エーゼロのCTO兼CQOに就任する佐藤道明さんが目指すのは、「一人一人が本質の自分に近づいていける世界」

地域の可能性発掘と事業化・具現化に取り組むエーゼロ株式会社(以下:エーゼロ)に2022年4月からCTO(Chief Technology Officer)兼CQO(Chief Question Officer)として就任することになった佐藤道明さん。
リクルートの経営システム部時代からITの世界で最前線を走られてきて、いくつもの事業を成功させてきた連続起業家です。
2005年からは株式会社Hanoi Advanced Lab(HAL)を立ち上げ、システム開発などを手掛けられてきました。

体調を崩されたことが大きな転機となり、HALの開発サービスを手放されたタイミングの今、なぜ西粟倉に拠点を移しエーゼロへの参画を決意されたか。
CTO、CQOとはどのような役割なのか。
その経緯と想い、実現したい未来をエーゼロ代表の牧大介がインタビューアーとなり取材しました。

 

手放すプロセスをくれた病気は、ギフトだった

牧:一昨年、道明さんが病気されたことはとっても大きな出来事だったと思います。まず、その当時のことを差し支えない範囲で伺わせていただけますか。

佐藤さん(以下敬称略):気が付いたら、もう眠れなくなったんですよね。1カ月ぐらい眠れなかったかな。
うつらうつらしてたんだろうけど、寝た気分にはなれなくて。睡眠薬も処方されて飲んでたんだけど、入眠しても15分とかですぐ起きてしまう。

牧:まず寝れないということは身体的に相当しんどいですね。

佐藤:しんどかったですね。寝れない期間が続くと、体重も一気に落ちます。
最初は頑張っていっぱい食べるんですけど、そのうち胃が動かなくなって食べられなくなるんですよ。ご飯が喉を通らなくなる。
結果10キロぐらい痩せてしまいました。
ある時鏡に写った自分を見ると、もう筋肉がなく痩せこけた自分の体がありました。

その時やっぱり……何だろうな。
なぜ自分は生まれてきたのか、この命を何に使うかっていうことを問われたような気がしました。
今までは、やれるようになりたいとか、やれることはもっと上手になりたいとか、そういうのを目指してやってきたんですよね。
経済的にうまくいくとか、みんなに喜んでもらうとか、わかりやすいモノサシもあったんだけど、それは自分のモノサシじゃないということに気づいて。
それでどうしようかなっていうのを考えた時に、HALの開発はやめようと思ったんですよね。

牧:「ビジネスマンとして起業家として、また投資家としても成功されてる佐藤道明さん」というイメージは僕の中でもありました。でも、それは道明さん自身のモノサシというよりは、世間から与えられたモノサシというところはあったんですか。

佐藤:起業もサービスの立ち上げも、その時は自分で決めてやっているのでいいのですが、だんだんと自分のモノサシではないものもはいってくるというか。うっすらとした違和感みたいものかな??
でも、やっぱりHALは大好きなチームだし、みんな仲間だから、なかなか手放せないんですよね。

牧:HALという会社と仲間自体は本当にすごく苦労もされながら、エネルギーを注いでつくり上げてこられたものですよね。
でも、それをいったん手放すという決断をされた。

佐藤:そう。
居心地のいい環境を1回手放さないと、新しい何かがつかめないのかなという直感みたいなものはありました。

牧:今あるものを手放そうっていう気持ちになったのは、とてつもない苦しさがあったということでしょうか。

佐藤:そうですね。病気は苦しかったですね。
でも苦しかったからそうしたというよりも、もし?よくなったら新しい旅を始めようって思ったんです。
それで開発サービスをやめるって決めて、準備をして、半年ぐらいかけて、サービスを停止しました。

牧:HALを休止させるというのはまた大変な作業だったんじゃないかなと思いますが、どうでしたか。

佐藤:それが、すごく大変かなと思ってたんですけど、全然大変じゃなかった。
大変だと思いたかったのだと思います。
でもHALがやらなくても他社でできるし、仲間のみんなもHALじゃなくてもいっぱい仕事があって転職や独立もすぐできたし、給料も上がっています。笑
びっくりするぐらいスムーズでした。
少し寂しいぐらい。
でも嬉しかったかな。やっぱり良かったと思う。本当に。

それで自分については、これから何をやろうかな?とか、自分は何をしたいだろうか?というような探す旅はしないと決めたんですよね。
出会いとか、感じるもので歩んでいこうと決めたので。

牧:探さないっていうことを決めるというのは、覚悟がいることだと思います。
自分の居場所や役割がないと不安だから、探してしまうのが人間という気もするんですけど、そこで探さないって決められたのは何故でしょうか。

佐藤:なんででしょうね。でも、今までどこか辿り着く場所を決めて、そこからルートを割り出して、PDCA回しながらルートを進んでいくみたいなのをずっとやってきたけど、そういうのやめようと思って。
今歩いてるこの道を味わうというか。それをちょっとやってみたいって思ってたんですね。きっとね。

牧:なるほど。
道明さんと東京でお会いしたのは2021年12月だったかな。
タイミング的にはHALを休止されて、スタッフの人たちも転職していかれた後でしょうか。

佐藤:そう。もう8カ月とか経ってましたね。当時は何もしてなくて、まず処方されていた抗うつ薬を早くやめるために体を動かしたり、自然の中に入ったりしていました。
12月に牧さんとお会いした時はもう本当に元気になってた時ですね。

牧:病気の最中は大変だったと思うんですけど、病気になったことは道明さんにとってどういう出来事だったんでしょうか。

佐藤:本当にギフトだったと思います。
病気にならないと手放せなかっただろうし、心の底で誰かに「病気にしてやるよ」と言われたような気もします。

CTO兼CQOを通じて見たい世界

牧:12月、僕の方はふるさと納税制度を使って、森や自然に長期的な視点で投資をしていける仕掛けや、再生可能エネルギーを使った電気の返礼品化とか、そういったところに事業の未来を感じていたけれど、どうやってそれを形にしていっていいのか模索していました。

特にITやデジタルの領域が疎過ぎて、そもそも誰に相談しながらやっていけばいいのか分からない中で、一度道明さんに相談したんですよね。

その時に道明さんが、まずエンジニアのチームが必要と言って下さって。「でもどうやって、エンジニアチームは作っていけばいいでしょうか」って尋ねたら「それはやっぱりちゃんとCTO(「Chief Technology Officer」の略称で、「最高技術責任者」の意味)として中心になれる人がいないといけないよね」っていう話で。

「じゃあそのCTOになる人はどうやって探せばいいんですかね?」って聞いた時に、「やろうか」って言ってくださって。
マジですか!と本当に驚きました。
まさか、道明さんに参画してもらって一緒にやれるというのはまったく想定外でしたから。

でもその時、道明さんとの対話で夢が膨らんでいく感じ、未来の解像度がぐっと上がるような感触と、自分自身のエネルギーも上がっていくような心地良さも感じてました。
もう理屈ではなく、感覚的に一緒にやれたらすごくいいなって思いました。
あの時、道明さんは、どうしてそういうふうに思っていただけたのかなって。

佐藤:どうしてかっていうと、たぶん僕も分からなくて。
「じゃあCTOやりましょうか」って言った時に、牧さんが「ええ、本当ですか。でも道明さん、せっかく休みが取れるようになったのにいいんですか」って言うから、「いや確かに僕も嫌なんですけど、なんでやりましょうかって言ってるか分からないんですけど、やります」って言ったのが本当で。

牧:直前の会話で、まっさらになって、やらないといけないことがない中で、非常にいい感じで日々、今を大事にしながら今生きてるんだっていう話をしていただいたので、CTOをやるのはとても矛盾してるかもしれない。

佐藤:矛盾してるんですよ。左脳的にはきっと、何言ってんだって感じだったんですよね。
もうちょっとゆっくりすれば良かったかもしれないけど、でも、なんかやっぱり心の底の方で「やりな」って言ってたんで。
あの時感じたのは、10年前に牧さんに初めて会った時に感じたすごくいいエネルギーでした。

牧:僕は森とか自然とか、資本主義の世界の中では生き残れそうにないものをなんとか存続させたい欲求を持ちながら、それでもビジネスにならないといけないって思ってやってきています。
これまで、どうやればそれが叶えられるかわからない、それでも近づけそうな何かをやりながら食いつないで生きているみたいな感覚があって。
でも、こうすれば本当に自分が形にしたいと思うところに行ける手掛かりをちょうど僕の中でもつかめ始めていた時期がその頃でしたね。

今回、道明さんにはCTOとしてエーゼロのデジタル領域を深めていく、自社事業のデジタル化、DX化、更には地域自体のDX化を進めていくことに関わっていただくと思っています。

併せて今回CTO兼CQO(「Chief Question Officer」の略称。エーゼロ独自の役職)になっていただくっていうことになりました。
道明さんとの対話では、僕だけじゃなくて社員の人たちも常に本質にしっかり立ち返ってそれを深めていくような問いをたくさん道明さんからもらえるので、この役割の提案もさせていただきました。

佐藤:すごいバッチリ。
僕自身、その人が生まれながらに持っている何か、その人が見たい世界、ビジョンみたいなものに近づいていく時に、いろいろな力がすごく湧いてきたり、周りの人が自然と集まってくるのを見てきています。
そして、その人の中に答えと目指す世界があると信じたい自分もいるので、なるべく質問をしたいなとは思っています。
だから、そういう意味でもチーフ・クエスチョン・オフィサーってなったら、質問をするってことになるから、僕のありたい姿に僕自身も近づける。

牧:道明さんが今、CTO兼CQOとして、これからどんなことをしていきたいなとか、考えられていることがあれば教えてください。

佐藤:このエーゼロと西粟倉を通して、自分が見たい世界が現れてくるのではと思っています。
それは、1人1人がそれぞれ目指す世界が明確に現れてきて、そこに向けて歩いてる姿が見てみたい世界。そういうのが見たいなって思い続けることをしようかと思います。

あとCTOとしては、デジタル庁が言っているデジタル田園都市構想を形にする最前線を見てみたいというのがあります。

それは人を管理するツールではなくて、1人1人が本質の自分に近づけるツールの1つとしてデジタルを使えるようになるといいなと思っていて、その可能性があるなっていうふうに感じて楽しみにしています。

牧:道明さんはデジタルのできることや可能性を僕の想像をはるかに超えてイメージを持たれていると思います。
そういう意味で、道明さんから見てローカルというのはこれからデジタルが入っていく余白があるし、そのデジタルの力っていうのは、より人を幸せにしていくっていう可能性が感じられるということなのかなと思って聞いていました。

CTOとして、CQOとして、本当に1人1人がより幸せになっていくような、そんな地域の未来を一緒につくっていけるかもしれないなというか、そうしたいなっていうことを改めて思いました。
改めてどうぞよろしくお願いします。

佐藤:よろしくお願いします。

※撮影時のみマスクを外していただきました。

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