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若者よ、挑戦者たれ。嵐の起業プレゼンテーション大会『西粟倉ローカルベンチャースクール2015』第2回レポート

『西粟倉ローカルベンチャースクール2015』(以下ローカルベンチャースクール)は「西粟倉に移住してみたい」「起業してみたい」という人々のために開かれたプログラムです。参加者は、西粟倉村が採用する「地域おこし協力隊(起業型)」を目指し、「西粟倉村に来て実現させたいこと」を全3回のローカルベンチャースクールで西粟倉村に触れて、関わって、知って、磨きあげていきます。

さて、第1回から早1か月。西粟倉村で起業したい挑戦者候補生によるプレゼンテーションを経て、第2回を迎えます。ローカルベンチャースクールは、ただ起業家を輩出するための学び場ではありません。西粟倉村という場所で、いかに自分らしく生きていけるかを模索する場でもあります。第2回は、第1回プレゼン大会で彼らが披露したこの村でやりたいことのブラッシュアップ大会。挑戦者候補生たちが、この村で生き合うための夢とロマンと、現実に直面します。

 

好きなこと、仕事にしていいんです!

第2回ローカルベンチャースクールを受講するために、西粟倉村に集まったひとは50人以上。会場の元湯の居間はぎゅうぎゅう。スクールの参加者で特筆したいのが、前回に比べて、公務員の皆さんの参加が増えたこと。西粟倉村役場のみなさんはもちろん、鳥取県庁、岡山、京都などの市町村で実際に地域活性化を担う人々です。

「地域にひとを呼ぶことの新しい事例だと思いますし、実際に来たいという方々はどんなことを考えているのか知りたい」と、とある市町村の参加者。ローカルベンチャーが生まれる土壌の広がりは西粟倉村だけに留まらない予感がします。
 


まずは、勝屋久校長先生の基調講演です。勉強になりすぎる共感型プレゼンテーションは「リストラは神の使い」「人とつながる時代」など、今に生きるソーシャル名言連発で皆さんメモを取る手が止まりません。校長先生の愛がほとぼしる話はまるで映画を見ているようにするすると心に刻まれます。自分らしく生きる事が、その地域らしさをつくる。西粟倉で生きる事も社会で生きる事も同じこと。これは全人類必聴かも。ローカルベンチャースクール、マジやばい。

ちなみに今回、勝屋校長先生の息子さんも参加(イケメン☆)前列で父の勇姿を見守ります。いつもより緊張した〜という校長先生がスーパーかわいい(笑)
 


 


そして今回のゲスト講師はパートナー産業株式会社代表取締役の二宮博志さん。精密機械器具メーカーを引き継いだ第二創業社長の二宮さん。創業者の想いを引き継ぎ、会社を切り盛りしています。そして、二宮さんのスゴいところはパートナー産業の新しいプロジェクトとして「お城ジオラマ復元堂」を立ち上げたことです。
 


二宮さんは大の城ラー。城が好き過ぎて、市販の天守閣ばかりがフィーチャーされる城のプラモデルに日々疑問を感じていたそうです。ええ、一般人にはわからない世界です(笑)。そこで、二宮さんは、きめ細やかに城郭を完全復元した「城ラマ」をつくることにしたのです。二宮さんはその挑戦について話してくださいました。城ラーな自分と会社経営者という側面から試行錯誤をして、みんなが幸せになるプロジェクトになっていく様子はまさに下町ロケット。とにかく二宮さんから伝わる熱量が圧倒的で「好きこそものの上手なれ」をしみじみ感じました。声を大にして言いたい。好きなこと、仕事にしていいんです。
 

好きなだけじゃ仕事にならない

そして、メインは、西粟倉村で起業を目指す挑戦者候補生たちの事業計画ブラッシュアップのためのプレゼン大会です。第1回から引き続き参加する3名と新規でプレゼンテーションをする2名の計5名で行なわれます。
 


挑戦者候補生は、一次審査で提出した企画書を5分以内でプレゼンテーション。限られた時間内で自らの挑戦を端的にかつわかりやすく、そして熱く語らなければなりません。そして、そのプレゼンを踏まえて、講師陣&会場からの質疑応答が15分。この村の地域おこし協力隊になるためには、自らの企画・起業に共感をもたらし、この村の未来の可能性を感じさせるものに仕上げなければなりません。
 


トップバッターは山口千夏さん。現在、福島県いわき市で「帽子屋UKIYO」を営んでいます。彼女は現在の住まいから西粟倉村へ移住する予定で、西粟倉村でも帽子屋さんをやりたいというプレゼンテーションです。

前回のプレゼンテーションでは「やりたいことが多い」と、事業の詰め込み過ぎを指摘されていた山口さんですが、そのアドバイスをカバーして、さらに広がりあるプレゼンテーションを行ないました。

例えば、「大人と子どもの帽子」から「子どもの帽子」に特化させることで「西粟倉村の幼稚園のオフィシャル帽子をつくる」と一定数確保による収支安定を図るなど、「帽子屋さんをやりたい」というふんわりした動機が、一気に西粟倉村で起業して食べていくための事業に成長しています。スゴイ!

更なるアドバイスとして、収支の数字をもっと詳細にすることやスタートアップにクラウドファンディングを活用することなどが提言されます。プロジェクトを客観視するプロフェッショナルがいることで、計画がさらに深化していきます。これぞローカルベンチャースクール!
 


ジビエ狩猟の起業を目指す松原圭司さん。最年少の挑戦者候補生です。彼も今回2回目のプレゼンテーションです。

現在、獣害は西粟倉村でも深刻な問題になっています。社会問題を解決しながら、食べて行く。その必要性についてアツくプレゼンテーションしたのが第1回でしたが、勝屋校長先生に「リアリティがない」とバッサリ斬られたのが記憶に新しいところ。夢とロマンを抱えて田舎を目指す若者に現実を突きつけることは、一見エグいです。社会的意義があっても、それがマネタイズできなければ、起業ではない。この考え方はローカルベンチャーにおいてとても大切な事です。そう、きれいごとだけでお金が稼げたらローカルベンチャースクールはいりません。逆をいえば、地域において、収益事業化できること=地域にとって意義があること、とも言えるでしょう。

そして、今回、そのことが実感できるいちばんのドラマが松原さんのプレゼンテーション終了直前に起こります。

実は松原さん、西粟倉のことがわからないと西粟倉で起業なんてできないと、一時的に村に潜り込んでいました。若さゆえのフライングです(笑)。西粟倉村で狩猟をはじめている松原さんはプレゼンテーションの最後に活動費のドネーションをお願いします。
 

なんとこの場で、西粟倉村の地元民からドネーションをいただきました!「獣害を減らすためにぜひ頑張って欲しいから」と、はにかんで松原さんにドネーションを手渡します。会場は大大喝采。

松原さんの行動やプレゼンテーションが共感を呼び、西粟倉村の地元の心を動かした瞬間です。すでに実践しはじめている松原さん、一歩リードかも?
 


最初の2人は、1回目のプレゼンテーションを膨らませましたが、前回のプレゼンを白紙にして、新しい事業をプレゼンテーションした参加者も。

西粟倉村というフィールドでミニマルライフを実践するというライフスタイル提案型の事業計画です。実践したい暮らしを西粟倉村で体現し、それを事業化するとのこと。

このプレゼンテーションに関して、勝屋校長先生は「なぜその事業をやりたいのか、そこに幸せを感じるのか」と心の在り方を訊きます。やりたいことをやりきるには、自分自身が幸福を感じていなければ難しい。そしてなぜ自分はそこに幸福を感じるのか説明できなければ、と、勝屋校長先生は優しく言います。この村でなにをすべきかと考えているうちに頭でっかちになってしまいがちなプレゼンテーションにおいて、改めて本質に立ちかえる作業です。城が好き過ぎる二宮さんも「どうせなら、幸せに感じることに突き抜けたほうがいいよ!」とアドバイス。このアドバイス、二宮さんだからこそ輝くな、と思いました(笑)

つづく挑戦者候補は、千葉県で森のようちえんで働く保育士さんです。ニシアワーでお伝えした教育の挑戦者募集を読んで、西粟倉村に興味を持ち、今回のローカルベンチャースクールに参加しました。

「子どもの力を信じる保育を西粟倉村で行なうこと」。西粟倉村という素晴らしい環境で子供たちを育てたいという教育者としてイノセントな願いが込められたプレゼンテーションでした。

現在、西粟倉村で教育を担うのは公立のみで私立はありません。子どもの数からも「新しい教育を選択肢として増やす」よりも「西粟倉村の教育として取り入れていく」という選択肢のほうが現実的だと西粟倉村の担当者談。教育は地域と密接に関わることなので、まずは西粟倉村の教育現場を実際に見て、深掘りをしていくことが不可欠。との意見が。そして移住者増や少子高齢化対策において教育改革は大切なものです。それを考えるきっかけとして挑戦者候補の提案は西粟倉村の教育に一石を投じました。相互的に気付きがある、それもこのスクールの良さです。
 

やっぱり課外活動が好き

 


「プレゼンテーションは飲み会の大いなる前フリ」という牧さんの言葉通り、ローカルベンチャースクールの本番は懇親会です。
 


仲良し勝屋夫妻。
 


 


 

老いも若きも一緒に食事を囲み、意見を交わし合うことこそがローカルベンチャースクールの醍醐味。あちこちで地域を盛り上げるグッドアイデアが生まれ、楽しいエネルギーはイノベーションを生みます。

西粟倉村で生きたいという若者のプレゼンテーションから、「自分にはなにができるだろう」と各々が本質に戻るような気持ちになったという意見があちこちで聞くことができました。

ローカルベンチャースクールを通して、挑戦者の夢はいよいよ現実味を帯びてきました。さて、いよいよ次回、起業型地域おこし協力隊の採用が決まります。