岡山県

西粟倉

にしあわくら

西粟倉村役場で働き、好きなこともする。自分の興味・関心を深められるおもしろい仕事、あります!

移住、ローカルベンチャー、SDGs、百年の森林(もり)構想――。地方創生において、岡山県西粟倉村はそれらのキーワードで知られる“有名な村”となりました。

今や移住者数は、約1400人という村の人口の15%を占めます。2008年からの10年間で起業された数は50以上。村に生まれた総売上金額は22億円以上になります。小さな村であるにもかかわらず、先進的な取り組みが実現できているのはなぜなのでしょうか。

その根っこには、2004年に平成の大合併を拒み、村として自立すると宣言した決断がありました。その後、数々の取り組みで村を牽引してきたのが西粟倉村役場です。

現在、役場内の第一線で先進的な取り組みを支え、動かしている部署が「地方創生推進室」。2020年4月に立ち上がった新しい部署です。今この部署で、スタッフを募集しています。

特筆すべきは、役場の仕事でありながら「自分のやりたいことを実現するために来てほしい」という求人であること。地方創生推進室室長で地方創生特任参事である上山隆浩(うえやま・たかひろ)さんと、上山さんと共に地方創生推進室で働く川上えりかさんにお話をお聞きしました。

 

地域の先導的な取り組みを担う仕事

はじめに「地方創生推進室(以下:推進室)」について教えてください。

上山さん(以下、敬称略):推進室は、役場の一般的な「○○企画課」といったルーティーンで企画する組織ではなく、地方創生に必要なことに特化したプロジェクト型の組織です。プロジェクト型とは、プロジェクトごとに専門のチームをつくり、進めていく組織をいいます。

推進室の仕事は、地方創生にかかわる仕事やSDGs未来都市、村の情報の見える化やDXを活用した新しい行政サービスの開発などで、新設された団体『一般社団法人Nest(ネスト)』や『一般財団法人西粟倉むらまるごと研究所』などのスタートアップや、Iターンの人たちの活躍や起業の支援なども行っています。推進室は村のあらゆる事業を把握して横断的に仕事を進めていきます。

 

-今回の求人に関係する仕事は何でしょうか。

上山:主に二つあります。一つが、自治体がもっている情報やデータの見える化です。西粟倉村は、内閣府地方創生推進事務局が選ぶ先導的な取り組みをしている自治体「SDGs未来都市」に、2019年度に選定されました(詳細はこちら)。

こうした活動などで進めているものを地域の人々が見ることができるようオープンデータ化したり、地域のネットワークを仕組み化したりする総合的なプラットフォームづくりを進めています。

一年目だった2020年度は、どういうものがいいか外部の人に入ってもらって議論をしました。二年目となる2021年度はそれに基づいて実証をしています。具体的には、お年寄りの方の見守りとして、家庭のエネルギーデータをネットワークでつなぐ実証です。2022年度以降はデータセンターなど、プラットフォームの整備に入っていく予定です。

二つ目は何ですか。

上山:二つ目は、脱炭素の取り組みです。脱炭素とは、CO2など、地球温暖化の大きな要因となる温室効果ガスの排出を抑える運動のことです。

特に2030年度まで集中して行う取り組みを中心に、脱炭素の行程や具体策を示す「地域脱酸素ロードマップ」という施策があります。推進室では2022年度以降、脱炭素な地域づくりを進める先導的な事業を構築していきます。ちなみに、そうした事業のベースにあるのは、先ほどお話しした「SDGs未来都市」です。

また、国が脱炭素のモデル地域を100箇所程度指定する「脱炭素先行地域」があります。2030年度を目標に家庭などの電力消費にともなうCO2排出の実質ゼロ(編集部注:排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いた合計)を目指す地域です。西粟倉村はそれにも対応したいと考えています。

村内で2011年に排出していたCO2は1万3千トンでしたが、水力発電や木材を活用したバイオマス発電で、それより3千トン減らしました。ただし、家庭の太陽光発電や蓄電池、断熱など省エネに関わる部分はまだなので、電気自動車とセットで普及していきたいです。

とは言え、村ではまだまだチャレンジしていかないといけない課題も多いのでこれら二つの課題にかかわらず私と一緒に事業に関わっていただきたいと思っています。

何かにチャレンジしながら役場の仕事ができる

推進室は2020年4月に立ち上がって、今は何名いるのですか?

上山:私を含めて5名の職員がいて、そのうち3名が地域おこし協力隊員です。

今回は、その地域おこし協力隊の枠での募集だとうかがいました。

上山:はい。業務委託になります。お伝えしたいのは、一般的な自治体職員のように働いてほしいわけではないんです。「役場に一度入ったらずっと自治体職員として働かなければ」という価値観を変えていきたいです。今いる隊員も、公務員になりたいわけではない。地域で実践して自分のキャリア育成を行いたいとの思いがあって来ています。だから仕事や日常生活のなかで、自分が深めていきたいテーマが見つかったら、そちらにシフトさせたいなと考えています。つまり、適切なポジションへ移っていただくと。

そうなんですか! 自分の興味・関心に寄り添っていただけるのですね。

上山:地域おこし協力隊制度ってそのためにありますから(笑)。あくまでお願いしているのは、先ほどお話しした、村としてチャレンジしたい部分。その仕事をクリアできてプロジェクトがしっかり進められれば、役場にいなくてもいいし、別のことをしても構わないんです。今いる隊員の皆さんにも、役場の仕事以外で、やりたいことをやってもらっています。

公務員ではないから、与えられた仕事だけをきっちり行うのはおもしろくないと思うんです。役場の仕事をしながら、地域の資産を活用して自分の可能性にチャレンジできるほうがやりがいがあると思うので、そこは大切にしたいです。

役場での仕事でそういうポジションは珍しいのではないでしょうか。

上山:自治体だと「職員として居続けてもらわないとノウハウが貯まらない」みたいな議論がありますけど、僕は「貯まったものがそのまま使えるんですか?」と思うんです。これだけ変わっていく世界で、蓄積したものが3年、5年先もそのまま使えるのどうか。

それに、世の中は「ずっとそこに人がいるものだ」という価値観ではなくなっていますよね。つまり(移る人は)風の人。それを土の人が見れば「定着しない」と思うのでしょうが、人の価値観そのものが変わっていますから。風の人の集まりだと認識して対応しないと、優秀な人材は集まらないと考えています。

霞ヶ関にお邪魔しても、お話しするとたくさんの人が外部から来た出向人材です。地方でも同じことですよね。そのときに必要な能力を集めて、事業を速く動かすほうが大切です。役場内だけで組成して新事業に着手するとすごく時間がかかります。やる気のある人でチームをつくってまず実施して、それを評価し改善する仕組みを早く回す。成功したものを正式化するほうが、事業が進むので、そちらを優先しています。

 

そういう柔軟なお考えの組織だと、入りやすいですね。

上山:今いる隊員の一人はSDGsの普及啓発の仕事を担当していて、役場に週4日来ています。2022年3月で地域おこし協力隊を卒業し、起業して体験ツアーやキッチンカーなどの事業を行う予定です。週1日はその事業や資格取得の準備をしています。

もう一人はIT系で、『西粟倉むらまるごと研究所』の仕事をしています。将来は西粟倉村でITベンチャーを起業する予定です。役場の仕事をしてもらうのは週に3日。他の日は、自分の事業の顧客対応をしてもいいことになっています。

もう一人が、川上という女性です。よかったら直接話を聞いてみてください。

彼らの数年後が楽しみですね。彼らには知識も能力もありますから、役場内の職員だけで行うよりもうまくできますし、自治体職員の負担が減るメリットもあります。公務員になることが目標ではなくて、自分のやりたいことを実現するために自治体職員になってくれる人に来てほしい、と思っています。

 

エネルギッシュな村で「やりたいこと」に関われる

ではここからは、川上えりかさんにお話をうかがいます。経歴と、現在どのような仕事をしているか、教えてください。

川上さん(以下、敬称略):生まれは東京で、12歳から宮崎で育ち、九州大学・大学院で林業や森林生態系について学びました。西粟倉村とのご縁は、大学生のときに『エーゼロ株式会社』でインターンをしたことです。元々西粟倉村には先進的なイメージをもっていましたが、実際に滞在して、地方でも好きなことを仕事にしているおもしろい方がたくさんいると感じ、福岡から移住しました。

現在一年目で、情報やデータの見える化の一環として、行政ポイント付与サービス「あわくらポイントサービス(通称:あわポ)」を担当しています。行政の会議やイベント、アンケートなどに参加するとスマホでポイントが付与され、地域内のお店で利用することができます。

もう一つ担当しているのが、村内にいる地域おこし協力隊の事務局です。協力隊や委託会社とコミュニケーションをとります。どちらの仕事も、未経験で知識がまったくない状態で始めましたが、基本的なことは丁寧に教えていただけて、大丈夫でした。

私は週に5日来ています。勤務時間は8:30〜17:15までで、いつも18:00頃には帰宅しています。

 

村や推進室の印象はいかがですか。

川上:役場を含めて、とてもエネルギッシュな村だと日々感じています。地元出身の方もそうでない方も「村がこうなってほしい」という願いをもっていて、そのうえで仕事をされているなと。

推進室で「すごい」と思ったのは、上山さんのフラットさです。上山さんが、相手の年齢や経験値、性別など関係なく、意見やアイデアを対等に聞いてくださるんです。それが役場内でも外でも変わらないことに驚きました。私たちは得意なところで仕事ができています。新卒で西粟倉村へ来たので、「最初からこんなところで働かせてもらっていいのかな」と思うくらいです(笑)。

実はそれまでは、50、60代の方に少し苦手意識があったんです、前時代的だったり、何度も同じ話をされる方がいたり……。上山さんは、新卒の私が「やりたい」と言ったことを認めてくれて、さらにそれがうまく回るようサポートしてくださいました。

あと、顔が見える・分かる範囲の規模ということもあって、物事が進むのがスピーディです。やると決めたらすぐに進んでいきます。ちょっとしたクレームに後日対処しようと思っていたら、「すぐ変えられるならすぐ変えよう」と対応することになりました。

私はDRIVEに掲載されていた求人記事を見て応募したんです。森林や山のことで就職するなら林業や木材関連のベンチャー企業は複数あるのですが、「上山さんの部下として働いてみたい」という気持ちと、仕事内容が多岐にわたっていたので、興味をもちました。

ところで、休日は何をして過ごしているんですか。

川上:森林や山が好きなので、近隣で登山したり、村内の地域おこし協力隊の方と図書館で月に1回ほど森や植物に親しむ講座を企画していてその準備をしたりしています。日用品などの買い物をするために鳥取市や智頭町、兵庫県の佐用町まで行くことも多いです。

都市部の友人たちは「リモートで働くので新しい出会いがない」と言っていますが、(新型コロナウイルスの流行の影響で)人と関わることに気を遣いながら活動していたものの、村内に同世代が多く、新しい出会いもあります。いろいろな職種の人と接したり、他県からの視察が多かったりするので、刺激は多いです。

 

半年近く村に住んで、働いてみて、自分が深めていきたいものは見つかったのですか?

川上:村では森林が生み出す価値の最大化を目指した「森林ReDesign」に取り組んでいて、それに興味をもっています。アグロフォレストリーや森林サービス産業など、新しい森林ビジネスが起きることを想定した事業です。将来はそうした森林利用の活動にシフトしていく予定です。

もう見つけていらっしゃるんですね。ご活動、応援しています。

 

「チャレンジしてみたい」だけでもいい

ここからは上山さんにお聞きします。どのような人に村へ来てほしいと考えていますか?

上山:西粟倉村がやることに対して「自分も参画してみたい」「西粟倉村でチャレンジしてみたい」という思いがある人に来ていただけたら。スタートアップに興味がある人がいればいいですね。初心者でも問題ありません。長期で関わっていただけるのであれば、プロボノやインターンシップでもOKです。

先ほどお話しした推進室の仕事は、2022年に確定すると5年ほど続くので、そこにコミットしていただきたいと思っています。「ずっとやってくれ」という意味ではありませんよ。自治体職員になりたければ試験を受けてもらえればいいし、もちろん、ならなくてもいいんです。

最後に、メッセージをお願いします。

上山:田舎の役場ですが、地域の将来の課題にストレートにチャレンジしていますので、やっていることの意味がわかりやすいと思います。よく「自治体職員って何をしているかよくわからない」「地域にどう貢献しているかわかりにくい」という声を聞きますが、わかっていただける仕事ではないかと。

また、仕事だけに限らず、自分で「地域でやりたい」というやりがいも見つけてもらえたらと思っています。「チャレンジしてみたい」というだけでも、ぜひ来てもらえたらいいなと思います。

西粟倉村役場で働きたい方は以下のURLよりエントリーをよろしくお願いいたします。

https://drive.media/career/job/32214