北海道

厚真町

あつまちょう

厚真町ローカルベンチャースクール再起動    今こそ、 未来の幸せを生み出していくチャレンジが必要なんです   

厚真町ローカルベンチャースクール(以下、LVS)の事務局をさせていただいているエーゼロ(株)代表の牧です。私が主に厚真町役場の方々から聞いた話や、現地でみてきたことを元に、なぜLVSを再起動するのか、そこで何を実現しようとしているのかみなさんにお伝えしたく、この原稿を書きました。

 

富里地区の土砂崩れの様子

本部へ 中村です。富里地区、中村と佐藤の家が流されてありません!!!
本部へ 中村です。中村と佐藤の家がありません・・・中村の家が・・・・・

9月6日午前3時すぎのあの大きな揺れから最初の朝陽を迎えようとしている時、中村さん(厚真町役場産業経済課)は、あるはずの家が土砂に流されて無くなっていることを、無線で何度も叫ぶように伝えていました。役場内の災害本部までは距離があり、無線が本部につながらないため、何度も何度も、何度も何度も・・・中村さんは叫んでいました。

富里に近い吉野地区を見に行っていた宮さん(厚真町役場産業経済課、林業、LVS担当)には、その無線が届いていました。宮さんは、胸が張り裂けそうな気持ちで無線を聞いていました。富里で土砂に流されたのが中村さんの実家だということはすぐに想像できました。そこには中村さんのお父さん、お母さん、おばあさんが住んでいました。

中村さんの無線を聞いている宮さんの目の前にも、残酷な風景が広がっていました。宮さんは林業担当として森を愛しその未来を信じて奮闘してきたというのに、目の前には崩れ去ったぐしゃぐしゃの森。そして崩れた落ちた森は、たくさんの家を押し流してしまっていて、その中には、宮さんの上司である中川理事の家もありました。

吉野地区の震災当時の様子

LVS中止の決定、そして再起動へ

9月10日、地震発生から4日後、安否不明だった36名全員の死亡が確認されました。中川理事も、9日未明に遺体で発見されました。残念ながら奇跡はおきませんでした。そしてその日に宮さんから「今年のLVSは中止したい。移住してきて欲しいと言える状況ではないと判断しました」という連絡がありました。

黙とうをささげる町長と厚真町役場職員の皆様

しかし、LVSは再び動き出します。

10月8日に宮さんから私に連絡がありました。「町長とも協議し、正式にローカルベンチャースクールを再起動することを決定しました。町の復興に向けて、圧倒的に人材が足りません。今こそ、挑戦者が必要であるという判断にいたりました。11月1日には再起動の告知を出せるようにしたいので、急ぎ準備を進めてください」

LVS再起動が決定する1週間前、宮坂町長から中川理事の思い出を聞かせていただく機会がありました。「中川理事とは、学年は違うけど同い年でね、長く役場で一緒にがんばってきた同志でもあった。東京農大を卒業して役場に入って、ずっと農業振興に尽力してこられた。農業で厚真町を元気にしたい、跡継ぎが戻ってきたくなるような農業を育てていきたいという夢を深夜まで一緒に語り合ってきた。大きな夢をいだきつつも、嘘をつかない人だった。言ったことをちゃんと実現する人だった。生きていたら、これからの復興の中心になってくれただろう。本当に残念だ。でも、中川さんと一緒に語り合った夢はまだ生きているし、諦めずに復興に向けて挑戦していくつもりだ。」町長は仰っていました。

宮さんからLVS再起動の連絡を受けた時、亡き中川理事のことが思い出されました。LVSの選考会でも、これから移住・起業しようとする人たちに、厳しさと同時に深い愛情をもって接しておられた姿を思い出します。厚真町を深く愛している中川理事だからこそ、これから厚真町の一員として何かに挑戦しようする移住者のことも大事にされていたのだと思います。今年のLVSには中川理事はいません。でも私たちには、中川理事と一緒に見てきた夢があります。厚真町からたくさんのチャレンジが生まれ連鎖反応をおこしていくことで、人口減少に歯止めがかかって、厚真町の地方創生が実現されていくという夢です。

LVSで発表者の話を聞かれている中川理事

しかし現実には、震災後、人口流出が加速してしまっています。家を失った人もたくさんおられるので、やむを得ないことです。まだ、仮設住宅への入居も始まったばかり。雪も降り始め、寒さが厳しさを増していくなかで、避難所での生活に耐えながらがんばっている方々もたくさんおられます。

LVSの主担当である宮さんは言っています。

「目の前にたくさんの不幸があるからこそ、未来の幸せを生み出していくチャレンジが必要なんです。まさに今、必要なんです。」

厚真町はこれから寒くなっていきます。降り積もる雪は、流れ出した土砂を覆い隠し、凄惨な風景を包み込むことでしょう。そして、だんだん、大きな地震が起きたことを世間は忘れて行ってしまうでしょう。しかし、物語が始まるのは、これからです。私たちはそう思っています。

私はローカルベンチャーというものは、その土地に染み込み蓄積している愛情とつながることで、強いエネルギーを内側から生み出し成長して行くと信じています。自分の心の底から湧き上がる想いを大切にして、心を開くことで、自然とその土地からエネルギーをもらって成長していくことができる。ぜひ感じて欲しいのです。厚真町の大地に宿る愛情を。そこで懸命に生きた人たちがいることを。

その上で、あなたがあなたの夢を大切にするからこそ、その大地とつながります。厚真町の大地は、そのエネルギーを感じて受け取って、その人の夢を実現していく人が現れることを待っています。あなたがあなたの夢をしっかり描き、実現していく。そして誰かの夢と重ねり連鎖して夢はさらに育っていく。中川理事が描いた夢ともつながっていく。その積み重ねで、厚真町に幸せが増えていく。そういう物語が、これから始まっていきます。

厚真町ローカルベンチャースクール2018では、「厚真町で未来の幸せを生み出していく物語」に参画したいという人を募集しています。

主担当の宮さん

 

厚真町ローカルベンチャースクール2019 WEBサイト(エントリーはこちらから)
https://www.a-zero.co.jp/lvslll-atsuma-lvs

一度は中止にした厚真町ローカルベンチャースクール。 やはり再起動することにしました。(厚真町役場 宮さんの記事)
http://throughme.jp/idomu_atsuma_lvs2018restart/

【厚真町の魅力をそのまんま伝える、コミュニティーサイト「あつまんま」】
http://atsumamma.jp/