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にしあわくら

西粟倉で起業しませんか:赤字施設なら、タダで貸した方がずっといい。村でお店をやりたいテナント募集

ローカルベンチャーで知られる西粟倉村。岡山と鳥取の県境にあるこの村は、鳥取観光などの休憩スポットとして、バスツアーなどが多く訪れるエリアでもあります。しかし、国道373号線沿いにある村内施設「あわくら旬の里」では、年間6万人の人が訪れるにも関わらず、創業以来16年も赤字経営が続いています。なんとか赤字経営を改革したい、この施設を活用して村を盛り上げてくれる人を募集したい…そんな思いを、「赤字施設再建」というテーマを掲げた、村役場の産業観光課長・上山さんが話します。
 

小さな村だからこそ、公務員には民間マインドが必要だ

– 村内の各施設の赤字削減や、地域活性の企画戦略を行い、一部では“スーパー公務員”とも呼ばれる上山さん。西粟倉村出身とお聞きしましたが、どういう過程で役場内で民間的なチャレンジマインドを持たれたのか、気になります。

上山:二男ですし、本当は村に帰ってくる予定はなかったんです。高校・大学と村の外に出ていたし、よその公務員試験にも受かっていたんで、そこに就職するはずでした。でも親父に「もし断るとしても、西粟倉も受けてみにゃいけんよ」と言われて、やってみたら受かった。村役場よりももっと難しい試験の勉強をしていましたからね。断ろうと思ったけど、おばあちゃんが目に涙を浮かべて1カ月説得するんで、根負けしました。

村に戻ってきたら、「じゃあ、すぐあわくら荘に行ってくれ」と言われて。宿があるのは知っていたけど、役場が運営に関わっていることもそれまで知りませんでした。

– 役場に入ってすぐ、「国民宿舎 あわくら荘」に関わることになった。村内で最も大きい、観光の要となってきた宿泊施設ですね。
 

上山:当時役場からは2人出向していたんですが、新卒なのにいきなり経理の事務長になっちゃって。口やかましいおばちゃんたちや板前さんの相手を、6年ほどしました。その間に、結婚式場をあわくら荘の中に作ったりもして、「村で結婚式できますよ」と営業もして。年間で50組ほどの結婚式も行ってましたね。

で、ようやく役場に戻ってきたと思ったら、「ドライブインレストセンターあわくらんどが出来るから行け」と。そこの立ち上げを3~4年やっていたら、「あわくら荘の経営のてこ入れをしてくれ」と言われて、あわくら荘に戻って。人件費が高かったので、スタッフを削減したりしながらどうにか赤字を減らして。合計15年くらいは、そういう出向の仕事をしていました。だから、そもそも公務員はあんまりしてないですね(笑)

– 儲けようとか赤字をどうにかしなきゃとか、民間的なマインドを持たれる役場職員は、どこの地方でも少ないと感じます。でも本当は、そういう感覚をもっと公務員が持ってもいいですよね。

上山:「公務員が商売をしてもダメ、儲けられるのは民間の人」みたいな発想は、西粟倉にもまだまだありますよ。でもね、僕は公務員でも儲けられると思ってるし、出向してビジネスの経験を積むといいと思う。特に小さな地域は、絶対にそう。

豊富に民間の人たちがいる地域なら「稼ぐのは民間」と役割を分けてもいいけど、この村は1,500人しかいない。自分で言うのもなんですけど、公務員の事務的な能力って、地域の中で高いと思うんです。公務員は、民間的なマインドを鍛えられてないだけでビジネススキルは高く、小さな村の中で、大きな戦力になるポテンシャルがあるんですよ。
 

16年間赤字経営を続けてきた施設

– 今回は、道の駅の隣にある赤字施設「あわくら旬の里」を活用していける方を求めていると聞きました。もともと、この村で道の駅に続き、複数の施設をつくった経緯はなんでしょうか。

上山:ドライブインをつくろうという構想自体は、昭和終盤に始まったものです。その頃に新トンネルが出来たこともあり、兵庫から岡山を経由して鳥取へと行くときに、積雪などの影響を受けづらい国道373号線がよく利用されるようになりました。でも、ツアーバスとかが休む場所がなかったので、373号線沿いにそういった場所をつくろうと、1990年にオープンしたのが「レストセンターあわくらんど」です。

– 全国的に「道の駅」制度ができたのは1993年という中、先駆けとなる取り組みが西粟倉で起きていたんですね。
 

上山:鳥取砂丘などを観光するための休憩地としてもよく利用され、当時は売上もかなりよかったです。その中で、「せっかくだから村の特産品を売りたいね」って話が持ち上がって、当初は4,000万円程でこんにゃくや農産物の加工工場を隣に置こう、という計画だったようです。ところが国に相談に行ったところ、1994年のGATT(関税及び貿易に対する一般協定)で農産物の自由化が始まったこともあり、補助金を大量につけてくれて、レストランもあわせた4億円規模の大きな施設に、あっという間になってしまって。

当時、私は財政担当者だったので、「新しく大きな施設を作っても、隣にある既存施設と売上が分散されて、赤字を誘発してしまいます」という話はしたんです。用途も似通っていますしね。でもやっぱり補助金の持つパワーって大きくて、そのままあれよあれよと工事が始まってしまった。そうして1999年に「あわくら旬の里」が開業しました。でも、今まで一度も黒字化したことがないんです。

– 「旬の里」は10~15時でバイキングレストランなどを運営していますが、冬季の暖房費や施設維持費、スタッフの人件費などが売上よりも膨大にかかっている。この施設で赤字を出していくと、他の施設の利益とも食い合いになってしまうわけですよね。

上山:そうです。そんな中で、村が合併するかどうかという話になった。2004年、合併しない方向で話がまとまる中で、2005年「森の村 振興公社」という財団法人の事務局長として、役場から出向を命じられました。「道の駅あわくらんど」、「あわくら旬の里」、「国民宿舎あわくら荘」と温泉施設の「湯~とぴあ 黄金泉」、この4施設の経営管理をするというものです。全部の施設を合計すると約7,000万円の赤字になっていました。

– 赤字施設とわかっているところの立て直しに行くというのは、結構大変ですよね。

上山:まあ慣れているというか、立ち上げとか経営不振とか、困ったときしか「行ってこい」ってならないですからね(笑) それに、大変だけど現場に入ってみると、結構面白いんですよ。やったことに対する数字がちゃんと出てくるから。それは役場とは違う楽しさですし、苦にはならなかったです。ピークの時は、2,000万円くらいは全体の赤字をカットできたと思います。
 

ただやっぱり、よりよく変えていこうと思っても、うまく続かないんですね。それは三セクの弱さかもしれない。どこかに自分たちが経営しているというより「頼まれて管理している」という意識がある。本当は、事業って自分たちが主体となってリスクをとりながら顧客のニーズに応え、より良いサービスと商品を提供しながら儲けていくものだと思うんですけど…。

たとえば、道の駅にある野菜売り場は、地元でつくられたものではなく市場から調達した野菜や果物が多く並んでいるんです。多くのお客様に対応するには量が必要なのでこの方法が手間がかからず粗利も高いんですが、地元の農家さんの売り場面積が落ちて出荷者数や出荷量がさがる。利用者のニーズは、市場から大量に調達したものではなく、少量でも地元ならではのもの、価値があると感じられるものが欲しい。そこにミスマッチが起きていく。そうしていくと、店舗ならではの魅力がなくなっちゃう。あわくら旬の里は、魅力が落ちてしまったため、利用者が減り、「人が来ないから経費を抑えよう、営業時間を短縮しましょう」と負のループに入り、慢性的な赤字の状態となっています。

– 人件費等を削りながら、苦しい運営を続けている。「旬の里」は、一時閉鎖を行ったり、撤退するかどうかの検討も、かなり行ってきたと聞いています。
 

上山:4年前に「この施設は続けていけるのか」と外部のコンサルも入れて検討しましたが、「やっぱりこれは無理です」という結果が、数値的にも出てしまった。でも村で議論した結果、「お年寄りも安く食べられたのに、閉めたら寂しい」「地域の人の雇用にもなるのに」という意見なんかも出て再開し、民間に受託管理を委託したが、今も赤字のまま継続しているという、そういう施設なんです。

 

施設の価値を再発見してくれるテナントを応援したい

– 今は民間に「旬の里」の指定管理をお願いしていますが、本年度で契約期間も終わり、来年度からの体制を検討している中での、今回のテナント募集ですね。

上山:隣接する「道の駅 あわくらんど」ともつなげた形で活用できるよう、施設周辺の整備を進めています。観光ツアーのバスなども停まりやすくなりますし、より多くの人が集まりやすくなっていくと思います。だから、あわくら旬の里の新しい価値を再発見して活用していきたい、できれば赤字も減らしたいと知恵を絞っているところです。その新しい取り組みの中で、ローカルベンチャースクールに来るような人の力を借りられたらと考えています。

テナント料は、これから具体的な検討を行いますが、村としても新しい価値の再発見のためのチャレンジとしてしばらくは無料でいけたらいいなと思っています。ベンチャーの皆さんも自分たちで売上をあげて食べてられるかチャレンジしてほしい。
 

– 私も施設を見学させていただきましたが、いろいろな活用が見込まれる、立派な施設ですよね。ベーカリーや野菜売り場などはありますが、まだ空いているスペースや設備もたくさんありました。

上山:村の入り口となる、1番来客が多いところでもあるんですよね。体験観光などを行ったり、村の特産品や雑貨のセレクトショップなんかもいいと思うんですよ。ショールームで家具を見て「じゃあ村の奥の工房にも行ってみようかな」とか、そういう動きが起きてほしい。あの場で、西粟倉の想いや良さをもっと発信していければ、西粟倉全体にとっていいかなと思うんです。

飲食や加工などをやりたい方にとっても、村内ではかなり豪華な設備をそろえていると思います。急速冷凍機や真空包装機などもあります。この設備を見てみて、「こういう風に使ったらいいんじゃない?」っていう提案をしてくださる方、「これがやりたいんだ」というのを持ってきてくださる方が、村に来てくれるといいなと思っています。

 

– 大家さんとして、テナントをみなさんに貸していくスタイルをとるわけですね。カフェとかをやりたい方は、初期投資や集客が大変なので、すでに一定の集客がある施設を、最初だけでも無料で貸していただけるというのは、魅力的だと思います。

上山:ただ売上だけを追うというか、コンビニとかチェーン店・商店に無料でお貸しするというつもりはなくて、村全体の活性や施設全体の活性につながるような魅力的な取り組みであれば、ぜひ私たちも協力したい。それで西粟倉の魅力が増えたり、移住してくださる方が増えたり、少しでも赤字が削減できるなら、スペースが遊んでいるよりはずっといいですから。

– 最初、「赤字施設再建」というテーマを見たときに、結構ハードルが高い話だなと思いましたが、「施設をどう使えるか、価値を再発見してくれるテナントを探したい」ということなんですね。

上山:そういう素敵なお店や取り組みが2つ3つできると、この村はぐっと変われると思うんです。別に新しく移住してくる方じゃなくても、村内のベンチャーさんに「使えるならお店を出したい」と手を挙げてもらっても嬉しいです。いま、西粟倉で作られた家具、おもちゃ、木工加工品、染め物や帽子とかのプロダクトを展示販売するショールームを作ったり、元湯やクラシカさんなどの宿にご案内したり、ウナギやジビエも含めて既にあるローカルベンチャーのハブになるような事業も面白いと思います。

– グルグルリパブリックで紹介しているような村の取り組みやプロダクトを、もっと知っていただける場所が作れたらいいですよね。三セク、指定管理と経験してきて、改めて、「なにかやりたい」という想いを持つ人やローカルベンチャーと組みながら、全体を盛り上げていくタイミングに来ています。

上山:やっぱり、「役場から委託されてやってます」じゃなく、自分から「これがやりたい」っていうのが大事だと思うんです。「言われたからやります」じゃなくて、「自分のやりたいことをリスクとって一生懸命やります」という人たちを、全力で支えていきたいですね。
 

西粟倉ローカルベンチャースクール2016

http://guruguru.jp/nishihour/lvs