岡山県

西粟倉

にしあわくら

西粟倉の森から日本の森へ飛び出すために、ヒラメキトキメク仲間が欲しい。

井上達哉さんが「西粟倉森の学校(以下森の学校)」の社長になって約1年半。森の学校は、地域商社から木材流通業に特化した「材木屋さん」になりました。『百年の森林構想』から西粟倉村のブランディングを担い、地域の未来を担うことを運命づけられて生まれた森の学校ですが、井上さんは「『地域のためにやる』というマインドで事業をひっぱっていくことに限界を感じました」と言います。少しどきりとするその言葉の真意を伺うとともに、第2フェーズに突入した森の学校のあたらしい姿を追います。
 
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「地域のために」マインドからの解放

– 森を愛する32歳の青年が創業者から会社を受け継いで社長になり、村の地域商社が生む、人と木の生態系。そして新時代の幕開けのインタビューをしてから1年半。ここまでの率直な感想を訊くと「さみしかった」とぽつり。社長就任前は森の学校の営業担当として、プロジェクトの企画からゴールまで自らで立ち回っていましたが、今は人に任せるのが主な仕事なのが少しさみしく感じていたそうです。

「僕、お客さんと直接やりとりをする現場も好きですから。それでも、ひとりでやれるキャパシティは限界があります。森の学校の規模は、もう、ひとりで立ち回れないほど大きくなっていると感じています。」

– 「林業は儲からない」と斜陽産業化して放置された森林。「産業」から「社会問題」にシフトしてしまった森林を50年後まで残そうと諦めなかった西粟倉村。西粟倉の森から出た木材にプラスアイデアで付加価値をもたらし、森の存続につながる事業を紡いでいくのが、それまでの森の学校でした。いわば「西粟倉の」森の学校。「それは少し違うかもしれない」と井上さんが考え始めたのは、社長就任直前のことでした。

「今まで、森の学校には『ニシアワー』(現・グルグルリパブリック)がありました。ニシアワーは西粟倉村の中で起こるアクションすべてを伝えていたメディアだったので、印象的には「西粟倉村のローカルベンチャーみんなのサイト」でした。それは、森の学校とエーゼロに分社化する前の森の学校が村の地域商社だったからです。でも、いまの森の学校は材木屋に特化したので、材木をきちんと売るサイトを作らなきゃと思いました。」

– こうしてウェブサイト『みんなの材木屋』を立ち上げることに。材木に特化したメディアをつくったことで、井上さんが舵をとる「新生・森の学校」の方向性が見えてきたといいます。

「たとえば「ユカハリを売った利益を地域に還元する」のが、以前の森の学校のイメージです。そこに大義はあったし、みんなもそれを目指して突き進んでいました。でも僕はそのモチベーション自体に違和感を感じました。

森の学校の製材所で働いている人たちや純粋にものづくりをしたい人たち、木材や林業が好きな人たちにとっては、会社の利益を地域に還元することは、西粟倉村という場所にとってはもう当たり前のことです。そう考えると「地域のために」というマインドで事業をひっぱっていくことに限界を感じました。僕らは企業としてもっと成長したいと思っています。西粟倉村が好きだからこそ、次のステージに行くことが良いと思いました。」

– 森の学校は、行政でもNPOでもボランティア団体でもなく、一民間の企業です。利益を増やす目標が清く美しいものだけでは立ち行かなくなっていくことを、井上さんは社長になったからこそ肌で感じたのです。

「本当の意味で、材木に付加価値をつけて、全国的に国産材を流通させていくことに舵をきることを決めました。社員みんなのマインドをもう少し外向きにしたかったし、そして自分自身ももっと前を向きたかったのかもしれません。僕らが前を向くためになにが必要なのかを模索する。この1年間はずっとその作業でした。いやー、すっきりしました。」

– 西粟倉村に移住して8年目。西粟倉村のローカルベンチャー黎明期からを知る井上さんは、「地域はまとまらなくていい」と断言します。

「もちろん僕は『百年の森林構想』が大好きです。それがあって、森の学校も立ち上がったし、今の自分たちがあります。でも、「森林を守る」、「地域を盛り上げる」という話だけで材木を売るのが少し難しいと感じています。」

「でも、僕らは森の学校さえよければいいなんてこれっぽっちも思っていません。他地域の森にも還元できるような規模で材木流通業をやっていきたいんです。でも日本の国産材の状況が変われば、ゆくゆくは西粟倉の森のためにもなる。そうやって僕らは地域の林業を変えていきたい。西粟倉村は大好きで、きっかけをもらった大切な場所。だからこれからも拠点として変わりなく、森の学校のイノベーションはここから発信して行きます。」

– ものづくり、サービス、質など、企業として努力した部分を前に出したほうが潔い。この考え方は、森の学校が本当の意味で、地域にも行政にも依存しない一民間企業になった証拠なのではないでしょうか。それは、西粟倉村が培ってきたローカルベンチャーの生態系が生み出した成果でもあります。
 

僕らの価値観で「一般的」を撲滅する。

– 井上さんが新たに掲げた森の学校のミッションは「国産材をつかうのが当たり前の暮らし」の価値観を広げていくことです。

「僕らは製材業であり、木材流通だから、そういう自分たちの仕事のなかで、森と暮らしをつなげるハブでありたいです。製材業者は森と暮らし、このふたつの関係性を良くも悪くもできるから、自分たちの役割はとても真摯であるべきだなと思っています。日本全国の森と暮らしが能動的につながる関係がつくりたいです。

あと、今日みんなでスギとヒノキでスイカ割りをして、どっちがスイカ割りに向いているかを検証しました。すごく楽しかった。ふざけているように見えるかもしれないけれど大まじめなんですよ。もっとああいうことを発信していきたいです。暗い話題ばかりの業界だから、僕、製材業を全体的にポップな業界にしていきたいのかもしれない。」

「製材業自体はまじめにやっていますけど、まじめにやっているからこそ、木をつかう楽しさや心地よさを伝えられる存在でもあると思うんです。だから僕らが面白がっていることが業界の明るさにつながっていく気がしています。」

– お客さんに「木が欲しい」と言われたら供給するのが材木屋の仕事ですが、「木が欲しい」と思わせるきっかけも与えていきたいのが森の学校。それをやっていくためには、森の学校で働くひとたち自身が「自分たちが一番面白いって想い続けること」が大事だといいます。

「一方で、材木のクオリティを上げる仕事を製造部門には担って欲しいです。」

– 「クオリティを上げる」ということは、森の学校がつくるものの質をあげることを指しますが、これは必ずしも「もの」の質だけではない、と井上さんは言います。

「間伐材でボトルネックだと言われている、節、色が悪い、傷がある、そんな商品は、一般的にはB級品です。製造スタッフは、毎日、ノイローゼになるくらい、そういう材を避けなければならない。材木屋は納品した商品は完璧が当たり前の世界ですから、とても神経質になります。大変な仕事です。だから、僕はその考え方の質を変えたいんです。」

「お客さんが良いと思える材を出すのが第一ですが、これを納品しちゃうとクレームになるというネガティブな想いで、避けた材を粗悪だと決めつけるのではなく、通常「よくない」と言われている材でもいいとこ見つけをして、「色が悪いのは希少価値だから、これだけ集めておこうぜ」「今、綺麗だと言われているものより高く売れるかもよ」とか、そういう意識を持って、ものづくりをしていきたい。きっと誰かが喜んでくれるにちがいないと思って仕事していくのが大事かなと。綺麗な商品を求めるお客さんもいれば、個性ある商品を求めるお客様だっている。節があるのも、節がないのも、50年以上、ここの森で育った木ですからね。そんなことを考えられる多様性が製造部門から育っていけばいい会社になっていく気がします。」

– この話で強く感じるのは、率直に、森の学校の木や森林への深い愛情。そして、愛情を伝えていけば、お客さんも自分たちと同じように愛してくれるという信頼。森の学校の根本に流れるのは、木を愛して、人を信じること。ものをつくる現場レベルでもその空気を共有することが、そのシナジーを加速化させます。

「お客さんのどこに寄り添っていくかという話です。ただ見た目が綺麗な木が欲しければ新建材や合板のほうがいいです。でも僕らは、絶対、暮らしに寄り添う木材は無垢材のほうがいいと思う。僕は材木の「一般的」という価値観を撲滅したい(笑)。でもそれをちゃんと声を大にして伝えていかなきゃいけないですよね。見た目の綺麗さの価値観も変えていきたい。」
 

ヒラメキ、トキメキ、材木の未来

「最近オープンした、森の学校のコーポレイトサイトをつくるにあたって、僕が信頼を寄せる、クリエイティブディレクターの古田くん(古田琢也/トリクミ)やコピーライターの浅井さん(浅井克俊/ココホレジャパン)に、森の学校の第2フェーズを表すコーポレイトアイデンティティ(以下CI)を考えてもらいました。この方向性で進んでいきたいと思います。」

– ミッションを実現していくためには同じ志を持つ仲間が必要です。このCIは、まずは社内の人間が見るべき方向性を定めるために必要でした。そして、まだ見ぬ新たな仲間を見つけるためにも。現在、森の学校では、西粟倉の森を飛び出して、日本の森と暮らしをつなぐ会社になる足がかりとなる人材を募集しています。井上さんは率直にどんな仲間が欲しいでしょう?

「うーん…。あ!大林みたいなやつ!(笑)」

– 大林由佳さん(ablabo.)は、森の学校にインターンから入社して、油好きが高じて、ひとりたくましく西粟倉で起業した女子です。(ablabo.の物語はこちら

「大林は、がむしゃらな感じ?一生懸命な感じ。いろいろ適当で雑なんだけど(笑)、前に進む力は人一番強いから、なんか安心できる。できない理由を探してごちゃごちゃ言って進まないより、理由がなくても進むような人がいいです。そういう子が起業するんでしょうね。」

– 会社に所属して欲しいけれど、起業スピリットを持っている人が良い、というのは難しいオーダーのような気がします。

「会社に入って欲しいけれど、ゆくゆくは起業するようなやつが欲しい。これは、いま僕が感じている、会社のバランスなんだろうなと思います。ひとつの会社でみんな同じ気持ちで働くことって、気持ち悪い話だし、自分自身もどうかなって思うので。そう考えたら、この会社でずっと働き続けることを前提にしなくていいと思っています。今の会社の成長に必要な人材っていうのは、がむしゃらなモチベーションの持ち主ですね。

製造の体制が整った今、新しい森の学校として、他の地域の木材流通も手伝う取り組みも始めようとおもうので、余計、新しいイノベーションを突き進まなければならないから、創業くらいの勢いで、がむしゃらにやれないと(笑)。いろいろ、わからなくても、わからないなりに進める、ガッツがある人がいいです。冷静さがいい意味でないような(笑)。」

– 現在、森の学校の売り上げは約2億円。それを近年中には倍以上の5億円にしたいという売り上げベースでの意欲もあります。

「うちの製材所だけで生産できる材木の数量にも限界があるので、純粋な製造業ではせいいっぱいがんばって4億円くらいですから、他の地域の木材流通を創造していくことも視野に入れて売り上げを立てていきたいです。」

– そんな夢を、若き社長と一緒に語れる人に来て欲しい、と井上さん。そして、森の学校のミッションを達成するには外的コミュニケーションの努力が不可欠。「これがいい」と言う声を大にして、商品を理解して宣伝していくメンバーも必要になってきます。

「『みんなの材木屋』のリニューアルを考えています。僕らと一緒にオウンドメディアをつくりたいひとも是非来て欲しいです。自分たちがやっていることが、森にも暮らしにも影響が与えられるような存在になりたい。それには、自分たちの発信力が必要ですね。」

– 井上さんの「右腕」そして、「声」を、森の学校は募集しています。西粟倉の森を飛び出した森の学校の未来は、日本中の森のなかにあります。その未来にトキメいて、森と暮らしをつなげるグッドなアイデアをヒラメいて、西粟倉から全国へ物語を届けましょう。木材流通の向こうにある、私たちの暮らしの豊かさを、森の学校と一緒につくっていきたいひとを募集します。

そして、一人称が「僕」から「僕ら」と複数形になった、井上達哉というイノベーターが起こすソーシャルインパクトを楽しみでしょうがないのは、私だけではないはずです。

※森の学校に興味を持った方は、こちらのインタビューもあわせてどうぞ。
「木よりも断然、人が好き」な製造部エースが材木の夢物語を現実に変えていく
必要なのは起業家ばかりじゃない。挑戦を支える、村でもっとも「ふつう」な従業員

※こちらの求人は、応募を締め切りました

募集職種
1: 経営企画(新サービス・新規事業の立ち上げ)
2: Web制作・編集・デザイン(新しい木材流通に取り組む『みんなの材木屋』でのコンテンツ企画・制作・運営)

雇用形態
正社員

給与
保有されるスキル・経験・能力により優遇、相談の上で決定

勤務地
岡山県西粟倉村

勤務時間
午前8時~午後5時30分(実働8時間)

休日休暇
土日・祝日 土曜日は月の2回の出勤日あり。
産前産後休暇、育児休業、介護休暇等

昇給
年1回

保険
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険完備

求める人物像
・田舎から新しいビジネスの立ち上げに情熱をもってチャレンジが出来る人
・枠組みにとらわれず、自ら考えて行動できる人
・林業を本気で何とかしたいと思っている人

募集期間
2016/8/8〜2016/10/15 

採用予定人数
2~3名

選考プロセス
まずは下記よりご応募・お問合せください
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書類選考 ※履歴書と参考URL(facebook等)があれば送ってください。
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面接
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採用

※次の選考ステップに進まれる方のみご連絡させていただきます。 不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。
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西粟倉森の学校

http://morinogakko.jp/