マットから山奥へ。レスリング選手だった僕は、今「小型木質バイオマス発電+熱供給」事業がおもしろい!

「おふろから変わる日本の地域」。

そんなキャッチコピーで活動している『株式会社sonraku(そんらく)』は、おもに地域でエネルギーの事業を行っている会社です。

現在、地域おこし協力隊として同社でバイオマスマネージャーを務めているのが、半田守さん。
エネルギーに関する新事業の準備を進めているといいます。

さらに、なんと半田さんは、日本一を獲得したことのある元・レスリング選手!
半田さん個人のストーリーやこの事業への思いも、お聞きしました。

 

 

薪づくりや、各ボイラーへの薪の運搬・投入などを行っています

 

— まず『株式会社sonraku』の事業について教えてもらえますか。

 

半田:大きく分けて三つの事業があります。一つ目は、岡山県・西粟倉村で薪ボイラーによる温浴施設への熱供給や、法人・個人向けの電気の小売などを行うエネルギー事業です。2015年2月に、西粟倉村の温浴施設『あわくら温泉 湯~とぴあ 黄金泉』に村で第1号の薪ボイラーが入って熱供給を行っています。

二つ目が、「熱」をコンセプトに、西粟倉村にある『あわくら温泉 元湯』と、香川県・豊島の『mamma』という温浴施設・宿泊施設を自社運営しています。三つ目が、代表の井筒耕平が環境学の博士なので、井筒を中心に、エネルギーやバイオマス、ローカルベンチャー、人材育成など、地域が抱える課題を解決するコンサルティング事業です。

 

— 熱供給って、何でしょうか?

 

半田:薪などの資源を燃やして、薪ボイラーから出る熱を利用することです。『黄金泉』の場合は、温泉の加温に使用しています。一般的には灯油のみが使われていますが、ほとんどを薪にして地域の資源を活用します。薪のようにエネルギー源として利用できる生物体を「バイオマス」といい、薪、木質チップ、木質ペレットなどは「木質バイオマス」、こうした熱供給は「木質バイオマス熱供給」と呼ばれます。再生可能エネルギーの一つですね。

現在では、『黄金泉』、『元湯』、『あわくら荘』というあわくら温泉の三湯すべてに薪ボイラーが入っていて、薪づくり、各ボイラーへの薪の運搬・投入、ボイラーメンテナンス、灰清掃などをするのも弊社の仕事です。2018年から始まった、村の地域熱供給の運営も担っています。僕は会社の中でこのエネルギー事業を担当しています。

薪づくりをする半田さん。2019年からは現場を離れ、マネジメント業務やコンサルティング業務の補助に従事している(画像提供:株式会社sonraku)

 

— エネルギー事業のなかで新事業を準備していると聞きました。

 

半田:木質バイオマス熱供給は、採算がたちづらく、普及に限界があると分かってきたからです。重油や灯油を木材に転換しているわけなので、価格のライバルは灯油になってきます。“やつら”は安くて便利なんですよ(笑)。一方で木質バイオマスは、原木を仕入れて、人の手で加工してボイラーに投入するので、原木代も人件費もかかります。原木代は仕入れ価格が決まっていますから、生産効率を上げることくらいしか工夫できないので、収益がたちづらいんです。

 

 

成功事例が少ない、小型木質バイオマス発電への挑戦!

 

— そこで新事業が始まったわけですね。どのような事業でしょうか。

 

半田:「小型木質バイオマス発電+熱供給」という新事業です(以下、バイオマス発電)。これまでと何が変わったかというと、燃料が薪から木質チップに。そして、供給するものがこれまでは熱だけでしたが、電気と熱になります。

実は、村の地域熱供給のほうで既に木質チップは使っているんです。でも、バイオマス発電では、そのチップよりさらに精度が問われます。例えば、地域熱供給では含水率40%の木質チップだったら燃焼してくれるのですが、バイオマス発電では含水率を15%以下にしないとうまく化学反応を起こすことができない。つまり、人工乾燥でカラカラにしないといけない。そこまでしないと発電ができないんです。

今、調査事業をしているところです。計画では、2020年度に人工乾燥機と発電機を入れ、2021年4月に事業をスタートさせる予定です。40kWの発電機を段階的に計3〜4台入れたいと考えています。井筒が指揮をとり、僕はそのもとで現場の運用をまかされている感じです。

 

— バイオマス発電を始めるうえで、ネックになることはあるのですか?

 

半田:実は、全国的に小型木質バイオマス発電は成功事例が少ないんです。でも、ゼロではなくて、あることはある。何が違うかというと、これがおもしろくて「ちゃんとやっているかどうか」なんです(笑)。

木質バイオマスや熱供給事業は、特に初年度、手間をかけて機械の微調整をする必要がでてきます。決して片手間ではできないんです。その調整期間を経て、ようやく安定稼動ができるようになります。熱供給で培った、その経験があるのは弊社の強みですね。

現在アドバイザリーをお願いしている協力企業は、バイオマス発電の厳しさを分かっていて、自社で堅実に運用してきた会社なんです。

「小型木質バイオマス発電+熱供給」の新事業のため、井筒さんと半田さんはフィンランドへ出張したことも(画像提供:株式会社sonraku)

 

 

小・中・高・大と、レスリングで日本一に

 

— 半田さんが『株式会社sonraku』に入った経緯を教えてもらえますか。

 

半田:2018年1月に、弊社の熱供給事業に関わりたくて西粟倉村へ来ました。さかのぼってお話しすると、僕は京都府出身で、地元の京丹後市網野町ではレスリングが盛んだったことから、6歳のときからレスリングをやっていました。小・中・高・大と、「全国高校選抜大会」や「全日本大学選手権」などで、それぞれで日本一をとりました。

現役時代の半田さん(画像提供:半田守)

 

— すごいですね!

 

半田:現役を続けるために国士舘大学院へ進みました。しかし、世界へ繋がる全世代で日本一を決める大会では2位が最高です。どうしても勝てないライバル選手がいて、それで引退したんです。オリンピック候補として強化指定選手に選出された時期もありましたが、僕は「オリンピックに行きたい」と思ったことは一度もなくて。だからこそ行けなかったんだと思います。

一時期は体育教師になって地元へ帰ることを目指そうとしたのですが、「もう少し世の中を見てみたい」と思ってしまって。体育教師を目指そうとしたのは、長年お世話になっていたレスリングの恩師の期待に応えようとしていた部分もあったんです。選手としては主体性がなかったことや、自分が本当にやりたいものではないことに気づきました。

そのころ、大学院でいろいろな人との出会いがあって、自分が好きなこと・やりたいことに挑戦したくなりました。あるとき「社長ってかっこいい。僕も自分でいつか事業をやりたい」と思うようになったんですが、レスリング漬けの生活だったので、アルバイトすらもしたことがない。「まず社会に出よう、就職してみよう」と思いました。

 

— 主体性をもてるほうへと、進路を大きく変えたのですね。

 

半田:はい。恩師に「(地元に)帰れません」と話したときは、緊張しました。でも、最終的には理解してくださって、その後は僕のなかで迷いが一切なくなって。それで大学院卒業後、埼玉県にあるエンタメグッズ製造・販売をするOEMの企業に就職しました。スポーツやアニメ、ミュージシャンのライブなどのグッズです。

入社前の面接では「いつか自分で事業をやりたいと思っています」と話しました。今思えば、それでよく通ったなと思いますけど(笑)。社長が僕の経験をかってくださって、事業をすることなど直々に教わりました。「独立したいなら、うちで結果を残さないと」と言われ、「じゃあ営業で1番をとろう」と目標を立てたんです。

仕事は、すごく楽しかったです。営業をして数字を稼ぐのが好きなんですよね。無事に1番をとることができて、3年勤めたその会社を、2017年12月31日に退社することになります。なぜかといえば、このまま続けていても独立が見えてこなかったことと、次にチャレンジしたいことが見つかったからです。

きっかけが二つありました。一つは、それまで新しいアイテムをつくることを仕事にしていましたが、もので飽和する世の中で使われていないものを価値に替えることができれば面白いのではないかと思い始めました。そのとき、アンテナが変わったように思います。

もう一つは、地域おこし協力隊をしている方から地域の可能性のお話を聞いて、地域ビジネスに関心が出て「地域や社会貢献につながるような、いい取り組みをしたい」と思うようになりました。

そんななか、関心をもったのがバイオマスだったんです。地域の間伐材をエネルギーへと活用していくのは、廃棄とはまったく別の作業で「おもしろいな」と。いろいろな本を読むうち、井筒の存在を知りました。学びたいなと思って連絡した縁で、『株式会社sonraku』に入ることになります。

 

 

村の電力自給率を100%にしたい

 

— 異業種へのチャレンジですね。一年目はいかがでしたか?

 

半田:実は、僕が入った当時は、木質バイオマスの運用がうまくいっていなかったんです。薪が乾いていないのでボイラーが鎮火し、各所にご迷惑をかけたこともありました。そこで実態を把握し、薪づくりが追いついていなかったので夜遅くまで薪を割るなど、一つずつ対応していきました。

また、仕入れや売上、経費なども全部洗い出し、エネルギーの単価を上げていただくなどして黒字に転換することができました。大変でしたけど、来てすぐに帰るようなことはまったく頭になかったです。不器用でズボラで、適当なところがありますが、やっぱり無責任なことはできない人間なんだと思います。

小水力発電が稼動すれば、村の電力自給率は50%になる(画像提供:西粟倉村)

 

— 今、目指しているのは?

 

半田:再生可能エネルギーによる村の電力自給率を100%にするという目標です。現在、西粟倉村の電力総需要の50%は、小水力発電と太陽光発電で賄えています(小水力発電は未完成)。この残りを村内で発電すれば、100%になるんです。

中国電力エリアは電線の“空き”がなく、低圧の50kW以下だと買い取ってもらえる状況なので、いつまでに実現できるかはむずかしいです。正直言って、3台入れても50〜60%だと思います。10年、20年、それ以上かかるかもしれません。

それでも会社としては、エネルギー事業で黒字を出していくチャンスだと思っています。僕個人としても、この新事業の立ち上げに中心メンバーとして関われることは貴重な経験です。当然資金や人手が必要で、厳しい戦いになりますが、執念深く運用して、試行錯誤を繰り返していけば成功すると思っています。

 

株式会社 sonraku

住所:〒707-0503岡山県英田郡西粟倉村影石2050

ホームページ:https://sonraku.jp

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