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地域の担い手に出会うインターンシップで感じた「厚真で働き、暮らす魅力」

「僕らの活動は、なくても世界は回るかもしれない。でも、僕らがやらなければ、町は衰退してしまう」。そんな強い思いで地域の暮らしを守り、町の活性化に力を注ぐ厚真町商工会青年部。彼らが主催した「“仕事“と“暮らし“がつながるインターンシップ」に参加した大学生が感じた「厚真で働き、暮らす魅力」とは。2日間にわたる活動に密着しました。

 

リアルな田舎での働き方と暮らしを体験する2日間

 厚真町内の20〜40代の青年経営者・後継者で作る厚真町商工会青年部。胆振管内の市町村の中でも人数が多い32名が所属し、業種の垣根を超えて互いの経営や町の発展のために取り組んでいます。商工会青年部の主な活動としては、あつま田舎まつりへの出店や商店街イルミネーションなど町内のイベントのほか、起業家育成や事業継承、女性の社会進出支援など多岐に渡ります。2017年10月に行われた青年部創立50周年記念事業では、町外の若者に向けたインターンシップを実施。地元企業の職業体験と地域活動を通して、よりリアルな田舎での働き方や仲間づくりを体感してもらう機会となりました。

 インターンシップに参加したひとり、札幌大谷大学社会学部地域社会学科4年生の増子航平さんは札幌市出身。地方の地域で起業することを目指しています。

「これまで人生の目標ややりたいこともなく、大学では何となく観光ゼミに入りました。でも、ゼミの調査で地方の町に足を運び、都会では感じることのなかった人の温かさに触れたり、地域の課題を目の当たりにするようになって、自分できることは何だろうと考えるようになりました。」(増子さん)

ゼミの枠を越えて個人的にも地域とつながり始めた増子さんは、「今の僕はまだ地域の表面をなでているだけでしかありません」と言います。赴いた地域で目の当たりにした、仕事の少なさや故郷を離れる若者、住民同士の意識の乖離など、課題を知る中で、インターンシップに参加した理由をこう話しました。

「今回のインターンシップに参加したのは、地域を牽引する人たちが、どのように活動しているか知るチャンスだと思ったからです。厚真ならではの人の関係性やリアルな生活、どうやって地域のお金が動いているのかなど、ありのままの姿を知りたいと思いました。」(増子さん)

 

町の緑化も活性化も、僕らがやらなきゃ町が活力を失う

 インターン当日、増子さんは、商工会青年部メンバー2名の仕事の現場を訪れ、職業体験をしました。

はじめに訪れたのは、青年部20代目部長であり株式会社金谷造園2代目 金谷泰央さんの仕事場。先代の頃から町内や近隣市町村の緑化を手掛け、町の景観を守り続けてきた金谷造園。この日は、町内の公園で造園業歴35年のベテラン職人さんたちとともに、町の木である「コブシ」を植える作業を手伝いました。

植樹した木の支柱を結びつける「男結び(綾掛けいぼ結び)」に挑戦。職人さんからのマンツーマンで教わり、何とか合格点をもらいました。

職人さん達は、「この仕事で大切なのは、手を抜かず、誰から見ても綺麗と思ってもらえるように仕上げること。そうじゃないと、次の仕事は来ないから」と言います。

金谷さんは、増子さんに仕事の心得や商工会の存在についてこう話しました。

 

教えてもらった職人さんと金谷さん(右)

「家業を継いだのは、10年前の社会人3年目。当時東京の広告代理店で営業をしてたけど、先代である父の急死がきっかけで。その時はまだ家業を継ぐとは思っていなかったけど、造園業に向き合って、気持ちが変わったんです。今手掛ける仕事のほとんどは、父親が作ってきたもの。今更ながら親の偉大さや造園業が地域に果たす役割、どんなに大切な仕事かを身に染みて感じています。

それから、商工会の仲間に出会えたことも、厚真に根を下ろそうと思えた理由です。会社を継いだ時、造園の技術は職人さんたちから教わったけど、経営について教えてくれる人は会社にいなかった。その時、助けてくれたのが商工会の先輩や仲間たち。町の人たち皆に育ててもらった感じです。」(金谷さん)

 今、金谷さんは自分を迎え入れてくれた商工会青年部で先頭に立ち、地域の担い手たちと共に町の活性化の中心となって活躍しています。

「青年部の活動も、地域を緑化させる造園業と同じだと思っていて。なくても世界は回るけど、なければ町の活力は失われて、衰退していってしまう。だから僕らがやらなきゃいけない。

厚真は仲間を作りやすい地域だと思います。誰でも受け入れる気質があるんですよね。青年部も町内外出身関わらずさまざまな人を受け入れる風土があります。移住者も増えて、昨年のローカルベンチャースクールで起業した佐藤さんも、その1人。もし厚真で仲間を作りたいと思っている人がいれば、どうか怖がらず飛び込んでみてほしい。僕たちが受け止めますよ。」(金谷さん)

 

仕事がなければつくればいい。厚真から産業を盛り上げる

 次に増子さんが訪れたのは、自動車板金塗装や新車・中古車の輸入販売を手掛ける株式会社オートリペアナスノ。代表の那須野恭佑さんは、創業50年になる先代の自動車整備工場を引き継ぐ若き経営者。厚真町の企業の中で最も従業員の平均年齢が若い企業です。

 増子さんは、会社の工場で乗用車のタイヤ交換を体験しました。

タイヤ交換は、自己流だと事故が起こることもある重要な作業。増子さんと同世代のスタッフが基本の手順を教えてくれました。

体験を通して、仕事に対する信念を持ち、生き生きと働く自分と同世代の若者が地域にいることの事実が新鮮に写りました。なぜ厚真でそうやって仕事に向き合えるのか、那須野さんに聞いてみました。

「自動車業界は、言葉づかいをはじめよくない職場環境もまだ残っているのですが、それを良しとせず、働きたいと思える会社の風土を作ってきました。スタッフには笑顔で仕事をしてもらいたいし、気持ちよく仕事ができる環境が整えば、作業もぐんと早くなります。すごい相乗効果ですよね。

 私は、自分の夢をあえて言葉にして、周りに伝えます。有言実行しないと格好悪い。だから自分で行動するようになるんですよね。そうやって前を向いて取り組んでいると、スタッフの中にも『社長のように起業したい、新しいことをやってみたい』と言ってくれる人も出てきています。」

若い社員が多いオートリペアナスノのスタッフと那須野さん(右)

さらに那須野さんは、今後の事業の方向性や、厚真を働きたくなる場所として発展させるための構想を語ります。

「多くの人が地方で働くことに不安を感じたり、疑問を持っているのかもしれません。私は厚真にUターンしていて、何かやるなら札幌でも苫小牧でもなく、厚真でやりたかった。都市でなくてもできることが、今はどんどん増えていると思います。

厚真の人たちは、ある程度のモノやサービスがほしいと近郊の都市まで出かけるのが現状です。でもわざわざ都市に足を運ぶなら、厚真で必要な仕事を作ればいい。厚真は土地も安いし、空港も近い。起業する上でも条件が良い地域だと思います。

日本の自動車業界は、高齢化が進んで、低迷期を迎えていますが、海外に目を向ければまだまだ伸びしろが期待できる。我々も輸入事業に注力していて、海外と対等に仕事ができるような、新しい価値観を持った人材を求めています。こうやって、若い感覚で地方から産業を盛り上げることもできるはずです。」

 

「外もの」から「仲間」になった日

 インターンシップ2日目。増子さんは、商工会青年部が出展する「あつま特産市」を体験するため、隣町の苫小牧市に向かいました。厚真産のお米や野菜、加工品などを店頭に立ってPRするこの活動は、毎年町内の3青年部(商工会、農協、漁協)がタッグを組む「あつま新鮮組」の事業の一つ。地域の“つながり”をより体験してもらうためインターンの日程をあえて特産市に合わせていました。「地域で働き、暮らすためには、人とのつながりが貴重な財産です。地域活動は町内外のつながりを作れる絶好の機会。地域の魅力を発信するためにも、地域について知れる機会です。」と金谷さんは話します。

増子さんは前日の夜の交流会で味わった「あつまジンギスカン」をPR

 子ども連れの家族からお年寄りまで、たくさんの来場者と交流し、厚真の魅力をPRした増子さん。短い時間の中でも充実そうな表情です。この活動が、増子さんと厚真の人たちの関係を「外もの」から「仲間」へ近づけてくれたようにも感じられます。

 

2日間のプログラムを振り返り、増子さんは「厚真町は、初めて移住をイメージできた町になりました」と話しました。

「移住した人が地元の人のように町に溶け込んでいる姿や、青年部をはじめ町の皆さんが地元への熱い思いを持って生き生きと暮らしているようすを見て、自分もこんなコミュニティにいられたらどんなに楽しいだろうかと思いました。今回の職業体験を通して普段の生活で意識していなかった“町の仕事”に触れ、表立って目立つところだけでなく、見えないところにも町を支える誰かの努力があることに気付きました。そういった影の功労者の皆さんへ感謝の気持ちを忘れないようにしたいです。

北海道を盛り上げるためにも道内の地方で起業することが僕の夢ですが、周囲には『どうしてわざわざ何もない所に行くんだ』と言われたり、理解してもらえないことも多いです。でも、厚真の人たちに出会えて、自分の夢に向かって進んでいいんだとあらためて自信が持てました。『またここに帰ってきてね』と言ってくれた皆さんの思いが嬉しかったです。必ずまた厚真に帰ります。」(増子さん)

商工会青年部のメンバーと

地域の担い手たちの想いに触れ、参加者自らの体でその熱量を感じることができたインターンシップ。商工会青年部にとっても、自分たちの町へ興味や理解を示してくれる若者の存在が、厚真をさらに盛り上げて行くための活力になったようです。町の外や中にかかわらず、これからの時代を作る若者たちの交流が、いつの日か地域の大きな力となるのではないか。そんな、期待を感じさせてくれました。

増子さんが植えたコブシの花言葉は「友情」「友愛」「信頼」、そして「歓迎」。握りしめた拳のようなつぼみが完全に開いたときの花の姿を、両手を広げて喜び、迎えるときのようすに例えたのだとか。厚真人(あつまびと)を象徴したようなコブシの花を、町の人たちと共に見る日がきっと来る。その時はきっと、「お帰り」と言って迎えてくれるのでしょう。

厚真には帰りたくなる場所がある。そして、会いたくなる人たちがいます。

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