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ちゃんと稼げる事業を、村に増やす。西粟倉ローカルベンチャースクール2016始動

西粟倉村で2015年から実施してきた起業支援プログラム「西粟倉ローカルベンチャースクール」。今年は、村民が提案するアイデアをもとにした新規事業も、積極的に採択・支援していくことになりました。「儲からない地域課題をベンチャーに丸投げするのは、行政の甘えです。自分たちも率先して、新規事業案を出してみませんか」。そんな投げかけが役場内で行われ、職員からの提案やアイデアはなんと24件に。よそ者・若者が盛り上げるだけでなく、村全体でローカルベンチャーを育んでいこうとしている西粟倉村での取り組み、今年のローカルベンチャースクールについてご紹介します。

 

10社以上の起業家を生んだ、これまでの西粟倉村の取り組み

一般用語化しつつある「ローカルベンチャー」。これを軸にした取り組みは全国各地に広がりつつありますが、まだその言葉が生まれていない時から西粟倉ではじわじわと起業家支援に取り組んできました。

少し遡り、2004年。美作市の合併協議会から離脱を宣言し、「西粟倉村」として歩むことを決意したのがこの年。その後、雇用採択協議会の発足をはじめとした村の人口を増やしていこうという動きに応じて、村への移住者が集まり始めます。今では移住者は100名以上、村の総人口1,503名(2016年6月1日現在)の約6%を占めるほど。

こうした、人を呼び込み、呼ばれ、出会い、どんどんと物事が始まりだす連鎖反応の元にあるのは「その人がその人らしく暮らし働く支援」です。この支援を続ける中で、西粟倉村の人材発掘・育成は徐々に、「その人らしい、その人だから起こせる仕事=起業家支援」の特色が際立ち、軸となっていきました。西粟倉村で立ち上がったローカルベンチャーは13社に上ります。
 

そして起業家をより多くこの村に迎え、支えていこうと取り組んだのが2015年から実施している「ローカルベンチャースクール」です。ローカルベンチャースクール(以下LVS)は計3回、村で開催される連続イベントでした。各自がこの村で起こしたい事業プランを発表し、その場に来ている村民の方々やゲスト講師の方々からアドバイスや意見をもらい、ブラッシュアップを受ける2カ月間。

2015年は合計18件の応募があり、結果2件が採択され、西粟倉村のローカルベンチャーの一員となりました。採択者となった狩猟ビジネスに挑戦する松原さんと帽子屋を始める山口さんは今それぞれの事業立ち上げのために村に本格移住し、それぞれの事業を一歩一歩進めている真っ最中です。

西粟倉ローカルベンチャースクール過去レポート

昨年のLVSは、松原さんと山口さんが創業するという成果に加えて、ベンチャー発掘の仕組み構築に向けて一歩を踏み出せたことも大きな成果でした。村を、「人や企業、組織が支えあいながら循環する生態系」と捉えると、起業家発掘・支援は「いい人材にたまたま出会えた」でなく、仕組みの一つとして生態系の一部に組み込まれることが必要です。2015年は、村に求められていた起業家支援を仕組化し、そして村全体の循環においてブースターの役割を担うLVSが生まれたとても大事な年となりました。
 

「売上1億円以上の企業」を増やしていくことを目指したい

昨年の流れを引き継ぎ、新しい村の未来を一緒に築く人々を募るべく、西粟倉ローカルベンチャースクールが2016年も開催されます。

今年のLVSの企画検討をする中で常々、LVSは一つのパーツだということを感じます。西粟倉村が大きなビジョンを描く中で、それを叶えるための一つの手段としてLVSが存在する。大きなビジョンとは「企業の成長や人材発掘・育成が補助金が無くとも自走し、結果仕事が多種多様に生み出され、そこに集う多くの人が主体的に居場所を確保できている姿」です。分解すると「人や企業の成長を支える村独自の財源・組織」「多様な仕事・働き方」「選択肢のある暮らし方」の3つを実現させたい、より充実させたいということ。

西粟倉村は美作市に合併せず村として歩み始めてから、百年の森林構想、雇用対策協議会、ローカルベンチャースクール等、覚悟を伴う決断と粘り強い実行を繰り返してきた歴史を持っています。こうした取り組みから築かれてきた基盤があるからこそ、前述した3つのテーマにも新たにアプローチ出来る段階に来ています。

この3つのテーマに着手していく糸口は、「村内の企業を大きくする」。これが今、改めて重要だと感じ、企画・実行していこうとしています。2016の西粟倉LVSキャッチコピーに、「ちゃんと稼ごう」とあるように、十分な売上と利益を出せる会社を増やして行くことを重視しローカルベンチャーを発掘・育成したいと考えています。

具体的には、「3年後に年間売上1億円以上もしくは従業員数10人以上を目標とする事業」「売り上げ規模は小さくとも、村の未来に大きな影響を見込める事業」のどちらかを満たしている新規事業を、募っていきます。

3年後に年間売上1億円。これから村で育てていきたい起業家を考えていた際、この数字目標が社長(※エーゼロ代表・牧大介)の口から出た瞬間、すんなりと理解できなかったのが正直なところでした。でも今では、ちゃんと売上がある企業とは何が出来て、その集合体である村はどうなるのかを考え続けると、少しずつ村の現状とその解決に企業の成長が大切であることが見えてくるようになりました。
 


例えば、村で起きている現状のひとつが、出生率の低下。実は西粟倉村、移住者は増えていますが出生率は低下しています。昭和58-62年に1.88人から平成20-24年に1.48人と、-0.4人の低下である岡山県と比較してみると、西粟倉村は昭和58-62年に2.22人から平成20-24年に1.49人と、-0.73人の低下。出生率の低下は、西粟倉村の方に顕著に表れています。多忙な日々、家庭で過ごす時間の減少、経済的安定の優先、お母さんたちが働く環境がまだ整っていない等々を理由に「今はまだ産めない」という声が聞こえてくる数字です。

今の西粟倉には、多様な起業家が生まれることだけでなく、多様な「仕事(業務)」が生まれることが本当に大切なのだと感じます。企業が成長すれば、効率を求めた作業設計が可能となり、コンスタントな仕事も生まれる。まだ手の離れないお子さんが居るなど労働条件に制限がある方でも、ちゃんと仕事があり、企業の大切な戦力として一緒に事業を回していけるようになります。

また、企業の成長背景が、村の想いとどう繋がっているかもとても重要です。会社単体としての想いだけではなく、村の想いとつながり、村の生態系に組み込まれていることで、必要とされる顧客や連携パートナーも増え、事業の成長にも大きく影響してくると考えられます。

今年のLVSは、村の想いとそれぞれの事業が繋がりやすくするため、新しい取り組みを行っています。昨年のLVSのように移住者自身が温めた事業プランを持ち込むだけでなく、村民からの課題や新規事業案を、募りました。

「儲からない地域課題をベンチャーに丸投げするのは行政の甘えです」。梅雨に入ったばかりの頃、LVSの役場担当者、井上大輔さんの熱のこもった言葉が載ったメールが西粟倉村役場の一般行政職員約30人のもとに届きます。まず西粟倉村役場の職員の方々から意見を募り、結果、出てきた提案は 24件。この提案は役場職員としてより、村に暮らし働いてきたその人だから生まれたのだと感じます。そして提案がこれだけ出たならと、発表会も急遽実施。小さな会議室での、小さな発表会は、さながら村の未来を描く戦略会議でした。
 

なんとか解決したいけど、役場だけではできない。だから、ローカルベンチャー企業と連携したい。手を挙げてくれる人がいるなら、全力で応援し、共に実現させたい。そんな想いが村役場の中だけでもたくさん眠っていたことが分かりました。ローカルベンチャーと村役場がタッグを組んで、次々と地域課題を解決していく。そんな未来を実現していけるかもしれません。

村役場だけでなく、村内の既存ローカルベンチャーからも、こんな新規事業を立ち上げたいんだけど、誰かにそのリーダーになって社内起業してほしい、という提案も出てくる予定です。こちらも本当に楽しみです。企画書を提出してエントリーして下さる人の想いを起点としつつも、それが村人たちの想いともつながっていく。そういうLVSにしていきたいと考えています。
 

ちゃんと稼ごう。西粟倉ローカルベンチャースクール2016の特徴

 

改めて今年のLVSについてご説明します。スケジュールは、本日7月11日から10月8日までが、エントリー期間。その間には、東京での講習会も開催されます。書類選考通過者は、西粟倉で開催するLVS1次選考会(10/28~30の2泊3日)にてブラッシュアップとプレゼンテーションを実施。1次選考通過後、各事業プラン・提案者に沿って、村内外からの専門家やキーパーソンで構成されたメンターチームと共に事業を磨きます。そしてLVS最終選考会(12/10・11)として最終ブラッシュアップと最終プレゼンテーションを実施。最終審査を経て「支援事業者」の認定を受けます。

「支援事業者」。そう、今年のゴールは、昨年のように地域おこし協力隊(起業型)の採択ではなくて、「支援事業者」がゴールとなります。つまり、「あなたは、村ぐるみで応援するローカルベンチャーです」となっていただくということです。

地域おこし協力隊を増やしたいではなくて、「ちゃんと稼ぐ新規事業」を増やしたい。これまでは起業というと村外からの移住者の挑戦という色が濃かったのですが、加えて村内から手が挙がることも積極的に募りたいと思っています(もちろん村外起業家も変わらず募集しますし、協力隊制度も活用できます)。

他にも、今年はこんな特徴や仕掛けがあります。

新規事業@西粟倉なら何でもOK
起業、社内起業、第二創業…西粟倉村を拠点にした新規事業であればなんでもエントリーが可能です。「起業」という言葉も「新たな業を起こす」こと全般を捉えて社内起業、第二創業も加えて広く捉えて募集対象とします。支店や事業所の開設でも、新規事業の取組であれば問題ありません。また、これまで起業というと村外からの挑戦が色濃かったのですが、村内からでもエントリーが可能です。

事業規模・インパクト
「3年後に年間売上1億円以上もしくは従業員数10人以上を目標とする事業」「売り上げ規模は小さくとも、村の未来に大きな影響を見込める事業」。このどちらかを満たしている新規事業を募ります。

「私が考える西粟倉の課題・新規事業」から想起する事業プランも募集
オリジナルの事業プランに加えて、村の課題や新規事業案をベースとした新規事業も大歓迎です。

チームエントリーも可能
個人に加えてチームエントリーも可能です。スタートアップ時期を走り抜けるにはチームであることは大きな脚力・速力となります。是非チームでエントリーしてください。村外からのエントリーの場合は1チーム3人までを協力隊として受け入れることも可能となります。3人採択となるには審査の目も厳しくなるのですが、大きなチャンスとなるので是非活用してください。また、個人でのエントリーの際も、いずれはチーム形成することを意識いただきたいと考えています。

事業に沿ったメンターチームを形成、サポート
1次選考を通過した事業プランは地域内外のキーパーソンや、専門家を内容に合わせてメンターチームを立ち上げ、徹底的にブラッシュアップを実施します。こちらのメンターチームを組む際には強力なゲストの方をお呼びしております。Team♡KATSUYA 勝屋 久さん・勝屋 祐子さん。多くのベンチャーの発掘・育成に携わられてきた、お二人にチーフメンターとして期間中、伴走を務める豪華なメンター陣との貴重な出会いを設計いただきます。村内の愛情深さや地元しかわからないノウハウや人脈、村外の客観性と専門知識。これらを一度に受けることが出来るのは、そうそうない機会だと思います。
 

私たちは、LVSを通じて「ちゃんと稼ごう」と言葉を発して、エントリーいただく皆さんに覚悟と熱意と計画性を求めるだけでなくて、稼げる事業者になれるよう、伴走しながら事業を育てていくことに本気で注力していこうと思っています。

地域で起業する=ローカルベンチャーじゃない。ちゃんと稼ぎ、ちゃんと村とつながることが「ローカルベンチャー」と感じています。西粟倉は、地域での起業支援の一歩先へ踏み出した面白いフェーズに来ていると個人的にも感じます。起業家という肩書がなくても、村民からどんどんと新たな仕事が生まれてきている、やってみれば出来ることを実感しつつある。村の生態系はどんどんと複雑に、多様になっていきます。ここで、共に挑戦する面白さや難しさ、そして何か乗り越えた時の嬉しさを感じてほしいです。

まだ見ぬ、LVSを使い倒してくれる起業家の皆さん、社内起業家の皆さん、お会いできるのを本当に楽しみにしています。せっかくなら今しかできない、あなたしか出来ない、新しい事業にこの村でチャレンジしてみてください。

西粟倉ローカルベンチャースクール2016

http://guruguru.jp/nishihour/lvs

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