3つの「無い」を打ち破り、森林から新たな価値を産み出せ!
〜多様性に溢れた森林をつくる「プロジェクト支援型ふるさと納税」の挑戦〜

2021年の年末、西粟倉村の森林の一画である大海里(たいかいり)で新たな挑戦が始まる。

それは、「森の新たな価値を産み出す」プロジェクト。まだ誰も一歩を踏み出したことのない挑戦だ。挑むのは、西粟倉村の村役場。プロジェクトの実現を阻む壁は厚い。財源もない、技術もない、研究もない中で、なぜ、この大きな壁に挑むのか。

プロジェクトを担うひとりである、西粟倉村役場 地方創生推進室の上山氏が大海里の森林に描く未来像とは。上山氏が、穏やかな口調の裏に熱意を込めて語った。

 

「森林の新たな価値を産み出す」ために、27年越しの挑戦へ

― 今回のプロジェクトの舞台となる「大海里(たいかいり)」は、上山さんにとってどのような場所なのですか?

上山:大海里は27年前に、僕が植林を手掛けた場所なんです。大海里はもともと岡山県にお貸ししていた山だったんですが、ちょうど全部を主伐するタイミングだったんですね。それで僕は「その後をどうするか?」に取り組んだんです。当時は、植林と言えば針葉樹(スギ・ヒノキ)を植える、というのが主流でした。だから村有林の1,200haも針葉樹林化を進めていたんですね。ただ、僕は「ずっとスギ・ヒノキだけの山を続けるのだろうか」というところに疑問を感じていたんです。そこで「木材が採れる」だけでなく「景観が楽しめて、実も採れる広葉樹林」にできないだろうか、と考えました。それで、樹種として広葉樹である「トチノキ」を選んで、広く植樹したんです。トチノキであれば、実を採って「とち餅」を作ることもできるし、将来的には高級木材にもなります。でも当時は鹿の食害にあってしまい、うまく育てることができませんでした。今回の挑戦は、当時、実現できなかった想いを改めて現実化するためのものでもあります。

大海里は「百年の森林(もり)構想2.0」が最初に具現化される場所

― 「大海里(たいかいり)」を、どんな場所にしていきたいですか?

上山:一番は「百年の森林(もり)構想2.0」が、最初に具現化される場所になって欲しいですね。現在は着々と構想が練られていますが、それはまだ机上の話。データを積み重ねながら、二次元の図面の中で構想している段階なんですね。それを「渓畔林(けいはんりん※1)って、こういうことか!」「アグロフォレストリー※2って素晴らしいな!」と、二次元の図ではなく、実際に目で見て、肌で感じられる場所にしていきたいです。訪れた人に「森林の多様な価値」に触れてもらって「西粟倉村が目指す百年の森林(もり)ってこうなのか」「こんな森林が増えると良いよね!」と言ってもらえる場所をつくるのが目標ですね。

※1 渓畔林:河川周辺の森林のうち、上流の狭い谷底や斜面にあるもの
※2 アグロフォレストリー:農業(Agriculture)と林業(Forestry)を組み合わせた造語。樹木を植え、森を管理しながら、そのあいだの土地で農作物を栽培したり、家畜を飼ったりすることを指し、森を伐採しないまま農業を行うことが特徴。主に熱帯地方で盛んで「森林農業」とも呼ばれる。

 

「木材生産」に10年、真正面から向き合ったからこそ生まれた、新しい問い

― 「百年の森林(もり)構想2.0」とは何ですか?「百年の森林(もり)構想」との違いは?

上山:「百年の森林(もり)構想」は「先代、先々代が育ててきた森林を、木材生産の場として、しっかりと価値が出せるように手入れしていくこと」を目標にスタートしました。当時は「手入れが行き届いていないこと」が、木材の価値を出せない最大の理由だったんです。それから10年が経過して、村全体の半分ほどが管理化に入りました。さらに、様々な経済効果が生まれ、多くの雇用も産み出すことができました。

でも「木材生産」というところに10年、真正面から向き合ったからこそ、新しい問いが生まれたんですね。それは「“森林の価値を最大化すること”を考えたときに”木材だけで良いのか?”」という問いです。

林業に適している場所は、もちろん林業で価値を出せるんですが、それ以外の場所は、どうするべきなのか。林業に適さないところは「より価値が上がるように」もしくは「地域の環境・生物多様性とレジリエンスが上がるように」働きかけていく。これが次世代の森林管理の方針ではないかと思うんです。それが「役場」が森林管理を担う意味でもあるのかなと。

例えば「林業だけ」だったら森林組合が担えば良いと思うんです。でも、役場は「地域の資産」として森をお預かりしているわけですから「木材だけ」ではなく「他の価値」も考える必要がある。「木材生産だけではない価値が出せる場所もあるのではないか」という仮設を立て、そういった場所を実際につくっていく動きが「百年の森林(もり)構想2.0」になります。

 

子ども時代の「当たり前」が、今は「価値」になってきている

― 「木材生産だけではない森林の価値」とは、具体的にどんなものがあると思いますか?

上山:ありきたりな表現になってしまうかもしれませんが「コト消費」は重要なキーワードになると思いますね。コロナウィルスの影響もある中で、密集・密接せずに自然の中で楽しむ。そういうことが、テレワーキング・コワーキングに繋がるような仕組みをつくっていきたいですね。

これまでの「木材生産」は「モノ消費」を前提としているんですね。僕たちは、そこに10年、真正面から取り組んできた。次はその基盤を維持しつつ、「コト消費」へと進んでいくタイミングなのだと思います。

「楽しむ」とか「味わう」という、僕らが子ども時代に野山で当たり前に経験してきたことが、今は価値になってきていると思うんですね。昔は「都市の華やかさ」に目が向くころが多かった。でも、今の若い世代は価値観が変わってきていて、「地方の自然」へと目が向いている流れがあります。ここにいかにアプローチするかが「木材生産だけではない森林の価値」を産み出すためのキーポイントになると思います。

あとは「防災」の観点ですね。西粟倉村ではスギ・ヒノキが民家の真上にもあります。気候変動が激しいので、西粟倉村でも、いつ大きな自然災害が起きるかわからないわけです。でも「森林をしっかり管理していく」というのを個人に任せるのは、やはり難しいわけですよね。だからやっぱり役場として、そういった森林を何らかの形で管理しながら、新しい価値を生み出していきたい、という思いがあります。

財源も、技術も、研究も無い。でも、誰かが始めないと実現することはない

― プロジェクト実現を阻む壁は、どこにあると思いますか?

上山:大きく分けて2つの壁があると思います。

一つは「技術」に関する壁ですね。森林の多様な価値を産み出す方法は、大学の研究レベルでも、まだ確立されていないのが現状です。そんな中で、今回のプロジェクトは「サンリット・シードリングス株式会社」という大学発の企業が技術協力してくれています。同社はおそらく、日本で始めて「生態学者」が「生態の研究」をはみ出て「生態系のデザイン」へと進出した会社だと思います。

もう一つは「財源」に関する壁ですね。今回の「森林の新たな価値を産み出すこと」は、未だ前例がない挑戦となります。なので、財源の確保が難しい。この壁が僕らの前に立ちはだかったことが、「プロジェクト型のふるさと納税」という手段を選んだ理由にも繋がっていきます。

「百年の森林(もり)2.0の構想」は、まだ誰もやったことがないものに、財源も無く、技術も確立されておらず、研究も無い中で進もうとしているんですね。でも「誰かが始めないと、実現することはない」じゃないですか。今回の挑戦が「多様性に満ちた森をつくる方法の確立」に向けた大きな一歩となることを願っています。

 

このプロジェクトは「共感」や「共有」が無いとダメだと思うんです

― なぜ「ふるさと納税」という手段を選んだのですか?

上山:一方ではやはり「財源が足りない」ということがあります。もう一方では、このプロジェクトは「共感」や「共有」が無いとダメだと思うんですよね。地域のやろうと思っていることに対して、いかに「共感」と「共有」を生み出していけるか。

「百年の森林(もり)構想」のときは、クラウドファンデングを通じて「課題感の見える化」をして「どうチャレンジしていくか」を具体化したからこそ共感・共有を得ることができました。「お金」という共感もあったし、「地域で一緒にやる」という共感もあった。今回の「百年の森林(もり)構想2.0」も同じだと思うんです。

当時はクラウドファンデング、今は「プロジェクト支援型のふるさと納税」という選択肢がある。しかも「百年の森林(もり)構想」をベースとした関係人口も、ある程度できている。向こう100年間を見たときに、どれだけ共感を生み出しながら進めていくことができるか。そのための方法として「ふるさと納税」が最適だと考えました。

「ふるさと納税」の本来の目的は「地域が未来に向けて取り組む事業に対し、寄附という形で応援してもらって財源を集めること」だと思うんです。でも今は「返礼品競争」が激化していて「どんな魅力的な商品をつくるか」が主眼になってしまっているように思います。今回の挑戦を通じて、ふるさと納税の「本来の役割」として「プロジェクト型」という新しい形を提示したいです。

簡単にできることではないからこそ、たくさんの方に参加してもらって、助けてもらいながら、一緒に理想の未来を目指していきたいですね。


プロジェクトの詳細やご支援について

大海里で始まる、渓流地や山林地で、探検や釣り、山菜取りなどがめいっぱい楽しめる森林づくりプロジェクト。
このプロジェクトの詳細やふるさと納税の寄附によるご支援については、下記サイトをご覧ください。

https://www.24h-life.jp/project/1

「西粟倉村と暮らす ふるさと納税特設サイト」

https://www.24h-life.jp/

メールマガジン

いきるが、ひろがる。Through Me Magazine をお届けします。