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木を伐る林業作業員、募集。西粟倉の美しい森林を育て、未来を担う子どもたちに受け継いでいきませんか

「森から子供の笑顔まで」を理念に、保育園向けの家具や遊具の製造・販売を手がける木の里工房 木薫(もっくん)が林業作業員を募集します。仕事内容は、「木を伐る」こと。言葉にすれば一言で終わるその仕事が、いかに奥深いものであるか。未経験から林業の世界に入り、20年にわたって山と向き合い続けてきた木薫社長・國里さんの歩みを辿ると、その全貌が見えてきます。

 

山を何とかするには、今、自分がやるしかない

1995年1月。阪神淡路大震災のあったその月に大阪から西粟倉へUターンすることを決めた國里さん。「組合やから間違いないやろ」という母の勧めもあって森林組合で働くことになります。

森林組合の組合長をされていたおじいさんの教えを受けて育ったという國里さんですが、林業への興味はゼロ。働き始めるまで、何をしているところなのかさえ知らなかったと言います。望んで足を踏み入れたわけではない林業の世界。しかしその出会いが、後に國里さんと西粟倉の未来を変えていくことになります。

國里:林業は職人の世界です。新人の言うことなんて、誰も聞いてくれません。事務方として採用されたものの、はじめの1年はひたすら現場の下仕事をしました。草を刈ったり、掃除をしたり…。当時は「早く5時にならんかなあ」とばかり思っていました。そんな私が林業と真剣に向き合うようになったのは、組合に入って3年目。間伐材を搬出する作業道の計画を任されていたときのことです。

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「國里くん、木の価格は、どうやったら上がるんやろう?」ある山主さんから、不意にこんな質問を投げかけられたことがありました。「無理じゃないですか」。山主さんの問いに対して、私はそう答えました。木材の立法単価は1980年をピークに、今はその4分の1程度にまで下落を続けています。当時はその真っ只中で、時の流れに身を任すしかないと思っていました。

「そうか、無理か…」。山主さんは小さくそう呟き、黙って山の方に目を向けられました。その山主さんは、村の中でも山づくりにとりわけ熱心な方でした。若いときから山を育てることで、家族を育ててこられた。

そんな大先輩に対して、自分はなんてバカなことを言ってしまったんだろう。沈黙の中、私は軽はずみな言動を恥じました。「山がいかに大切なものか」。物心付いた頃から幾度となく聞かされてきたおじいちゃんの教えが、このときようやく胸に響き、それをきっかけに「山を何とかしたい」と強く思うようになったんです。

「山を何とかしたい」。林業と真正面から向き合い始めた國里さんは、あるギャップに気付きます。木材価格の下落に悩む山側とは対象的に、都会では「木材=高級品」というイメージが定着していたのです。山側がいくらSOSを出したところで、このままでは真剣に受け止めてもらえません。
このギャップを埋めるにはどうすればいいか。そこを起点に木薫のビジネスは少しずつカタチになっていきます。

國里:山側の想いや困っていることを伝えるには、エンドユーザーと直接繋がる必要があると考えました。木を伐って市場に卸すという従来のやり方ではなく、加工から流通までのすべてを自分たちで完結する。そうすれば想いを伝えられると思ったんです。

森林組合にも間伐した木材で家具を製造・販売する木工加工部門があるにはありました。しかし、デザインの工夫等は一切なく、都会の市場で勝負ができるレベルではありませんでした。そのため、黒字化できずあえなく閉鎖。私はこの反省も踏まえて事業計画を練り、組合長に企画書を提出しました。

「おもろいやないか。やってみぃ」。見事、組合長からの承認を得たものの、事態は急変します。平成の大合併で8つの森林組合が合併。動き始めていた新規事業は白紙に戻ります。「山を何とかするには、やるしかない!」。走り出していた気持ちを止めることはできず、私は独立の道を選択。組合を退職して、木薫を立ち上げることになります。

 

木々に込められた想いを、子どもたちに受け継ぐ

2006年7月10日(気持ちが先走りすぎてうっかり仏滅)。株式会社 木の里工房 木薫は、資本金10万円・従業員6名でスタートを切ります。國里さんが何としてでもカタチにしたかった木薫の事業には、山への愛が溢れていました。

「森から子どもの笑顔まで」。木薫では創業以来、この想いを大切に保育園向けの家具を製造・販売しています。どうして、子ども向けなのか。例えば、農業をイメージしてください。お米なら春に苗を植えて、秋には収穫できますよね。でも、林業だとそうはいかない。植えた木が回収できるのに50年もかかります。

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幼い頃、おじいちゃんから「おまえが大きくなったら、あの木を切れ」とよく言われたものですが、彼らは自分の代では1円にもならないことをやっていたわけです。それはすべて、子どもや孫のため。「この木で家を建てればいい」。「嫁入り道具はこの木を切ってお金にして買えばいい」。山に生える木々の一本一本には、そんな想いが込められているわけです。

林業の世界に足を踏み入れることがなければ気付けなかった、あのときの山主さんやおじいちゃんの想い。それを伝えるには、大人になってからでは遅い。「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、大切なのは幼いうちに木に触れさせること。100人に1人でもいい。「保育園のロッカー、木でできてたよな」って、ふと思い出してくれる子がいてくれたら、そこには大きな意味があると思うんです。

 

「保育園をつくる」という新たな挑戦

木を伐ることで、山を育てる。自分たちの手で製品にして届けることで、木々に込められた想いを伝える。國里さんが始めた取り組みは、やがて百年の森林構想へと繋がっていきます。創業から10年。百年の森林事業がスタートして8年。西粟倉の森林と、子どもたちの未来のために。18人の会社へと成長した木薫はいま、壮大な冒険に挑もうとしています。

國里:木薫では現在、東京・大阪・岡山を中心に全国400以上の保育園へ商品を納入させていただいています。10年間、いろんな保育の現場を見続けてきたわけですが、その中である想いが芽生えてきたんです。それは、「自分で保育園をやりたい」という想い。社員にはずっと内緒で試算をしてきたのですが、ここにきてようやく見通しが立ったんです。それで先日、思い切ってみんなに夢を打ち明けてみました。

「東京で保育園を始めたい」。無謀とも取れるその夢に、反対の声が上がることは覚悟していました。でも、社員から上がってきたのは、予想もしない声でした。「面白そうじゃないですか!」何よりもうれしかったのは、営業部門や木工加工部門の社員以上に、現場で木を切り、森林を管理してくれている森林整備部門の子たちがワクワクしてくれたことです。

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子どもたちから最も遠いところにいるはずの現場の社員たちが、どうして國里さんの想いに賛同したのか。木薫ならではの取り組みに、その答えが隠れていました。

國里:西粟倉には毎年、保育園児から高校生まで、たくさんの子どもたちが山の見学に来ます。彼らに山の大切さや林業のすばらしさを伝えるのも、現場の役割のひとつなんです。チェーンソーで丸太を切ってみせる。木々が生き物であることを伝える。現場で働く社員との交流を通じて、林業ってかっこいいなって思ってほしい。子どもたちが何を感じるかは人それぞれだけど、何かを感じ取ってもらうことが大切。それがきっと林業の未来に繋がると思ってこの取り組みを続けています。

社員たちも最初のうちは恥ずかしそうにしていましたが、今では笑いも織り交ぜながら上手に説明をしてくれています。また、自分の仕事の棚卸しに繋がり、その意義ややりがいを再認識するようです。おかげでみんな仕事に誇りを持ってくれています。

 

木を伐る人ではなく、山を育てる人になってほしい

「林業の世界に、学歴は関係ありません。木漏れ日の差すような美しい森をつくりたいという想いさえあれば、誰でも活躍できます」と語る國里さん。その言葉通り、入社1年3カ月の若手社員もすでに高性能林業機械に乗り始めるなど、すくすくと成長しています。

國里:最初はチェーンソーで木を伐ることからはじめてもらいます。その後は、フォワーダ、グラップル、ハーベスタといった高性能林業機械を一つずつマスターしていっていただく予定です。すべて使いこなせるようになるには、3年ほどかかるでしょうか。ここまでくればオペレーターとしては一人前ですが、林業の世界ではまだまだ半人前です。

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木を伐る。それは、他の木の成長を促し、山を育てることです。どの木を伐るのが、山にとってベストなのか。それを判断し、山主さんと間伐の計画を詰めていくのが、現場の仕事です。山主さんの中には悪い木を伐ってゆっくり山を育てていきたいという方もいれば、良い木から伐って早くお金に換えたいという方もいらっしゃいます。

山主さんの想いを汲み取ること。それもまた大切な仕事のひとつなんです。最終的には、「こういう山にしませんか」と山主さんに提案できる人になってほしい。もちろん、最初からそこをゴールに育てていくつもりです。

百年の森林事業が軌道に乗り始め、木薫に寄せられる間伐の依頼も年々増加を続けています。また、保育園向け家具の販売も好調。さらには今後、保育園事業にも進出を予定されています。各部門でポストが空いていることもあり、将来的には現場以外のキャリアを歩むこともできるそうです。

國里:現在、森林整備部門には3名の社員がいますが、山主さんとの交渉は基本的に班長か私が担当しています。と言っても、20年以上林業に携わってきた私ですらまだまだ半人前。いまだに木の良し悪しを100%見極めることはできません。それが私よりもベテランになると精度がぐっとあがる。まだまだ勉強やなあと。ただ、これだけやってもマスターできないところが林業の面白いところです。いまだに山へ入るとワクワクしますし、森林整備部門の子たちも現場が一番おもろいって言います。

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木薫には営業部門や木工加工部門もあります。それに今度は保育園事業も始まる。現場以外のキャリアを歩もうと思えば歩めます。希望があれば、もちろん応援します。それは、今回入社いただく方も同じです。でも、不思議とそうはならないんですよね。木を切って、木漏れ日が差し始める。いま、自分の手で美しい森をつくっているんだという達成感は、他では味わえませんから。あと、山で食う弁当のうまさと、昼寝の気持ちよさね。これを知ってしまうと、もうやめられません(笑)。

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