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ローカルベンチャースクール×職員採用=ベンチャー的公務員!?

厚真町では今回の社会人枠の採用試験にあたって、ローカルベンチャースクールへの参加を必須とした新たな方式での職員採用に取り組みます。

9月6日の発災以降、厚真町役場はこれまで以上に多様で、新しい業務に日々取り組んでいます。

このような状況だからこそ、熱い想いと冷静な判断を併せ持ったベンチャー的公務員が必要です。

とはいえ、「厚真の現状ってどんななの?」「どんな人材が必要とされているの?」等、応募に際して疑問に思うことが多いはず。

そこで、今回は厚真町の現状とこれから必要な人材について、厚真町の防災教育に平成25年2月から関わり続けて頂いている定池祐季さん(東北大学災害科学国際研究所助教)にお伺いしました。

 

災害研究者の立場から考える、これからの厚真町に必要な人材

―震災直後の9月8日に厚真入りされてから、3カ月が経ちます。他の被災地と比べて厚真町の特徴はなんでしょうか?

定池:被災地の特徴は、その地域の状況だけで決まる訳ではなく、その当時の社会情勢も影響します。例えば1993年に北海道南西沖地震を経験した奥尻町は、離島という地理的な特徴に加えて、バブル崩壊直後だったので、国の財政的支援が比較的得やすい環境で、市民からの多くの支援も集まりました。その後の1995年の阪神・淡路大震災は、都市部に発生した直下型地震ということもあり、甚大な被害を目にして多くのボランティアが集まった(「ボランティア元年」)一方で、仮設住宅での孤独死のような痛ましい出来事もありました。2004年の新潟県中越地震は、人口減少社会・縮小社会の中で「地域の誇り」を取り戻すような、「数」の復興よりも「質」の復興に重点を置いていたという特徴があります。

厚真町の場合は、山間部ということもあり中越地震の被災地に学べることが多いと思います。一方で、これまでの町の取り組みが実り、震災直前まで社会増が続いていたようなことからも、今まで目指してきた質の良い田舎暮らし、という方向性や価値観が全て台無しになる訳ではありません。これまでのまちづくりの取り組みを大事にしつつ、従来からの課題も含めてポジティブに解決していくことが可能だとみています。そういう意味では、「新厚真町」というより「厚真町2.0」のような捉え方がしっくりくるような気がします。

厚真中学校での防災授業にて

―厚真町2.0という表現は面白いですね。

定池:課題についてもそうなのですが、今まで取り組んできたことを肯定的に捉えながら、未来に向かっていくことが大事だと思います。町であっても個人であっても、これまでやってきたことを否定するのはとても辛いことです。厚真町の場合は、町のあり方や目指す姿を根本から問い直すというよりは、大事なものは残しつつ今回の地震を契機に、より良い未来を目指すという取り組みかたが出来る位、基礎となる魅力や町の力が残っていると思います。

―他には何か厚真町の特徴はありますか

定池:新潟県中越地震の復興に携わった方々や、各地の被災地をみてきた知人によく言われるのは、「厚真町はいいね、大変だろうけど大丈夫」という言葉です。役場職員が悲観的で無いところや、社協やボランティア、外部の支援団体が、「俺が俺が!」という雰囲気では無く、被災者をサポートするチームとしてお互いを支え合えていることが要因だと思います。それと、厚真町の大きな特徴の一つは怒鳴り声を聞かないということです。発災後の混沌とした役場の中でも皆さん努めて冷静に、懸命に対応されていました。また、怒鳴り声が聞こえない理由の一つは、被災された町民の皆様の人柄もあると思います。役場を含む町民全体の雰囲気は震災後も変わらず穏やかで、落ち着きを取り戻すのも早かったと思います。

放課後子ども教室にて、防災スリッパづくりの様子

―外部から来られた方々にそういっていただけるのは嬉しいことです。

定池:厚真町役場の特徴という点でいえば、組織のタテ割り感が少ないのも印象的です。自分のところに来た問題が、自分の分野だけでは解決できないと分かればすぐに関係しそうな部署に繋ぐ。そういった組織内の素早い連携や、町民の困りごとに寄り添い、望ましい状態にするために主体的に考えるという姿勢は厚真町役場の良い特徴だと思います。

なぜ厚真町にそのような文化があるのか、今後じっくりと考えていきたいですが、人にしっかり投資し、育てて伸ばすという考え方が基本にあるような気がします。地震の前に知って驚いたのですが、職員の皆さんが自発的に研修先を選び、学びにいく為の旅費を、毎年予算化されていました。一見どこでも出来そうですが、組織として確固たる意志が無ければ続けていくことは難しいものです。

―一方で心配なことはありますか?

定池:職員の皆さんや町民の皆さんが、頑張りすぎる、我慢しすぎることが心配です。被災地でよくあることなのですが、頑張り屋さんだったり、優しい人ほど自分を後回しにしがちです。厚真町役場の皆さんが、どうしても無理しなければならない時があることは分かりますが、休みをしっかり取らなければ仕事をし続けることは出来ません。

―そういった意味ではやはり人員が足りないということでしょうか?

定池:災害時は、通常行っている業務の仕事量が増えますし、災害によって新たに生じる仕事が次々に飛び込んでくるので、どうしても人手は足りなくなります。一方で、今回の震災では復旧・復興の応援に来てくれる、長期派遣の職員の数が少ないと感じます。技術職の公務員が減少していることもありますが、災害規模を近年の派遣傾向を照らし合わせても、応援職員が少ないので、職員のみなさんが心配です。

それに対し厚真町は自力で職員を採用することで、組織の対応能力を高めようとしています。この動き自体はとてもポジティブだと思います。

―災害復旧が続く厚真町にはどういった人材が必要なのでしょうか

定池:良い意味で公務員らしくない人が良いかもしれません。公務員は法律に基づいた仕事をするので、法律や制度に関する知識はもちろん必要なのですが、自分の守備範囲に縛られて、目の前にいる町民を置き去りにしてしまっては意味がありません。災害時においては常時とは異なる課題や、問題に対応することが求められます。柔軟性を持ち、望ましい状態へと向かうために何をすべきか、多角的に考え状況判断することが大事だと思います。

―求められるものが多いですね(笑)

定池:もちろんいきなりそういった力が無くても良いと思います(笑)。大事なことは、視野を広く持ち、指示待ちでは無く自ら動くマインドを持っていること。そして、厚真の復興を見届ける気持ちを持っていることだと思います。

―厚真町はこれからどのようなステージに入っていくのでしょうか?

定池:本格的に復興ビジョンの作成、共有、実行というステージに入っていきます。町民と共に良い未来予想図を作っていく作業です。とても大事な作業になりますが、厚真町の皆さんならやり遂げられると思います。そういった意味では、元々厚真町役場には柔軟な考えを持つ方が多いですし、主体的に仕事に向き合っておられる方が多いと思いますので、新しい職員の皆さんは安心して役場というチームに参加されたら良いと思います。とにかく、「一緒にやるぞ!」という気持ちを強く持って厚真町に来られることが大事だと思います。

厚真町役場職員と同じ目線で考えてくださる定池さん

ご自身も地方公務員だったご経験を持たれている定池さん。災害研究者というだけでなく、自らも役場の仲間として関わってくださっていることを、言葉の端々から感じます。こんなに厚真を想ってくださってたんだな、と改めて感謝の気持ちを抱きました。

厚真町の復興はこれからが本番です。不安が全く無いと言ったら嘘になりますが、確かに悲観的な気持ちはないな、と気づかせてもらえた時間でした。仕事はきっと楽ではないけれど、厚真町役場に来てみませんか?一緒に厚真町の未来を作っていける仲間を、厚真町ローカルベンチャースクールでお待ちしております!

定池祐季

東北大学災害科学国際研究所・助教。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。北海道南西沖地震(1993年)を奥尻島で経験し、災害研究を志す。専門は災害社会学、地域社会学、防災教育。奥尻島、有珠山周辺地域、八重山地域などをフィールドに災害文化、災害伝承、防災教育に関する研究に取り組んでいる。2013年2月に実施した職員研修をきっかけに、2014年5月〜2017年3月まで、厚真町の防災アドバイザーを務めた繋がりを活かし、胆振東部地震の発災直後から厚真町の支援に携わっている。

厚真町役場ホームページ 職員募集(エントリーはこちらから 2019年1月11日(金)まで)
http://www.town.atsuma.lg.jp/office/politics/human_resources/syokuin_bosyu/h30ippandoboku/

持続可能なまちに向けて、 震災からの復興、新たなまちづくりに挑む、北海道厚真町(ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン[DRIVE])
https://drive.media/posts/22163

厚真町ローカルベンチャースクール2018 募集サイト
https://www.a-zero.co.jp/lvslll-atsuma-lvs

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