北海道

厚真町

あつまちょう

厚真高校を魅力的な高校にするプロジェクト、始動!2022年1月に「公営塾」がオープン

厚真町で唯一の高校である、北海道厚真高等学校(以下、厚真高校)は、普通科の公立高校です。

厚真高校では、同校に入学する地元の生徒が減っているため、進路の選択肢に入るような魅力的な存在になっていきたいというテーマをもち「高校魅力化プロジェクト」を始めようとしています。

高校を、魅力化?

どのようなことを行うのでしょうか。高校生やまちへの影響は?

このプロジェクトの運営を行う『株式会社Prima Pinguino(プリマペンギーノ)』の代表取締役・藤岡慎二さんに、お話をお聞きしました。

(本記事の最後にオンライン参加も可能な藤岡さんの講演会のご案内もあります)

 

『株式会社prima pinguino』代表取締役・藤岡慎二さん

 

 

高校があれば地域の人口減少に歯止めをかけられる 

— そもそも東京都生まれの藤岡さんが地域に興味をもったのは、なぜですか。

 

藤岡:大学生向けの起業家育成プログラムを考案していた大学院生時代に、友人が地方創生の研究をしていたのですが、当時は「どうしてそんなに地域活性化の研究をしているんだろう」と思ったほどで、その良さが分かりませんでした。

その後2006年に東京で教育系の会社(現『株式会社Prima Pinguino』)を起業し、秋田県へ講演に行く機会がありました。まちの中心部の商店街を夕方誰も歩いていないのを見て、びっくりしたんです。地域の現状をリアルに感じました。

本業の教育を通じて地域を元気づけることができないかと考えていた頃、島根県海士町にある島根県立隠岐島前高等学校(以下、隠岐島前高校)の「高校魅力化プロジェクト」を立ち上げた初代コーディネーター・岩本悠くんから誘いを受け、2009年から参画しました。

 

高校で藤岡さんが授業を行う様子

 

2010年、海士町に移住して6年間住み、高校が統廃合される基準まであと7名という状態から、2011年度には過疎地の学校として異例の学級増を実現し、定員が80名にまで増えました。「島留学」制度で、島外からも生徒を募集したんです。

新入生のうち5割は島外からの入学で、大学進学率は5%から60%になりました。15歳で「高校魅力化プロジェクト」を受けていた生徒が、今20代になって島に帰ってくるケースが起きています。この「高校魅力化プロジェクト」は2013年から全国に拡大しています。

 

— 高校は、生徒数が減るとどうなるのでしょうか。

 

藤岡:統廃合されます。日本ではこの10年間で約6分の1の高校がなくなっています。1年で統廃合されるのは50〜60校です。特に離島や中山間地域で統廃合が進んでいます。

実は、生徒数が減るといろいろなことに影響するんです。離島では診療所よりも、高校の有無のほうが人口減少に与える影響が大きいというデータがあります。つまり、高校があれば地域の人口減少に歯止めをかけられるんですよ。国交省のデータによると、高校がある離島はない地域に比べUIターンの数が20倍だそうです。 

また、地方創生系シンクタンクで、中山間地域を出る理由の第2位が「(その地域に高校がなく)通学困難だから」というデータも出ています。地方に移住したい人は増えていますが、子どもの教育環境が整っていることを気にする親は多いんです。

 

お米は厚真町の特産品の一つ。秋の稲刈りの様子

 

 

「高校魅力化プロジェクト」には4本の柱がある

— だからこそ高校の魅力化ということですね。『株式会社Prima Pinguino』の主な事業になっていますが、「高校魅力化プロジェクト」ではどのようなことをしているのですか。

 

藤岡:北海道、愛媛などを中心に、全国で60校担当させていただいています。「高校魅力化プロジェクト」には4本の柱があります。

1つ目が「カリキュラム改革」で、その地域や高校でしか学べない独自のカリキュラムをつくります。生徒が自ら問題を見つけ、さらにその問題を自ら解決する能力を身に付ける学習方法「PBL(Problem Based Learning。問題解決型学習)」や、知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学び「STEAM教育」、問いを立てる課題設定、情報収集、整理・分析などを通じて学力をつける「探究学習」などを活用しています。

 

海もある厚真町。浜厚真海岸はサーフィンが楽しめ、年間6万人が訪れる

 

2つ目が、生徒だけでなく地域の大人や学生とも交流してリーダーシップやコミュニケーション能力を育む「教育寮」です。これらが機能することで、魅力的な高校になるうえ、大学受験につながる学びも身につきます。

3つ目が、生徒たちの主体的な活動です。愛媛県立弓削高校では 、生徒90人のうち、火がついた20人が「起業の会」をつくり、ビジネスコンテストに応募しました。これを機に起業部ができたんです。ほかに国際交流部、地域連携部、みりょく郵便局といった活動があります。

4つ目が、高校と地域が連携して行う「公営塾」です。

 

 

自宅・学校とも異なる、生徒たちの第三の居場所を目指す「公営塾」とは

— 厚真高校の魅力化では、今、その「公営塾」の準備を進めているそうですね。

 

厚真町で公営塾設置等の高校魅力化プロジェクトに取り組むための教育魅力化支援員として赴任した、加藤千昇さん(左)、川嶋圭さん(右)

 

藤岡:はい。厚真高校の高校生を対象に、スポーツセンターを拠点として2021年12月にプレオープン、2022年1月のオープンを目指しています。平日は毎日開き、サードプレイス的な居場所を目指します。スタッフは既に2021年8月から着任し、高校生や地域の方たちとつながりをつくっている状況です。

「公営塾」で行うのは、ICT(情報通信技術)による映像授業やAIを活用した映像遠隔授業で、生徒には個別につくるカリキュラムに沿って受講してもらいます。これによって補習や進学指導もでき、生徒の習熟度に合わせた最適な学びを提供できます。

また、キャリア教育の授業として自身の進路やその先のキャリアを探究するゼミ授業を導入し、自分のやりたいことを探究してもらっています。現地の人の声を実際に聞き、その地域の産業を体験することで、生徒は地域で起きていることを自分ごとにしていくんです。勉強だけではなく、社会課題を見つけたり考えたりすると、自分の目標を見つけやすくなり成績が上がるというデータが出ています。

「公営塾」は目標を発見して意欲が上がり、学力が向上するだけでなく、多様な人と交流し挑戦する場、放課後の居場所にもなります。

 

厚真町ののどかな放牧地の風景

 

— 自主性が育つようなコンテンツばかりですね。

 

藤岡:僕たちはただ「高校の存続」を目指したわけではないんです。あくまで目指したのは「魅力化」です。生徒が行きたくなる、保護者が行かせたくなる。そんな高校を目標に、まずは高校生の学校生活の充実や自己実現をはかって、地域からも認められるものを目指します。その先に、結果として地方創生、持続可能な地域の実現があるんです。

日本の地方は、人口減少、少子高齢化、財政難などの課題がつまった“社会の縮図”です。人口が半分になるという世界中で誰も解いたことがない問題に立ち向かっているので、世界の重要課題の最前線なんです。世界最先端だなんて、エキサイティングだと思いませんか?

 

— 厚真高校のこれからが楽しみになってきますね。

 

藤岡:実は僕自身が、厚真高校ですごくやりたかったんです! 理由は、ローカルベンチャーを育成するまちの取り組みで厚真町を知っていたから。現在むかわ町の北海道鵡川高等学校でもやらせていただいていて、むかわ町と協働すれば相乗効果を図れるのではないかと考えています。とても楽しみにしています!

 

 

厚真町にどんな大人たちがいるか、高校生に伝えたい

— 具体的には、地域にどう浸透させていくのでしょうか。

 

藤岡:呼吸を合わせるよう心がけています。海士町にいたとき、僕と地域のスピード感が違っていて失敗したことがあるからです。その後、海士町で神社の掃除を毎日していたり、祭りに出る、地域の活動には積極的に出るなどしていたら、それを地域の方たちが見ていてくださって、自分の思いをご理解いただけたことがありました。敬意をもってお祭りなどの地域の行事にも参加するようにしています。

 

公営塾準備室に集まった高校生と厚真町産のシイタケのほだ木を前に「これ、どうやったらシイタケ育つと思う? やってみようよ」と会話が弾む

 

また、教育改革というと新しいことばかりをするかのように思われやすいのですが、方向性を地域の歴史的文脈に合わせることも意識しています。例えば、人口約300人の天売島にある北海道天売高等学校は廃校の危機だったのですが、文脈を大切にした結果、生徒数が4倍になりました。島には300人しかいないので、高校生も大切な労力になっていて、高校生が仕事をして自分で働いたお金で進学する文化がもともと根付いていたのです。そこで親に頼らずに自立したい人などを広く募集したら、倍率が10倍になりました。

 

— 厚真町ではどのような展開を検討していますか。

 

藤岡:厚真町の特徴の一つにローカルベンチャーがありますので、高校生も起業などをしていいと思っています。高校生も個人事業主になれますし、株式会社だってつくれますから。クラウドファンディングで資金を得てもいいでしょうね。

 

2021年度の厚真町「ローカルベンチャースクール」には教育魅力化支援員の2名も参加した

 

よくあるのが商品開発なのですが、僕は企業のバリューチェーン(価値の連鎖:原料調達、生産、サービス提供といた一連の流れ)を経験してからのほうがいいと考えています。そういう本物の体験をしてもらえたらいいですね。

厚真町には、移住してまちで事業をつくろうとしている方や、既に挑戦中の方たちがいます。そのチャレンジングな雰囲気あふれる地域に厚真高校があるわけですから、そういう大人たちがいるんだと僕自身も知り、交流を通じて高校生に伝えていきたいです。とても楽しみにしています。

 

高校魅力化プロジェクト。また一つ未来につながる取り組みが始まった

 


【イベントのご案内】

厚真町では12月6日に「全国に拡がる高校魅力化プロジェクト 最新&最深事例と厚真町での取り組みについて」と題し、藤岡氏による講演会を行います。オンライン(配信URLご連絡のため事前登録が必要)配信もしますので、高校魅力化プロジェクトに興味をお持ちいただいた方はぜひアクセスしてみてください。

詳細はこちら

https://www.facebook.com/events/956910521845855?ref=newsfeed

 


 

137-002

東京都中央区日本橋1-2-10 東洋ビル6階

ホームページ

http://pripin.co.jp

メールマガジン

いきるが、ひろがる。Through Me Magazine をお届けします。