旭川より16人の“ATSUMA LOVERS”来たる!大学生が「あつま田舎まつり」に参加した理由とは?

2019年6月15日、厚真町最大のイベント「第47回あつま田舎まつり」が行われました。

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震後、初の開催となった今回は、会場をこれまでの「表町公園」から「かしわ公園野球場」に移しました。あいにく天候には恵まれなかったものの、町内外からたくさんの人が詰めかけ、恒例の「田舎まつり音頭」や名物の「草原焼き」を楽しみ、会場は笑顔と笑い声に包まれました。

そんな中、飲食ブースの行列の先に、元気な声で呼び込みをする大学生たちの姿がありました。

 

実習でお世話になったまちのために「何かしたい」という思いが原動力

 

「厚真名物『塩コロジンギスカン』!おいしいですよ。ビールのおつまみにいかがですかー」

特産品ブースの前を通りかかると、大きな声で呼び止められました。声の主は旭川大学保健福祉学部コミュニティ福祉学科に通う澤口慎人さん(3年生)。旭川大学震災ボランティアサークル「CROSS(クロス)」の学生代表です。

「田舎まつり」には「CROSS」のメンバー16名が顧問の大野剛志先生らとともに参加。特産品ブースのほか、厚真町商工会青年部の飲食ブース、スポーツ吹矢&大型紙飛行機のワークショップ会場に分かれて接客を行いました。

澤口さん(後列中央)と「CROSS」のメンバー

 

「CROSS」は、大野先生が2011年の東日本大震災を機に立ち上げた学生ボランティア団体です。「CROSS」とは、人と人の交わり・交流の意味で、ボランティアの活動を通じ、地域の人びとと出逢い、交流を続けることで、地域を盛り上げたいと願い結成されました。

 

震災後、東北の被災地に入って仮設住宅の生活聞き取り調査を実施するなど、「CROSS」   は精力的に支援活動を行ってきました。東北の復興が進むのに合わせて徐々に活動頻度は落ち着いていきましたが、北海道胆振東部地震を機に「厚真のためにできることをしたい」と願った澤口さんと大野先生が意気投合し、本格的に活動を再開しました。

 

澤口さんが厚真町のために立ち上がったのには理由がありました。

2018年8月25日〜27日の3日間、澤口さんを含むコミュニティ福祉学科の学生(当時2年生)36名が、大野先生の指導の下、コミュニティ調査実習のため厚真町に滞在していたのです。

実習テーマは、まちづくり研究。町内の豊丘地区と上厚真地区で学生たちが戸別訪問を行い、生活に関する聞き取り調査を行いました。

 

豊丘地区は農村コミュニティ。この地に根を張り何代も農地を守り続けてきた人々と、ここに根を下ろすために町外から新しく移り住んできた人々が手を取り、共に支え合っている地域です。対して上厚真地区は比較的新しいコミュニティ。子育て世代も多く、町外から来た人々の割合が高い地域です。

地域の選定にあたってアドバイスを求めたのが、厚真町まちづくり推進課の中川信行理事(当時)と小山敏史さんでした。二人は学生のために親身になって実習をサポートしました。

「実習の最後の夜、お世話なった町職員のみなさんとジンギスカンを囲み懇親会を開いたんです。僕は中川さんの隣に座り、まちのことをいろいろ教えていただきました」(澤口さん)。

 

ところが実習から10日後の9月6日未明、最大震度7の地震が厚真町を襲います。

たいへん残念なことに、この地震で中川さんは帰らぬ人となってしまいました。

「まさか、僕の隣でジンギスカンを食べていた方が……」。

お世話になった方の死を知り、澤口さんにとって北海道胆振東部地震は遠く離れた地域の災害ではなく、とても身近なできごととなりました。

 

「厚真の復旧・復興になんとかして関わることができないか」。

実習担当の大野先生の呼びかけに賛同した澤口さんは、実習メンバーの仲間3人と共に、大停電のあと電気が復旧した旭川市内のスーパーを駆け巡って救援物資を買い集め、発災2日後の9月8日に厚真町へ物資を届けました。

物資の提供だけではなく、もっと力になりたい気持ちがありましたが、発災直後はボランティアの存在がかえって復旧作業の邪魔になってしまいます。そこで、仕切り直すことにしました。

 

澤口さんたち「CROSS」のコアメンバーは、自分たちに何ができるのか話し合った結果、実習でお世話になった豊丘地区での餅つき会の開催を「豊丘自治会」の山路秀丘会長へ提案します。

「餅つきはコミュニティの結束力を高める行事。東日本大震災のときに大野先生が仮設住宅で餅つき会を開いたと聞いて、僕たちもそれにならって企画しました」(澤口さん)。

その後、まちづくり推進課に橋渡しをしてもらい、2018年11月18日に町長同席のもと、役場前での献花式を開き、豊丘地区では「豊丘自治会若夫会」と「CROSS」の共催による餅つき会が実現しました。

 

旭川大学から駆けつけたのは8月の実習に参加した学生を中心とするメンバーのほか、旭川大学山内亮史学長はじめ「CROSS」に賛同した教職員も加えた旭川大学の有志約40名、豊丘自治会からは40名の住民が参加し、「お久しぶりです」「お元気でしたか」と再会を喜びました。

豊丘地区の住民と一緒に餅つきを楽しむ旭川大学のみなさん(写真提供:大野先生)

関わりを作る。つながりを深める。ボランティアがその大きな一歩に。

 

「餅つき会を通して豊丘のみなさんとの距離を縮めることができました。次のステップではもっと多くの方と関わりたい、できれば町民全員とつながりを作りたい。厚真の復興は町民のみなさんが元気になること。地域の方々が持っている力をベースに、私たちがサポートをする形で何か一緒にできないだろうか。そのときに思い出したのが夏の実習で話を聞いた臼澤さんのスポーツ吹矢でした」(大野先生)。

 

スポーツ吹矢とは、約1mの筒に息を吹き込んで矢を放ち、5〜10m離れた円形の的に当てて得点を争う競技です。腹式呼吸をベースにした呼吸法を取り入れ、精神集中や血行促進、ぜんそくの改善、誤嚥性肺炎の予防にも効果があるといわれ、健康に気を遣う世代を中心に全国で広まりつつあります。

臼澤賢一さんは2014年にスポーツ吹矢に出合い、そのとりこになりました。2018年3月には「日本スポーツ吹矢協会 厚真ふきまるくん支部(現・日本スポーツウエルネス吹矢協会厚真ふきまるくん支部)」を立ち上げ、週2回の練習を通して町内でのスポーツ吹矢の普及に努めています。

 

「1年で最も人が集まる『あつま田舎まつり』で臼澤さんと一緒にスポーツ吹矢の体験会ができたらいい。そうだ、旭川大学には紙飛行機が持つ教育効果を研究している大学院修了生もいる。スポーツ吹矢と大型飛行機の製作体験会を組み合わせ、地域の子どもたちや親子連れが気軽に集まり、楽しく交流できるような場を作りたい。そう考えて企画しました」(大野先生)。

 

「連絡をもらったときはびっくりしましたよ。『あつま田舎まつり』でスポーツ吹矢を一緒にやろうだなんて。あのとき(実習での聞き取り調査)、スポーツ吹矢の話をみんなにしたのか覚えてなくてね。いや、でも、うれしい話だから、『いいよ、やらせてよ』となってね。地震のあと、学生さんたちが豊丘で餅つきを企画したという話も聞きました。若い方がこうやってまちに関わってくれているだなんて、いいね、最高だなって」。臼澤さんは連絡を受けたときのことをうれしそうに振り返ります。

臼澤賢一さんは2009年に登別から厚真へ移住。毎週金曜夜と土曜午前に総合ケアセンター「ゆくり」でスポーツ吹矢の練習を行っている。開催日はいつでも体験参加可能

こうして「厚真ふきまるくん支部」と旭川大学によるスポーツ吹矢&大型紙飛行機製作のW体験会が実現。「あつま田舎まつり」の当日、メイン会場隣のテニスコートでワークショップを行いました。集まった小学生や中学生たちには「厚真ふきまるくん支部」のみなさんが指導に当たり、「CROSS」のメンバーは得点集計などのサポートを行いました。

「CROSS」のメンバーは得点係として活躍

さて、ワークショップ会場のゆったりとした雰囲気とは対照的に激務だったのが商工会青年部の飲食ブースです。焼き鳥や焼きそば、枝豆などの定番のおつまみを扱い、長蛇の列が絶えないこのブースで、「CROSS」のメンバーは最前線に立って接客を担当。厚真町で継続的に活動する北海道大学の学生ボランティアサークル「あるぼら」のメンバーと一緒になって声をからしました。

商工会青年部のブースに立つ「あるぼら」の五十嵐紗衣さん

「CROSS」の瀬戸口はるかさん

「CROSS」の活動に初めて参加した瀬戸口はるかさん(2年生)は「このブース、一番忙しいですよね?」と苦笑いを浮かべながらも、「今日一日めちゃめちゃ楽しかったです。厚真の方々はとてもやさしくて、こちらからちょっと話しかけただけで、いっぱい話してくださいました。私がこの活動に参加するメインの目的はいろいろな方と交流することなので、それがかなってすごくうれしい。また来たいですね」と話しました。

 

ボランティアを受け入れた厚真町のみなさんはどう感じたのでしょう。厚真町青年部の金谷泰央部長に話を聞きました。

「ありがたいですよ。人手が増えて助かるというのもあるけれど、町外の若い人たちがこうして厚真町に関わりを持ってくれたことに何より感謝しています。うちの部員ともコミュニケーションを取りながらやってくれているし、旭川大学と北海道大学の学生同士がこれをきっかけに仲良くなってつながってくれたら、場を提供した僕らとしてもうれしいことです。

今後、何かのタイミングで、たとえばあつま国際 雪上3本引き大会の合同チームとして参加してくれたらいいですよね。そうじゃなくても、この週末に厚真町に行ったんだよと周囲に話してくれるだけでも、僕らにとっては大きな収穫です。大学生の日常会話の中に、厚真という単語が出ることはそうそうありません。これをきっかけに厚真を気にかけてくれるようになったらうれしいですよね」。

大野先生は活動のねらいを次のように話します。

「学生に期待することは二つあります。一つは、町民のみなさんの想いを学生一人ひとりが感じながらその人のために自分には何ができるのかを考えられるようになること。自己成長のきっかけにしてほしいと思います。もう一つは、活動を通じて厚真のファンになってくれたらいい。わたしたちは『旭川大学ATSUMA LOVERS』という言葉を使わせてもらっていますが、厚真に集まり、感じることで、厚真で出逢ったあの人のために何かしたい、厚真のために何かしようという『愛着』が芽生えます。将来定住するとまではいかなくても、仕事やレジャーを通して厚真町に関わり続けてほしい。

 

一人ひとりがこれからも交流人口、関係人口としての関わりを持ち続けることができれば、私たちは真の意味での厚真応援隊『旭川大学ATSUMA LOVERS』となれます。厚真町に通う中で人と人とのネットワークを築いて、それを広めていけば、点は線になって、面になります。今日はじめて厚真に来た学生にとってはこれがその第一歩。ここから厚真町と一人ひとりのつながりが深まってくれたらいいと願っています」。

旭川大学保健福祉学部コミュニティ福祉学科の大野剛志准教授

「『CROSS』の活動は自分にとっての財産」。学生代表の澤口さんはそう言います。

「震災後の物資提供や餅つき会のときには、地域に暮らす一人ひとりの方からお話を聞く傾聴の大切さを学びました。傾聴は、僕がめざしている社会福祉士にとっては必要不可欠な能力であり、ボランティアの現場はそれを経験する機会にあふれています。学校での座学も大事ですが、やっぱり現場にはかないません。ボランティア活動を通して、相手を知る。関わり続けることで、もっと深くその人を知ることができます。現場で戦力になれるよう、とにかく今は厚真町に関わっていたいんです」。

澤口さんは大学を卒業しても厚真町との関わり続けることを約束してくれました。

 

2日間の「あつま田舎まつり」を終え、厚真町商工会青年部のみなさんが「感謝の印に」と、ボランティア参加メンバーの一人ひとりにおみやげを手渡していました。

中身はもちろん厚真名物・ジンギスカン。

 

「これを食べて、厚真のことを思い出してね。きっと、また来たくなるはずだから」。

そんな願いを込めて。

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