(笑)。

小林:はい。真庭市は祖父方のお墓があることもあり縁のある地でした。
さらに、「真庭なりわい塾」(https://maniwa-nariwai.org/)という、昔から紡いできた暮らしを学びながら新しいライフスタイルを模索する塾に通ったことで、真庭の人とのつながりができ、「“人”が観光資源」とうたっている真庭の魅力を感じました。
また、山と海の繋がりを学べる「里山里海交流館 しんぴお」(https://www.shinpio.com)という、令和4年6月オープンの体験施設に、森に関わる人間として、プログラム作成の手伝いをしてくれないか?とお誘いいただいた事も真庭移住のきっかけになりました。

 

――そういうご縁があったのですね。さて、本題に入りたいのですが、まずはLVSにエントリーする前のことを聞かせてください。

 

LVS選考合宿初日。「田舎移住したい」とプレゼンする小林さん

 

小林:大手の機械メーカーでエンジニアとして働いていましたが、仕事が忙しく心身がすり減るのを感じていました。これから先の未来を考えたときに「このままじゃだめだ」と感じていました。それで会社を辞めることだけを決めて、次の道を模索していました。田舎に移住して、食とエネルギーの自給率を高めた生活をしたいと思い、森の資源を活用できる「林業」がいいかなと考え、具体的に調べる中で西粟倉村(※1)の林業やローカルベンチャーの取り組みを知りました。北海道でも同様の取り組みがあるとのことでひとまず問い合わせをしてみました。

※1 岡山県西粟倉村には、厚真町LVSを企画運営する(株)エーゼロ厚真の親会社であるエーゼロ(株)があり、西粟倉LVSを企画運営している。

 

――まずはオンラインでお話しましたね。

小林:私自身の状況を聞いていただき、LVSのこと、厚真町のことを教えてもらいました。サーフィンができる、馬に関わる人がいる、教育環境も魅力的など興味を持てる内容でした。特に林業に関しては先駆者がいるので、良い影響を受けられるなと思いました。

 

――それで早速、その先駆者のひとりである坂野君(LVS2020を通過し2021年4月より厚真町で活動を開始している)を紹介しました。結構厳しいこと言われましたよね(笑)。

小林:はい。「-20℃でチェーンソー持てますか?」と。30歳過ぎてゼロからやれるほど林業は甘くない。そういうことをはっきり教えてくれました。自分とは林業に関わるバックボーンの厚みが全然違うと思いました。「協力隊」というといろいろサポートして助けてもらえるイメージがあったのですが、厚真町の協力隊は「自分が自立してこそサポートを受けられる形」だなと感じました。

エンジニア時代の小林さん(右)。職場の同僚と共に。

 

事業プランは不完全。それでも飛びこんでみたLVS一次選考合宿

 

――林業の厳しさを伝えられてあきらめようとは思いませんでしたか?

小林:自分が素人なのは最初からわかっていますし、人生100年で考えたらこれから経験をしていけばいいと思っていました。それに合格して採用されるかどうかはともかくとして、自分のプランについてメンタリングをしてもらえること、地域の人と直接話せることできっと得るものがあると思いました。

 

――エントリーには事業プランが必要です。提出したプランがここにあります。あらためて見てみてどうですか?

小林:大変失礼なことをしたなと(笑)。時間もなく自分の中であいまいなことも多い中で無理やり作った感じでした。あれだけの人たちに話を聞いてもらうためのプランとしては不十分すぎて、特にお金のことなど全く準備できていませんでした。

 

――そうでしたね。でも、私は「会社をすでに辞めている」、その行動を起こせる「覚悟」を持っている人だから、きっと小林さんにとってLVSはいい機会になると思っていました。さて、LVSではいくつか講義(※2)がありましたが記憶に残っていることがありますか?

小林:「事業を考える」の講義で、仮説をたててひとつひとつ実績にしていくことが大事との話は印象に残っています。小さくてもいいひとつひとつ積み上げていく「just do it! やってみよう精神」が磨かれた気がします。

「プレゼンテーションに必要なこと」の講義では、プレゼンテーションの目的とは「仲間を集めること」であり、そのためにはしっかり自分のことを開示して、そこに「共感してくれる人を増やす」視点は学びでした。これまでエンジニアとしてプレゼンするときは専門的なことを話すなどして「相手に何も言わせない」ようにしていたので、「自分の気持ちを話す」プレゼンテーションは多分、人生で初めてでした。

※2 LVSの一次選考合宿ではいくつかの講義を用意しています。地域で活躍する人になるため心構えを伝える「地域のプレイヤーになるということ」。プレゼンテーションで伝えるべきことは何か?をまとめた「プレゼンテーションに必要なこと」。この2つが定番の講義ですが、昨年は「事業とは何か」に対して共通理解を深めるための「事業を考える」の講義も新たに実施しました。LVSは「参加者ありき」ですので、エントリー者のプランや状況を把握した上で、講義内容を毎年更新・カスタマイズしています。

 

――ありがとうございます。頑張って講義の資料を作った甲斐があります。では、メンタリング(※3)についてはどうですか?

小林:メンターの皆さんは様々な経験をもった方々で、普段自分の周りにいる人とは違う観点をもらうことができました。なんとか私のプランを形にしようとひとりひとりが真剣に向き合ってくれました。話の中で、個人的には「エンジニアはもういい」と思っていましたが、私のエンジニアとして経験を引き出そうとしてくれていたなと思います。でも、自分としてはこれまでの経験がそんな簡単に林業に使えるとは思っていなくて、そこには少し違和感がありました。

メンターとメンタリング中。真剣にメモを取る小林さん

 

――それはあるかもしれないですね。LVSは「起業家」を選抜する場です。カウンセリングのようにただただ気持ちを聞くことはないです。起業してしっかり進めていくには「やろうとする事業の強み」や「その人ならではのスキルや経験」も必要です。すべてが未経験だけどやりたいです、だけでは採択できません。「事業としての実現可能性」を高めるためのコミュニケーションになります。

小林:はい。そこは理解しています。そうやって聞いていただけたことで「自分はこれまでの経験をいったんおいてボンっと飛びたいんだ」「片足残すようなことはしたくないんだ」、そんな気持ちが認識できました。

※3 LVSではメンターと参加者による対話を「メンタリング」と呼んでいます。メンターが何かアドバイスする形ではなく、参加者のプランに対して質問をして事業内容を参加者自身がより深く考えきれるように促します。メンターは評価、批評する者ではなく共に考える存在として参加者に寄り添います。事業のことだけでなく、本当はこう思っているのではないか?といった参加者の「内なる声」を拾うようなやりとりも行われます。合宿期間中は何度もメンタリングを重ねることで、メンターと参加者の信頼が築かれ、安心してなんでもオープンに話せる場の空気が醸成されていきます。全員で作りあげるこの「場の雰囲気」こそがLVSの特徴です。

 

半泣きになった。心に響いたメンターの言葉、そして最終プレゼンテーション。

 

――そして、合宿最後の仕上げに最終プレゼンテーションがありました。小林さんの発表はとても印象的でした。あの形にいたる経緯を教えてください。

小林:メンタリングの最後のセッションが勝屋さん(2016年厚真町LVS初開催からチーフメンターを務めている)でした。その前まで、他のメンターの皆さんも翌日の最終プレゼンテーションまでになんとか私のプランを形にしようと一緒に考えてくれていましたし、今の自分のベストを尽くそうと決めて、しっかり取り組めていました。

LVSのスケジュールとメンタリングの順番を書き出した表。小林さんにとって「偶然にしては本当にいい順番だった」とのこと。

でも、最後の最後、勝屋さんのところで「あのさぁ、そもそもなんだけど、小林さんは本当に起業なの?」とポンと聞かれました。正直な気持ちとしては、こんな経験不足の自分が現時点で起業なんかできる訳がないと思っていました。それでもなんとか奮い立たせてどうにかしようとしていたのに、その根幹をガーンとハンマーで叩かれたような感じ、核心をつかれた気がしました。

それで「なんとか明日の発表を事業プランとして形にすることが関わってくれた皆さんへの恩返しというか誠意だと思う」と言ったら、「それは違うよ。誠意じゃない。明日の発表でちゃんと自分の気持ちを素直に伝えることが誠意なんだよ」とも言われました。

 

――さんざんどう起業するかをみんなで考えたのにね(笑)。だからこそ、最後の最後で大前提への問いが響いたんでしょうね。そこからあの最終発表資料ができあがった。

小林:そうですね。最後は半泣きになりました。LVS一次選考合宿の最終日に参加者は3日間の集大成として一次選考審査用のプレゼンテーションを作成し発表します。そのときの小林さんの発表は参加した人たちの心を打ちました。発表資料には小林さんのこれまでの経緯やLVSで感じたことが飾らない言葉でつづられていました。小林さんの許可をいただいて、その内容をここに記します。

 

「小林建太 タイトル『ゆく年くる年』」

小林のゆく年

8年間、機械設計エンジニアとして走り続けてきました。共働きしながら今の生活を続けることが幸せなのか?深夜残業、家族との時間、終身雇用制度の終焉、人生百年時代。この一年間、違う人生を歩みたいなと考えていました。今まで仕事以外の余裕がなくて読めなかった本を読むようになりました。

人生観が変わる二冊の本に出合いました。『里山資本主義』。都会が最先端じゃなくて、田舎の方がある意味最先端。森林資源の有効活用、持続可能な社会の実現。『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』。100才まで生きるなら、まだ人生の1/3(32才)。80才を越えてもやり続けたい仕事をしたい。今の仕事はどんなに頑張っても60才で終わり。終わりたい。会社に依存した生活は破綻する未来が来るかもしれない。

自分の力で生きられる力を身につけるためには、田舎にいって生業を持つのがいいんじゃないか?まだギリギリ再出発できる。探検者(エクスプローラー)になってみよう。

2021年9月。会社を飛び出しました。無職!!

何する?どこに行く?それは無限の可能性。起業研修型地域おこし協力隊、田舎の企業、農家、半林半X、自伐型林業家などなど。森に関わりたいとの思いで探していると、厚真町LVSに出会いました。そして、起業家という選択肢に出会いました。起業家@厚真町。一度、この選択肢に挑戦してみたい!新しい風が吹いている林業をやっている厚真町で何か自分ができることがないか?

 

厚真町LVSに挑戦してみて

・やはり付け焼刃では通用しませんでした

・こんな迷いの多いフワフワしている自分にもメンターの皆さまは真剣に一緒に考えていただいて本当にありがとうございます

・起業するってどういうことか?その入り口だけですが、経験できました。1つ、仮説から実績にひっくり返すことができました

・最後のメンターブースの勝屋さんからの質問

Q:本当に起業したいの?

A:今の自分は起業じゃないと思います

今の自分には圧倒的に経験が足りない。まずは違う形で田舎移住して、そこで経験を積むところから

 

厚真町LVSで学んだこと

仮説を実績にひっくりかえすことを積み上げていくと自分のステージが上がっていく→JUST DO IT!で実績を積み重ねる

 

小林のくる年

どこで何をしているか、まだわからないですが、今足りていない実績を一つずつ積み上げていきます。ありがとうございました」

 

この発表の後、小林さんはLVSの「選考辞退」を選択しました。

 

最高に堪能し自信をもらえたLVS。さらけだし、
本音を語ればいい。

――小林さんにとってLVSはどんな場でしたか?

小林:自信をもらえました。どうすればいいかわからない。不安。先が見えない感じでしたけど、この一歩を踏み出そう。自信を持って進もうと思えました。「君は会社を飛び出した時点で生きる力があるんだよ」、「生きる力が欲しい欲しいというけれど、もうあるじゃん」と言ってもらって。自信を持っていいんだな。自信をもってから行動すると景色が変わるなと、その後のことでも感じています。この感想は僕がたまたま良いめぐりあわせで最高に堪能したからかもしれないですけど。

経験豊富な皆さんに自分のことでメンタリングをひたすらしてもらえることなんてないですし、それを交通費や宿泊費の実費だけで味わえるなんて本当にラッキーだと思います。

 

――ありがとうございます。運営する側としてもうれしいです。そんな場をしっかり使い切るには参加者はどんなことを持っていればいいと思いますか?

小林:僕も危うかったんですけど「何かもらえると思って来たら、何ももらえないだろうな」と思います。「地域おこし協力隊募集」というと自治体側から寄ってくる、サポートしてくれる感じがあります。でも来てみて体験してみて、「自分ありき」でないと何も活かせないで終わるだろうなと思いました。ちゃんと自分の思いを持って「さらけだす」、格好をつけずにバンバン本音を語るといいんじゃないかなと思います。

 

――今日はどうもありがとうございました。これからも小林さんのことを応援しています。

小林:ありがとうございます。

小林さんが現在関わっている植林現場。小林さんは念願の「林業」の世界を歩み始めています。JUST DO IT!

 

厚真町LVSは今年度も開催します。事業プランがしっかりしてなくても、おぼろげであっても「自分ありき」の気持ちだけ持ってきていただければ、きっと小林さんのように何かを得ていただけるのではないかと思っています。今年も皆さんと一緒に本気で安心して自分の本音をさらけ出せる場を作っていきたいと思っています。エントリーの締め切りは9月30日です。厚真町でお待ちしています。

ローカルベンチャースクール2022 チャレンジをご希望の方はこちらをクリックしてください

林業と里山暮らしについて発信している小林さんのTwitterアカウントはこちら
https://twitter.com/5884kenta

 

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