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「行ってもないのに事業計画なんてできません」じゃあ、ローカルベンチャースクール応募前に何をする?

ローカルベンチャースクールにエントリーを検討する方に向けての事業計画講習会が、東京で行われました。しかしこの講習会は「事業は計画出来るものではない」という思いがけない言葉が参加者に向けられるところからはじまりました。果たしてそれはどういう意味なのか。じゃあ、応募までに何をすればいいのか。ここにローカルベンチャーのミソが詰まっていたんです。

※本イベントはエントリーを終了しました
 

計画出来ない、地域でのベンチャービジネスとは

9月初旬、ローカルベンチャースクール(以下LVS)にエントリーを検討される方に向けての事業計画講習会が東京・渋谷にて行われました。講師は、広石拓司さん(株式会社エンパブリック代表取締役)、渡邊賢太郎さん(NPO法人ETIC. SUSANOOマネージャー) 、そして弊社代表の牧大介が務めました。

まず、事業プランを検討していく中で重視すべき点について、講師の広石さんは、地域のバリューチェーンを整えることの重要性を指摘されました。地域の中で農作物をつくる仕事をするには、種や苗の仕入れ、土壌づくり、流通といった一連の流れが必要です。地域が発展するには農業だけでなく、物流、加工、飲食、学校などが必要となります。自分の仕事が成立するために必要なこと、地域全体の付加価値を高めるために必要なことを俯瞰的に考え、自分の仕事はどのようなつながりの中で付加価値を生み出されるか、競合と比較してどの部分に強み・弱みがあるかを分析し、事業戦略の有効性や改善の方向を探ることが大切です。
 


たとえばローカルベンチャー支援の事業1つの中にも、プログラムの企画、地域内外のパートナー探し、情報をみなさんにお届けするためのマーケティングや発信、運営・実施など、さまざまな機能があります。そうした各機能が自然資本や社会関係資本とどのようにつながり、地域への豊かさやこれまでにない価値をもたらしていくのか。それを考えることが、事業のバリューチェーンを整えていくことになるのだと感じます。

ここで既に東京で事業を立ち上げている方から、「今の事業を続けてそれも含めたバリューチェーンは考えてもいいのか?」という質問が出ました。これは問題ありません。むしろ一地域だけで、一事業でバリューチェーンを考えるよりも、今築かれた環境や販路があれば、それを地域と組み合わせていただきたいと思います。それによって、既に生まれている渦やめぐりに加えて、西粟倉や厚真町に拠点を持つことで生まれる自身の事業での新たなめぐり、また地域側にもたらすめぐりは何と想定するのかを言葉にしていただきたいと思っています。

今回エントリーいただく皆さんは、新しい仕事づくりを計画することとなります。広石さんは仕事をつくりだす上で3つの大きな問いかけを投げ続ける必要があると参加者に伝えていました。
 ・その仕事は、どんな新しい価値を生み出す仕組みなのか
 ・その仕事は、どんな新しい役割を自分や周りや地域の方々にもたらすのか
 ・その仕事は、どんな新しいつながりを生むのか
この3つは、計画時だけでなく実行していく際にも問いかけ、常に問いかけ続けることが大切なのだと感じます。

ここまでのいくつかのキーワードも振り返り、改めて事業計画の練り方を考えた時、ふとこう思われるのではないでしょうか。「え、地域のことあまり知らないと事業計画は立てられないんじゃないか」と。そう。そうなんです。

西粟倉や厚真町にまだ訪れたことがない方からすれば、「拠点とする地域でのバリューチェーンはどうなっていますか」「新しい価値は何でしょうか」「あなたが担える新たな役割は何でしょう」こんな問いかけに答えるのは、地域をよく知らない状況では困難だと事務局も理解しています。

なのでLVSでは書類選考を通過した方に向けて、ブラッシュアップ合宿&一次選考会にて、現地を知り、地域の方と結びつく機会を用意し、その後に選考する流れをとっています。バリューチェーンや新たな関係性のめぐり、地域での役割を探す機会を通して、ようやく事業計画の輪郭が見えてくるのだと思っています。
 

自分にしか出来ない作業

では書類選考を控えた今の段階では何を固めていけばいいのか。これは、事業を考える中で「自分にしか出来ないこと」と「自分だけでは出来ないこと」に分けて考えることがヒントになります。
 


自分の想いや、その想いの原点を深く厳しく見つめ直す、芯を探す作業は、自分にしか出来ないことです。コミットメントする理由=「やる理由」「やめない理由」を見出すことです。過去・現在も含めて、生活や仕事での喜怒哀楽を、どこに感じて生きてきたか。そして、なぜ今その事業をやりたいのか、その想いはどこから来ているのか。幼かった頃まで遡って問いかけ、見つめてほしいと思います。ここで見えてきたことは、とても大切な情報であり、事業の原点です。エントリーの際も是非教えてください。

また事業に関しては、計画するというより、「仮説を立てる」と表現するほうが適していると思います。仮説を立てていく為のヒントとして、3日目の講師、渡邊さんの講義内容を少し紹介します。渡邊さんからは、自らが担当されている起業家発掘・育成のプログラムにも活用されているリーンスタートアップという手法を紹介してもらいました。リーンスタートアップとは事業の立ち上げに関する方法論のことで、簡単に言えば、とにかく仮説を立てる、どんどん試す、失敗含めて結果に学び、新たな仮説を立てる…と、仮説検証のサイクルを高速で回し続ける手法のことです。

講習会内では、このリーンスタートアップの導入部分に触れながら自らの事業仮説を描いてみました。具体的にはワークシート※を活用しながら、実現したい未来や、サービス内容、顧客設定を記述していきます。顧客設定は特に細かく考え、そのサービスにとってアーリーアダプターは誰であるか言語化していきました。アーリーアダプターとは、その商品やサービスが出た時に一番に飛びつくような人たちのことです。アメリカの社会学者であるエベレット・ロジャースによって提唱されたイノベータ―理論の中で紹介された概念です。シリコンバレーではアーリーアダプターの獲得こそスタートアップにおける最重要課題と言われています。

※ワークシートは「リーンキャンバス」を使いました。こちらはネット上で検索すれば出てきますので、それらも是非ご活用ください。
 

自分だけでは出来ない作業

次に、自分だけでは出来ない作業についてです。これは人に会い、意見交換し、フィードバックを受けなければ進んでいかない作業のことを指します。人が居ることで事業を磨き、更新していく作業の繰り返しでバリューチェーンを整えアプローチ方法を模索し、事業や自分が果たす役割を見出していけます。

リーンスタートアップでも、他者が介在して事業は磨かれて行きます。他者と関わることで仮説検証サイクルは推進力を持つのです。具体的には、ワークシートが記入された後、相互に発表しフィードバック、そこからの気づきをもとに記入内容を更新していきます。そして、事業で扱う商品やサービスのチラシ作成をし、アーリーアダプターと思われる人に見せて尋ねます。「これお金払ってでもほしい?」と。

返ってきた答えが「え、お金払ってまでは要らないかな…」「今、代用できてるし大丈夫」となれば、そのビジネスが競合に対して優位ではないですし、必要がないということになります。その人が「これならお金払ってでも欲しい!どうすれば手に入るの?」と目を輝かせてくれるまで試行錯誤しながら仮説検証を繰り返し、こだわり続けていきます。こうしてターゲットを明確にし、ビジネスの内容を磨いていくのです。
 

当たり前のことですが、この仮説検証は、実際に地域に行くことで大きく進んでいきます。その土地の産業、環境、人の想いに結び付くことで事業内容を広げる、または深める素材を手にし、結果バリューチェーンや、アプローチの選択肢は広がっていきます。この仮説検証を現地で行う機会の一発目として、ブラッシュアップ合宿&一次選考会があります。ここで事業計画を更に深く考え、組み立てていけば問題ありません。

そうなると、今やらなければいけないエントリー書類の作成は何を書くことが必要なのか。それは「自分でしか出来ない作業」を突き詰めていただくことに尽きると思います。
・自分はどういうところで喜怒哀楽を感じてきたか
・どうしてその事業がやりたいのか、その原点はなにか
・どんな事業を立ち上げる仮説を持っているか
この3点と向き合い、それを書類で丁寧に伝えてもらえればと思います。

エントリー締め切りまで日が迫ってきましたね。エントリーで出していただく内容を始点として、西粟倉や厚真町と結び付けて行きましょう。LVSはビジネスプランコンテストではなく、起業家を育てる村ぐるみ、町ぐるみの研修プログラムと捉えています。皆さんのエントリーをお待ちしております。

※本イベントはエントリーを終了しました

西粟倉ローカルベンチャースクール2016

http://guruguru.jp/nishihour/lvs

 

厚真ローカルベンチャースクール2016

http://guruguru.jp/atsuma/lvs